17:15 〜 18:45
[AHW24-P02] 武蔵野台地南東部の目黒台における浅層地下水の地球化学的特徴と起源に関する予察的考察
キーワード:都市の浅層地下水、東京区部 、武蔵野台地 、地下水の起源 、水質形成プロセス 、同位体
近年,都市の緊急・非常用水源として,その「自己水源」である浅層地下水が注目されている.各自治体は,浅井戸ネットワークの整備・維持管理に傾注しているところである.一方で,都市の浅層地下水の水質や起源,利用可能量に関する情報は依然として乏しく,その有効かつ効率的な利活用の障害となっている.そこで本研究では,武蔵野台地の南東部に広がる,いわゆる目黒台(遠藤ほか,2019によるM1b面)の浅層地下水の水質の現状把握,ならびに水質形成プロセスと起源の解明を目的とした調査を行った.その結果を速報する.
調査は2023年11月に実施し,目黒台のうち品川区域に位置する約35本の手押しポンプ付きの浅井戸を対象とした.井戸の深度は概ね10-15 mであり,板橋粘土層下位の武蔵野礫層を主たる取水層としている.ただし,一部の井戸ではさらに下位の東京層中の砂層からも取水している可能性がある.
目黒台の浅層地下水の水質はCa-HCO3型であり,低い溶存酸素濃度(大半が1.5 mg/L以下)と酸化還元電位(最低値-73mV)で特徴付けられる.NO3-濃度は最高で19.5 mg/Lである一方,約半数の井戸では定量下限値(概ね0.1 mg/L)以下であった.さらに,NH4+(最高値1.7 mg/L)とNO2-(同2.7 mg/L)が複数の井戸から検出された.SO42-濃度も最低値4.1 mg/L,最高値90.1 mg/Lと著しく広いレンジの濃度を示した.すなわち,目黒台の武蔵野礫層中の浅層地下水は還元的環境に置かれており,地下水中では脱窒反応さらには硫酸還元反応の進行が示唆される.これはδ15Nとδ34Sの測定値からも支持される.Cl-濃度と水の酸素同位体比に基づく降水浸透水,水道漏水,下水漏水の3成分混合解析を試みたところ,下水漏水の寄与率が最高で30%に達する井戸が存在することが明らかとなった.武蔵野礫層の上位には厚さ数mの板橋粘土層が存在するという水理地質学的構造を考えると,この下水漏水の地下水への混入プロセスが今後の検討課題となろう.
目黒台の浅層地下水との比較のため,いずれもS面に相当する北側の淀橋台(3地点)と南側の荏原台(2地点)において,渋谷粘土層下の東京層中に賦存する浅層地下水について同様な調査を行った.淀橋台と荏原台の浅層地下水では,陰イオン全体に占めるHCO3の比率が目黒台に比べて若干高い傾向が認められるものの,各イオン濃度と水質組成については両者の間に明らかな違いは認められなかった.
調査は2023年11月に実施し,目黒台のうち品川区域に位置する約35本の手押しポンプ付きの浅井戸を対象とした.井戸の深度は概ね10-15 mであり,板橋粘土層下位の武蔵野礫層を主たる取水層としている.ただし,一部の井戸ではさらに下位の東京層中の砂層からも取水している可能性がある.
目黒台の浅層地下水の水質はCa-HCO3型であり,低い溶存酸素濃度(大半が1.5 mg/L以下)と酸化還元電位(最低値-73mV)で特徴付けられる.NO3-濃度は最高で19.5 mg/Lである一方,約半数の井戸では定量下限値(概ね0.1 mg/L)以下であった.さらに,NH4+(最高値1.7 mg/L)とNO2-(同2.7 mg/L)が複数の井戸から検出された.SO42-濃度も最低値4.1 mg/L,最高値90.1 mg/Lと著しく広いレンジの濃度を示した.すなわち,目黒台の武蔵野礫層中の浅層地下水は還元的環境に置かれており,地下水中では脱窒反応さらには硫酸還元反応の進行が示唆される.これはδ15Nとδ34Sの測定値からも支持される.Cl-濃度と水の酸素同位体比に基づく降水浸透水,水道漏水,下水漏水の3成分混合解析を試みたところ,下水漏水の寄与率が最高で30%に達する井戸が存在することが明らかとなった.武蔵野礫層の上位には厚さ数mの板橋粘土層が存在するという水理地質学的構造を考えると,この下水漏水の地下水への混入プロセスが今後の検討課題となろう.
目黒台の浅層地下水との比較のため,いずれもS面に相当する北側の淀橋台(3地点)と南側の荏原台(2地点)において,渋谷粘土層下の東京層中に賦存する浅層地下水について同様な調査を行った.淀橋台と荏原台の浅層地下水では,陰イオン全体に占めるHCO3の比率が目黒台に比べて若干高い傾向が認められるものの,各イオン濃度と水質組成については両者の間に明らかな違いは認められなかった.