日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS11] 陸域海洋相互作用ー惑星スケールの物質輸送

2024年5月27日(月) 09:00 〜 10:30 106 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:山敷 庸亮(京都大学大学院総合生存学館)、佐々木 貴教(京都大学 大学院理学研究科 宇宙物理学教室)、Behera Swadhin(Climate Variation Predictability and Applicability Research Group, Application Laboratory, JAMSTEC, 3173-25 Showa-machi, Yokohama 236-0001)、升本 順夫(東京大学大学院理学系研究科)、座長:山敷 庸亮(京都大学大学院総合生存学館)、佐々木 貴教(京都大学 大学院理学研究科 宇宙物理学教室)

09:15 〜 09:30

[AOS11-02] クールジュピター形成に伴うG型星ハビタブルゾーンへの水の供給と地球型惑星形成

*谷安 要1佐々木 貴教1 (1.京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻)

キーワード:水輸送、惑星形成、ハビタビリティ、クールジュピター

G型星のHabitable Zone(HZ) は地表に水を有する条件として、惑星がハビタブル惑星であるかどうかを判定する上で重要なもの一つである。しかし、HZの制約は水の供給を確約するものではないため、実際にその惑星がハビタブルであるかは観測によって確認する必要がある。
また計算から水の供給を検証することもできるが、この場合水が供給されつつ惑星形成がなされる状況を考える必要がある。そこで、本研究では巨大ガス惑星が原始惑星系円盤のギャップ構造とともに内側に移動(Type- II 惑星移動)したのち 、氷微惑星が内側へ移動しHZ中にもたらされる一連のプロセスを水の供給が行われるモデルの一つとして提案する。特に本モデルでは惑星移動の過程において平均運動共鳴 (MMR)中に氷微惑星を捕獲しながら移動するため、効率的に氷微惑星を運ぶことが予想される。本研究では、このモデルによってもたらされる水の供給量について計算を行う。
本研究では手法としてN体計算コードライブラリ「REBOUND」を基にType-II 惑星移動を含めたシミュレーションコードを開発し、惑星移動に伴う氷微惑星の輸送を計算する。水の輸送は、スノーライン以遠から運ばれる氷微惑星が原始惑星に衝突することで供給される。また、スノーラインの内側で氷微惑星の表面から水が昇華する過程を同時に計算することによって、原始惑星への水の供給量を計算し、水が供給された原始惑星が存在する系では惑星形成過程の計算も行う。
結果として、惑星移動後まで残存した原始惑星に存在する水の量は地球の水成分の質量に換算して約10~44% であり、惑星形成の結果として約1auの位置に約0.6地球質量の質量を持ち、地球の水成分に換算し約9.5%の水を持つ地球型惑星を確認することができた。また惑星移動の過程において、氷微惑星及び水が供給された原始惑星はモデルで提唱したようにMMR中に捕獲されながら内側へ移動し原始惑星に衝突し合体成長したことから、モデルそのものの妥当性も確認することができた。
以上より、Type-II惑星移動による水供給はハビタブル惑星に対して水が供給されるプロセスとして有用なものであるということができる。また、他のHZの外側に巨大ガス惑星を持つ系で本モデルを適用して計算することで、HZ中に存在するハビタブル惑星の有無を調べることができるようになるはずである。これにより、他の系でも同様にHZ中にハビタブル惑星の存在を求めることができた場合、HZの外側に巨大ガス惑星が存在することがハビタブル惑星の指標となる可能性がある。