10:00 〜 10:15
[AOS11-05] 火星接近小惑星の軌道解析
★招待講演
キーワード:軌道、天体衝突、小惑星、火星、プラネタリーディフェンス
小惑星や彗星のような太陽系小天体の地球衝突については、プラネタリーディフェンス(あるいはスペースガード)として、最近いろいろな活動がなされている。特に、ある程度以上大きな天体が地球に衝突すると、大規模な自然災害となるため、被害を防ぐにはどうしたらよいかというような議論も多くなされるようになった。一方で、火星については、人間が住んでいるわけではないため、火星への天体衝突については、プラネタリーディフェンス的な視点ではこれまであまり気にされていなかった。ここでは、火星への小惑星の接近について軌道解析の立場から検討してみることにする。小天体の接近状況であるが、まず単純な確認として、天体の軌道を黄道面に投影したときに地球ないし火星の軌道と小惑星の軌道が交差するかどうかで調べてみる。その結果、2023年5月の時点で、地球軌道と交差する小惑星が約2万個であるのに対して、火星軌道と交差する小惑星は約5万個あった。火星の方が倍以上になるが、地球の場合には、地球から観測しているので地球に接近するより小さな小惑星まで観測されており、ここに大きなバイアスがある。火星についてもより小さな小惑星まで含めれば、より多くの小惑星が火星に接近していることになろう。つまり火星の方が天体衝突の危険がかなり高いことになる。ただし、黄道面に投影した軌道が交差するという条件は天体同士の接近の条件としては、かなり緩い条件なので、より確定的に天体の接近状況を調べる必要がある。そのためには、一つのやり方として惑星の軌道と小惑星の軌道の軌道間距離の最小値(MOID、Minimum orbit intersection distance)で調べるのがよい。さらには、天体の軌道運動を計算して、天体同士の実際の接近距離を調べることがより直接的となる。これらのやり方で火星に接近する小惑星の軌道解析を行っているところであり、その結果について、地球の場合と比較して報告する。特に、小惑星の種類(型、タイプ)によっては水を含んでいるものがあるが、そのような小惑星の惑星への接近についても考察する。