17:15 〜 18:45
[AOS13-P14] 電気化学的リアルタイムアカフジツボ遺伝子計測システムの開発
1 緒言
温室効果ガスによる地球温暖化が深刻な問題となり、大気中CO2濃度や気温上昇などの問題が起こっている。ここで、地球の約7割は海洋であることから、温室効果ガスによる海洋環境の変化を探ることが地球環境保全につながると期待されている。操作が煩雑で大型の装置を用いる遺伝子解析は、海洋中でリアルタイムに行うことは困難とされている。そこで、より正確な海洋生態環境を理解するため、本研究では小型化や連続計測が可能な電気化学バイオセンサによるその場 (in-situ)遺伝子計測を目指した。汚損性のフジツボであるアカフジツボを標的とし、その遺伝子と相補的配列をプローブとして電極表面へ固定することで、センサ電極を開発した (Fig. 1)。本発表では、作製したDNAセンサ性能について報告する。
2 実験
2.1 ターゲットDNAとプローブの設計
アカフジツボ特有の配列 (ACTAGT)を含むターゲットDNAと、このDNAと相補的な配列を持ち、ループ構造を形成することができるプローブを設計した。なお、プローブを電極に固定化するための官能基として5’末端にチオール基、メディエーターを修飾するための官能基として3’末端にアミノ基を導入した (Table 1)。
2.2 プローブ修飾電極作製
電極は25×11 mmのScreen-printed electrode (SPE)を用いた。洗浄した金電極にループ構造を形成したプローブを5 µl滴下し、一晩静置して修飾させた。プローブのループ形成は95 ℃で5分間の熱処理後、室温で15分、氷上で5分間静置することにより行った。その後PBSで洗浄し、5 mMのAmine-reactive PESを10 µl滴下して1.5時間静置後、PBSで洗浄してプローブの末端にメディエーターを修飾させた。続いてブロッキング剤として10 mMの6-Mercapto-1-hexanolを10 µl滴下し、1時間後にPBSで洗浄し、プローブ修飾電極とした。
2.3 インピーダンス、サイクリックボルタンメトリー (CV)測定条件
インピーダンス測定は初期電位0.3 V、高周波数10000 Hz、低周波数0.1 Hz、振幅0.005 V、静止時間2秒で行った。また、CVは初期電位-0.5 V、高電位0.5 V、低電位-0.5 V、スキャン速度0.01 V/secで行た。
3. 結果と考察
3.1 インピーダンス測定による電極表面評価
未処理の金電極とループ構造をとっていないプローブ、またはループ構造をとっているプローブが修飾されている金電極の3つのインピーダンスをそれぞれ測定し、ループ構造が適切に形成されているかの確認を行った。結果のグラフをFig. 2に示す。リフォールディング処理無しのプローブ修飾電極は未処理の電極と比較して、電荷移動抵抗を示すグラフの半円の直径が大きく増加したことから、電極上にプローブが固定化されていることが示唆された。また、リフォールディング処理有りのプローブ修飾電極の半円の直径はさらに増加していることから、プローブがループ構造を形成したことで電極表面の電荷移動抵抗が大きくなったと考えられ、プローブが適切にループ構造をとって修飾されていることが示唆された。
3.2 CV測定によるターゲットDNAの検出
ターゲットDNA無しと有りの時のCV測定の結果をFig. 3に示す。ターゲットDNAを加えたときに酸化ピークの減少が確認された。ループ構造を形成して電極表面に近づいていたメディエーターが、プローブがターゲットを補足した際にループがほどけて電極から遠ざかることで電子伝達効率が低下し、電流が減少したと考えられる。
3.3 プローブ修飾電極の特異性・選択性評価
プローブのターゲットとしてアカフジツボDNAと、それとは異なる配列のDNAを加えたときのCV結果をFig. 4(a)(b)に示す。アカフジツボDNAを加えたときにのみ酸化ピークの減少が確認できたことから、今回設計したプローブの特異性が確認できた。
さらに、同一の電極で2種類のDNAを加えた場合にも、アカフジツボDNAを加えたときにだけ大きな酸化ピークの減少が見られた (Fig. 5)ことから、選択性も確認できた。
温室効果ガスによる地球温暖化が深刻な問題となり、大気中CO2濃度や気温上昇などの問題が起こっている。ここで、地球の約7割は海洋であることから、温室効果ガスによる海洋環境の変化を探ることが地球環境保全につながると期待されている。操作が煩雑で大型の装置を用いる遺伝子解析は、海洋中でリアルタイムに行うことは困難とされている。そこで、より正確な海洋生態環境を理解するため、本研究では小型化や連続計測が可能な電気化学バイオセンサによるその場 (in-situ)遺伝子計測を目指した。汚損性のフジツボであるアカフジツボを標的とし、その遺伝子と相補的配列をプローブとして電極表面へ固定することで、センサ電極を開発した (Fig. 1)。本発表では、作製したDNAセンサ性能について報告する。
2 実験
2.1 ターゲットDNAとプローブの設計
アカフジツボ特有の配列 (ACTAGT)を含むターゲットDNAと、このDNAと相補的な配列を持ち、ループ構造を形成することができるプローブを設計した。なお、プローブを電極に固定化するための官能基として5’末端にチオール基、メディエーターを修飾するための官能基として3’末端にアミノ基を導入した (Table 1)。
2.2 プローブ修飾電極作製
電極は25×11 mmのScreen-printed electrode (SPE)を用いた。洗浄した金電極にループ構造を形成したプローブを5 µl滴下し、一晩静置して修飾させた。プローブのループ形成は95 ℃で5分間の熱処理後、室温で15分、氷上で5分間静置することにより行った。その後PBSで洗浄し、5 mMのAmine-reactive PESを10 µl滴下して1.5時間静置後、PBSで洗浄してプローブの末端にメディエーターを修飾させた。続いてブロッキング剤として10 mMの6-Mercapto-1-hexanolを10 µl滴下し、1時間後にPBSで洗浄し、プローブ修飾電極とした。
2.3 インピーダンス、サイクリックボルタンメトリー (CV)測定条件
インピーダンス測定は初期電位0.3 V、高周波数10000 Hz、低周波数0.1 Hz、振幅0.005 V、静止時間2秒で行った。また、CVは初期電位-0.5 V、高電位0.5 V、低電位-0.5 V、スキャン速度0.01 V/secで行た。
3. 結果と考察
3.1 インピーダンス測定による電極表面評価
未処理の金電極とループ構造をとっていないプローブ、またはループ構造をとっているプローブが修飾されている金電極の3つのインピーダンスをそれぞれ測定し、ループ構造が適切に形成されているかの確認を行った。結果のグラフをFig. 2に示す。リフォールディング処理無しのプローブ修飾電極は未処理の電極と比較して、電荷移動抵抗を示すグラフの半円の直径が大きく増加したことから、電極上にプローブが固定化されていることが示唆された。また、リフォールディング処理有りのプローブ修飾電極の半円の直径はさらに増加していることから、プローブがループ構造を形成したことで電極表面の電荷移動抵抗が大きくなったと考えられ、プローブが適切にループ構造をとって修飾されていることが示唆された。
3.2 CV測定によるターゲットDNAの検出
ターゲットDNA無しと有りの時のCV測定の結果をFig. 3に示す。ターゲットDNAを加えたときに酸化ピークの減少が確認された。ループ構造を形成して電極表面に近づいていたメディエーターが、プローブがターゲットを補足した際にループがほどけて電極から遠ざかることで電子伝達効率が低下し、電流が減少したと考えられる。
3.3 プローブ修飾電極の特異性・選択性評価
プローブのターゲットとしてアカフジツボDNAと、それとは異なる配列のDNAを加えたときのCV結果をFig. 4(a)(b)に示す。アカフジツボDNAを加えたときにのみ酸化ピークの減少が確認できたことから、今回設計したプローブの特異性が確認できた。
さらに、同一の電極で2種類のDNAを加えた場合にも、アカフジツボDNAを加えたときにだけ大きな酸化ピークの減少が見られた (Fig. 5)ことから、選択性も確認できた。
