日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS14] 海洋物理学一般

2024年5月30日(木) 13:45 〜 15:00 104 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:土井 威志(JAMSTEC)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、座長:土井 威志(JAMSTEC)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)

14:15 〜 14:30

[AOS14-03] 黒潮域における漂流ブイ軌跡の解析

*土屋 主税1、鈴木 眞子1 (1.海上保安庁)

キーワード:漂流予測、黒潮、黒潮続流、衛星海面高度計、気象庁海洋同化モデル (MOVE-JPN)、漂流ブイ観測

海上保安庁は漂流ブイによる黒潮及び黒潮続流の観測を続けている。この1日の移動軌跡を、衛星海面高度計から求めた地衡流(CMEMS)、気象庁海洋同化モデル(MOVE-JPN)0.1度メッシュ及び2kmメッシュを用いて計算した漂流経路と比較した。各々の海流データセットは1日平均値を用いている。
海上保安庁は捜索区域設定支援として漂流予測システムを運用している。このシステムにおいて潮流等既知の流れ以外の時空間的に変動する海流のデータセットとして最適なものがこれらの海流データセットのいずれであるか考察する。漂流予測においては総合確率誤差を採用しており、海流のみによる誤差は1日間では13.3kmと計算される。漂流ブイが黒潮に乗っていた2023/2/10〜2/21、2/28〜3/11、12/16〜12/31の期間で、各日0時の位置を漂流開始地点とし、24時間の移動の後、到達地点の距離の差の平均と標準偏差を計算すると、地衡流、MOVE-JPN0.1度、2kmメッシュのそれぞれで19.2km±10.3km、21.7km±10.9km、23.1km±11.8kmであった。黒潮というかなり強い流れに乗ってしまうと総合確率誤差と比較して大きな到達地点の距離の差が生まれるものの、漂流予測システムへの使用の観点では、3つのデータセットの間で黒潮の再現性そのものに大きな差がないことがわかった。現業として漂流予測システムを運用するにあたっては、使用するデータセットの単一化はシステムの保守性を上げるので、黒潮域についてMOVE-JPN 2kmメッシュデータ単体を採用できる可能性を示唆していることは、歓迎すべき結果である。