15:45 〜 16:00
[AOS14-07] 大島海峡の高分解能予報モデルの構築

キーワード:高分解能数値モデル、大島海峡、有限体積法沿岸海洋モデル
1. はじめに
大島海峡は日本の南西諸島にある奄美大島と加計呂麻島の間に位置し,静穏な海域であることから養殖業が盛んである.マグロ養殖場によっては,1日20tの餌を与えており,赤潮の発生や低酸素水の流入があるときは,マグロが餌を食べなくなるため,餌の一部を廃棄している.したがって,養殖場への赤潮や低酸素水の流入経路に対応する餌管理のスマート化を実現するため,大島海峡内の海況を予測できるようにすることが重要である.しかし,海況予報モデルとしてDREAMS_E(1.5km×1.5kmの黒潮域の海況予報モデル)があるが,大島海峡内が狭いために予報の対象外となっている.本研究では,大島海峡における海況予報を行うための,高分解能数値モデルのプロトタイプの構築を行った.
2. 数値モデル
本研究では,海岸や海底地形を詳細に再現できる有限体積法沿岸海洋モデル(FVCOM)を用いた.計算に使用する海岸・海底地形データは日本水路協会のM7000シリーズから得た.さらに,本研究室が実施した観測により得られた水深データを加えた.格子幅は,計算の開境界で約200m,最小を約50mとし,鉛直方向はσ座標系10層に一様に分割した.初期条件として与える大島海峡内の水温と塩分は,海峡に最も近い地点のDREAMS_Eの計算データを線形補間することで求めることにした.開境界においては,DREAMS_Eの水温,塩分,水位,流速を与えた.また,海面熱収支および風応力についてはCOARE.ver2.6を用いて評価し,蒸発量はKondoのバルク式(1975)を用いて計算した.気象データに関してはMSM-GPVの気象要素を用いた.ただし,MSM-GPVの日射量については2017年12月以降から配信されているため,2010年と2013年に観測された流速との再現性の計算に関しては,名瀬測候所の気象観測データを使用した.
3. 水位,流速,水温の再現性の比較
本研究室が久慈湾で行った水位の観測結果と計算結果を比較した.全体的に計算値が観測値を過小評価しているものの位相は一致している.計算結果と観測結果の相関係数は0.93,RMSEは0.18mであり,計算結果は観測結果と高い相関を示し,水位の再現性は高いと言える.
次に,第十管区海上保安本部により待網岬沖で観測されたADCP定点流速の観測結果と計算結果の比較を示す.全体的に計算値が観測値よりも過小評価しているものの位相は一致している.計算結果と観測結果の相関係数は0.87,RMSEは0.32m/sであった.流向は計算結果が観測結果に比べて,上げ潮時はやや南寄り,下げ潮時はやや北寄りとなった.
さらに,本研究室が実施した観測により得られた待網岬沖の曳航観測結果と計算結果の比較を示す.待網岬沖において流速が大きく,流れる方向に尾を引くように,やや強い潮流が発生しているなどの定性的な特徴は再現できている.しかし,上げ潮時,下げ潮時ともに計算結果は観測値よりも過小評価している.
以上のことから,水位および流速の計算結果は観測結果を概ね再現できているが,潮汐成分変動は過小評価となった.開境界で与えるDREAMS_Eの潮位変動が小さいことに原因しているかもしれない.
西南水産(株)が実施した水温の観測結果を利用させてもらい,計算結果との比較を行った.青線が計算結果,赤線が観測結果である.2021年11月17日~2022年1月16日までは,計算値の方が観測値よりも過小評価しているが,1月16日以降はほぼ同じ値を示す結果となった.興味深いのは11月30日,12月17日に観測された水温の数日間の上下動を再現できていることである.また,塩分については観測データを収集していなかったので,現在のところ,精度検証を行うことができていない.
4. まとめ
本研究では, DREAMS_Eの海況予報データ,MSM気象予報データを用いた大島海峡内の海況予報モデルのプロトタイプを作成した.水位と流速の潮汐成分については計算結果が観測結果を過小評価する結果となった.水温についても計算結果は観測よりも過小評価となっているが,短周期の変動を再現する可能性を示唆している.今後は,開境界においては,海況予報モデルDREAMS_Epの計算結果を与える場合を検討していく予定である.
大島海峡は日本の南西諸島にある奄美大島と加計呂麻島の間に位置し,静穏な海域であることから養殖業が盛んである.マグロ養殖場によっては,1日20tの餌を与えており,赤潮の発生や低酸素水の流入があるときは,マグロが餌を食べなくなるため,餌の一部を廃棄している.したがって,養殖場への赤潮や低酸素水の流入経路に対応する餌管理のスマート化を実現するため,大島海峡内の海況を予測できるようにすることが重要である.しかし,海況予報モデルとしてDREAMS_E(1.5km×1.5kmの黒潮域の海況予報モデル)があるが,大島海峡内が狭いために予報の対象外となっている.本研究では,大島海峡における海況予報を行うための,高分解能数値モデルのプロトタイプの構築を行った.
2. 数値モデル
本研究では,海岸や海底地形を詳細に再現できる有限体積法沿岸海洋モデル(FVCOM)を用いた.計算に使用する海岸・海底地形データは日本水路協会のM7000シリーズから得た.さらに,本研究室が実施した観測により得られた水深データを加えた.格子幅は,計算の開境界で約200m,最小を約50mとし,鉛直方向はσ座標系10層に一様に分割した.初期条件として与える大島海峡内の水温と塩分は,海峡に最も近い地点のDREAMS_Eの計算データを線形補間することで求めることにした.開境界においては,DREAMS_Eの水温,塩分,水位,流速を与えた.また,海面熱収支および風応力についてはCOARE.ver2.6を用いて評価し,蒸発量はKondoのバルク式(1975)を用いて計算した.気象データに関してはMSM-GPVの気象要素を用いた.ただし,MSM-GPVの日射量については2017年12月以降から配信されているため,2010年と2013年に観測された流速との再現性の計算に関しては,名瀬測候所の気象観測データを使用した.
3. 水位,流速,水温の再現性の比較
本研究室が久慈湾で行った水位の観測結果と計算結果を比較した.全体的に計算値が観測値を過小評価しているものの位相は一致している.計算結果と観測結果の相関係数は0.93,RMSEは0.18mであり,計算結果は観測結果と高い相関を示し,水位の再現性は高いと言える.
次に,第十管区海上保安本部により待網岬沖で観測されたADCP定点流速の観測結果と計算結果の比較を示す.全体的に計算値が観測値よりも過小評価しているものの位相は一致している.計算結果と観測結果の相関係数は0.87,RMSEは0.32m/sであった.流向は計算結果が観測結果に比べて,上げ潮時はやや南寄り,下げ潮時はやや北寄りとなった.
さらに,本研究室が実施した観測により得られた待網岬沖の曳航観測結果と計算結果の比較を示す.待網岬沖において流速が大きく,流れる方向に尾を引くように,やや強い潮流が発生しているなどの定性的な特徴は再現できている.しかし,上げ潮時,下げ潮時ともに計算結果は観測値よりも過小評価している.
以上のことから,水位および流速の計算結果は観測結果を概ね再現できているが,潮汐成分変動は過小評価となった.開境界で与えるDREAMS_Eの潮位変動が小さいことに原因しているかもしれない.
西南水産(株)が実施した水温の観測結果を利用させてもらい,計算結果との比較を行った.青線が計算結果,赤線が観測結果である.2021年11月17日~2022年1月16日までは,計算値の方が観測値よりも過小評価しているが,1月16日以降はほぼ同じ値を示す結果となった.興味深いのは11月30日,12月17日に観測された水温の数日間の上下動を再現できていることである.また,塩分については観測データを収集していなかったので,現在のところ,精度検証を行うことができていない.
4. まとめ
本研究では, DREAMS_Eの海況予報データ,MSM気象予報データを用いた大島海峡内の海況予報モデルのプロトタイプを作成した.水位と流速の潮汐成分については計算結果が観測結果を過小評価する結果となった.水温についても計算結果は観測よりも過小評価となっているが,短周期の変動を再現する可能性を示唆している.今後は,開境界においては,海況予報モデルDREAMS_Epの計算結果を与える場合を検討していく予定である.