13:45 〜 14:00
[AOS16-01] 地先と外洋のpH変動パターンはどこで切り替わるか?
キーワード:pH、pCO2、地先、外洋
篤志貨物船や調査船を用いた航送中無人観測装置の普及により、日本近海域における表層二酸化炭素分圧(pCO2)の分布はかなりの時空間解像度で把握することが可能になった。しかしごく沿岸の水深50mを切るような海域では、陸域の影響を受けて流動構造や物質循環が外洋域から急激に変化するにもかかわらず、浅い水深や漁具の存在が観測上の障害になるために、炭酸系の観測がほとんど行われてきていないのが現状である。
全球的に見ればこうした海域の面積は非常に狭いため、CO2収支を求めるための観測としてはこうした浅海域データの欠乏はあまり大きな問題にならないが、酸性化のモニタリングとして考えた場合には、炭酸殻を持つ水産資源生物の多くが水深50mまでの浅海域に集中して生息するため、浅海域の観測データの欠乏は大きな問題になる。
こうした浅海域における酸性化の状況監視を目的として、近年になって地先の岩壁や藻場に設置したセンサーによるpHモニタリングが各地で行われるようになってきたが、この場合は浅海域の中でも特に海洋環境の変化の激しい地先で取得したデータが、浅海域全体の状況をどの程度表しているかの評価が問題となる。そこで我々は、浅海域の中でも特に炭酸系観測データの少ない非内湾性の沿岸域2点において、水深5m以内の地先と水深15~25mの”沖合浅海域”の2点で係留センサーによるモニタリングを行うことにより、浅海域の中での地先と沖合のpH変動パターンの違いを調査した。
2020年7月から2022年10月にかけて、岩手県宮古市の水産研究教育機構宮古庁舎地先(水深5m)と、同市重茂沖の水深17m地点に水温・塩分・DOおよびpHの各センサーを設置し、各項目の値を1時間毎に記録した。また同時期に、新潟県柏崎市の海洋生物環境研究所実証試験場地先(水深1m)と、同地沖合の水深25m地点でも同様の観測を行なった。各点での観測結果は図1のようになり、同じ浅海域内でも地先のpHは沖合より系統的に低いpHを示した。地先と外洋のpH差は特に夏季に大きく、柏崎では地先のpHは沖合より0.1以上低下していた。
宮古市沖のさらに外洋域では、水産研究・教育機構の若鷹丸が年間数航海のpCO2観測を行なっており、その一部では水深70m〜100mの地点まで岸に寄ったデータが取得されている。そこで若鷹丸の観測データから宮古沖の海底水深200m以浅の海域のpCO2観測値を切り出して、同時に観測された水温・塩分値を元にTakatani et al. (2014)の方法により求めたアルカリ度から平衡計算によってpHを求めた。若鷹丸によって得られているのはpHの時系列変化ではなく空間的な変化であるが、3つのデータセットにおいて共通に得られている海洋環境指標である水温に対して、宮古市地先・宮古市沖合・若鷹丸の各pH観測値をプロットすると図2のようになる。これを見ると、地先のpHは水温に対する変化パターン自体が外洋と大きく異なっており、また同じ水温におけるpH観測値のばらつきが外洋に比べて非常に大きくなっていることがわかる。このことから、地先水域では水温の変動とpHの変動の間に介在する海洋学的プロセスそのものが外洋と大きく異なっていることが示唆される。いっぽう同じ浅い海域でも水深17m海域のpHは、水温に対する相対的な変化パターンは外洋域のそれとかなり似通ってくるが、同じ水温内におけるpH観測値のばらつきの幅は外洋よりもかなり大きく、地先の観測値とほぼ同じとなった。講演ではこうした水温に対するpHの変動特性が、地先・沖合浅海域・外洋域でそれぞれどういう機構によってコントロールされているのかについて、さらに詳しい解析結果を発表する予定である。
全球的に見ればこうした海域の面積は非常に狭いため、CO2収支を求めるための観測としてはこうした浅海域データの欠乏はあまり大きな問題にならないが、酸性化のモニタリングとして考えた場合には、炭酸殻を持つ水産資源生物の多くが水深50mまでの浅海域に集中して生息するため、浅海域の観測データの欠乏は大きな問題になる。
こうした浅海域における酸性化の状況監視を目的として、近年になって地先の岩壁や藻場に設置したセンサーによるpHモニタリングが各地で行われるようになってきたが、この場合は浅海域の中でも特に海洋環境の変化の激しい地先で取得したデータが、浅海域全体の状況をどの程度表しているかの評価が問題となる。そこで我々は、浅海域の中でも特に炭酸系観測データの少ない非内湾性の沿岸域2点において、水深5m以内の地先と水深15~25mの”沖合浅海域”の2点で係留センサーによるモニタリングを行うことにより、浅海域の中での地先と沖合のpH変動パターンの違いを調査した。
2020年7月から2022年10月にかけて、岩手県宮古市の水産研究教育機構宮古庁舎地先(水深5m)と、同市重茂沖の水深17m地点に水温・塩分・DOおよびpHの各センサーを設置し、各項目の値を1時間毎に記録した。また同時期に、新潟県柏崎市の海洋生物環境研究所実証試験場地先(水深1m)と、同地沖合の水深25m地点でも同様の観測を行なった。各点での観測結果は図1のようになり、同じ浅海域内でも地先のpHは沖合より系統的に低いpHを示した。地先と外洋のpH差は特に夏季に大きく、柏崎では地先のpHは沖合より0.1以上低下していた。
宮古市沖のさらに外洋域では、水産研究・教育機構の若鷹丸が年間数航海のpCO2観測を行なっており、その一部では水深70m〜100mの地点まで岸に寄ったデータが取得されている。そこで若鷹丸の観測データから宮古沖の海底水深200m以浅の海域のpCO2観測値を切り出して、同時に観測された水温・塩分値を元にTakatani et al. (2014)の方法により求めたアルカリ度から平衡計算によってpHを求めた。若鷹丸によって得られているのはpHの時系列変化ではなく空間的な変化であるが、3つのデータセットにおいて共通に得られている海洋環境指標である水温に対して、宮古市地先・宮古市沖合・若鷹丸の各pH観測値をプロットすると図2のようになる。これを見ると、地先のpHは水温に対する変化パターン自体が外洋と大きく異なっており、また同じ水温におけるpH観測値のばらつきが外洋に比べて非常に大きくなっていることがわかる。このことから、地先水域では水温の変動とpHの変動の間に介在する海洋学的プロセスそのものが外洋と大きく異なっていることが示唆される。いっぽう同じ浅い海域でも水深17m海域のpHは、水温に対する相対的な変化パターンは外洋域のそれとかなり似通ってくるが、同じ水温内におけるpH観測値のばらつきの幅は外洋よりもかなり大きく、地先の観測値とほぼ同じとなった。講演ではこうした水温に対するpHの変動特性が、地先・沖合浅海域・外洋域でそれぞれどういう機構によってコントロールされているのかについて、さらに詳しい解析結果を発表する予定である。