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[AOS16-10] 2023年の豊後水道を西岸から進入した急潮に関する研究
キーワード:急潮、植物プランクトン、栄養塩
瀬戸内海西部に位置する豊後水道は、黒潮の周期的な進入により外洋の影響を強く受けている。外洋の黒潮系水塊が豊後水道の表層へ進入する現象は、急潮と呼ばれ、主に豊後水道東岸(この海域は宇和海と呼ばれる)に沿って流入する。この時、宇和海沿岸に滞留していた給餌魚類養殖などにより淀んだ沿岸水が清浄な外洋水と交換され、夏季にしばしば発生する赤潮を終息させる。これまで、豊後水道西岸から進入した急潮に関する研究はほとんどなく、近年増加する集中豪雨の影響のも不明なままである。本研究では、豊後水道西岸から進入する急潮の観測に成功し、九州での集中豪雨の影響が伺われたため、それらについて報告する。2023年7月26日から30日にかけて、愛媛大学CMES調査船いさなを用いて、豊後水道東岸中央部において現場観測を実施した。観測項目は、RINKO profiler (JFE Advantech inc.) を用いて水温、塩分、溶存酸素濃度、Chl.a濃度、濁度を、SUNA v2光学式硝酸センサー (Seabird Elec. inc.) を用いて硝酸塩濃度を、多波長励起蛍光光度計MultiExciter (JFE Advantech inc.) を用いて植物プランクトン6群の群集組成を観測した。現場観測だけではなく、数値モデルJCOPE-T DA (JAMSTEC, 水平解像度3km, 潮汐、データ同化済、降雨に伴う河川フラックス入り) を用いたシミュレーションとの比較を行うことにより、観測海域以外の周辺海域との関連性について検討した。今回捉えられた盛夏小潮時の急潮は、宮崎県北部での豪雨の影響を受け陸から栄養塩を供給され、それらの栄養塩は植物プランクトンにより速やかに消費され低濃度になり、増加した植物により比較的高いChl.a濃度を維持した状態で,豊後水道西岸から東岸へと進入していた。この十分に貧栄養な水塊の進入とそれに伴う海水交換は、豊後水道東岸で発生していたカレニア赤潮を終息させていた。