14:00 〜 14:15
[BCG04-02] タイ国ゴムプランテーション土壌のメタン酸化ポテンシャル
キーワード:メタン酸化、土地利用、土壌管理
森林土壌は陸域生態系で最も重要な大気メタンのシンクであり、森林の伐採や農業利用に伴う生態系の変化は土壌のメタン酸化機能に重大な影響を与えると考えられる。ゴムプランテーションのメタンシンク機能は自然林に比べて低下することがいくつかのフラックス研究で報告されているが、土壌のメタン酸化の実態については知見が限られている。本研究では、タイのゴム園プランテーション土壌のメタン酸化ポテンシャルと環境要因および土壌微生物群集との関連を調査した。
2023年2月および8月にカセサート大学Sithiporn Kridakorn Researh Stationのゴム園において施肥レベルの異なる圃場から表層土壌(0-10cm)を採取し、2mmの篩に通した。土壌10gを100mLあるいは50mL容のGCバイアルに入れ、気相に初期濃度が約50ppmとなるようにメタンを注入した。25℃暗所で培養し気相のメタン濃度を経時的に測定した。直線的なメタン濃度の減少から土壌単位重量当たりのメタン酸化ポテンシャルを算出した。8月には、高施肥区と無施肥区において深度別の土壌も採取しメタン酸化ポテンシャルの鉛直分布を解析した。土壌からDNAを抽出し、16S rRNA遺伝子を対象としたメタバーコーディングにより微生物群集を解析した。また、同じく8月にはステーションの他の植生地(森林、油ヤシ林)、Chachoengsao県ゴム研究センター(CRRC)のゴム園でも表層土壌を採取し、同様にメタン酸化ポテンシャルおよび微生物群集の測定を実施した。
2月(乾期)の土壌のメタン酸化活性は非常に低く、特に施肥を施した土壌では施肥量の違いに関わらずメタンの消費はほとんど観察されなかったが、無施肥条件の土壌ではわずかにメタンの消費が認められた。8月(雨期)の表層土壌は、2月に比べて高いメタン酸化活性を示し、施肥レベルの上昇に対応してその活性が低下することが示された。それでも表層土壌のメタン酸化ポテンシャルは、現地で測定した土壌表面のメタン吸収フラックスに対して著しく低かった。施肥が土壌のメタン酸化ポテンシャルに及ぼす負の影響はCRRCの土壌でも観察された。油ヤシ林、森林土壌のメタン酸化ポテンシャルは空間変動が大きく、いくつかの森林土壌ではコム園土壌よりもはるかに高いメタン酸化ポテンシャルを示した。無施肥条件のゴム園における10cm以深の土壌は表層に比べて高く、少なくとも55cmまでの深さでメタン酸化活性が確認された。一方、高施肥区の土壌は60cmまで表層土壌と同程度の低い活性であった。層位毎のメタン酸化ポテンシャルを積算して推定したメタン吸収フラックスは、現場におけるフラックス測定値と近い値を示しており、土壌における大気メタンの酸化は表層ではなく、10cm以深の土壌が主に関わっていると推察された。土壌微生物群集の構成は施肥条件による影響を受けることが示されたが、メタン酸化細菌由来の16SrRNA遺伝子配列は乾期に採取したいずれの土壌試料でも確認されなかった。今後雨期の土壌微生物群集やメタン酸化細菌に対象を絞った解析を進め、ゴム園土壌におけるメタン酸化微生物を明らかにすることが必要である。
2023年2月および8月にカセサート大学Sithiporn Kridakorn Researh Stationのゴム園において施肥レベルの異なる圃場から表層土壌(0-10cm)を採取し、2mmの篩に通した。土壌10gを100mLあるいは50mL容のGCバイアルに入れ、気相に初期濃度が約50ppmとなるようにメタンを注入した。25℃暗所で培養し気相のメタン濃度を経時的に測定した。直線的なメタン濃度の減少から土壌単位重量当たりのメタン酸化ポテンシャルを算出した。8月には、高施肥区と無施肥区において深度別の土壌も採取しメタン酸化ポテンシャルの鉛直分布を解析した。土壌からDNAを抽出し、16S rRNA遺伝子を対象としたメタバーコーディングにより微生物群集を解析した。また、同じく8月にはステーションの他の植生地(森林、油ヤシ林)、Chachoengsao県ゴム研究センター(CRRC)のゴム園でも表層土壌を採取し、同様にメタン酸化ポテンシャルおよび微生物群集の測定を実施した。
2月(乾期)の土壌のメタン酸化活性は非常に低く、特に施肥を施した土壌では施肥量の違いに関わらずメタンの消費はほとんど観察されなかったが、無施肥条件の土壌ではわずかにメタンの消費が認められた。8月(雨期)の表層土壌は、2月に比べて高いメタン酸化活性を示し、施肥レベルの上昇に対応してその活性が低下することが示された。それでも表層土壌のメタン酸化ポテンシャルは、現地で測定した土壌表面のメタン吸収フラックスに対して著しく低かった。施肥が土壌のメタン酸化ポテンシャルに及ぼす負の影響はCRRCの土壌でも観察された。油ヤシ林、森林土壌のメタン酸化ポテンシャルは空間変動が大きく、いくつかの森林土壌ではコム園土壌よりもはるかに高いメタン酸化ポテンシャルを示した。無施肥条件のゴム園における10cm以深の土壌は表層に比べて高く、少なくとも55cmまでの深さでメタン酸化活性が確認された。一方、高施肥区の土壌は60cmまで表層土壌と同程度の低い活性であった。層位毎のメタン酸化ポテンシャルを積算して推定したメタン吸収フラックスは、現場におけるフラックス測定値と近い値を示しており、土壌における大気メタンの酸化は表層ではなく、10cm以深の土壌が主に関わっていると推察された。土壌微生物群集の構成は施肥条件による影響を受けることが示されたが、メタン酸化細菌由来の16SrRNA遺伝子配列は乾期に採取したいずれの土壌試料でも確認されなかった。今後雨期の土壌微生物群集やメタン酸化細菌に対象を絞った解析を進め、ゴム園土壌におけるメタン酸化微生物を明らかにすることが必要である。