日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG06] 地球史解読:冥王代から現代まで

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、加藤 泰浩(東京大学)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源センター)、中村 謙太郎(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)


17:15 〜 18:45

[BCG06-P13] ジュラ紀Toarcian海洋無酸素事変時の炭素循環と深海酸化還元状態の変動

*宮田 理央1池田 昌之1久保田 好美2 (1.東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻、2.国立科学博物館)

キーワード:古気候、海洋無酸素事変、ジュラ紀

近年の人為起源の温暖化のみならず、地質時代には火成活動に伴って温暖化し、氷床が崩壊することが知られ、前期ジュラ紀Toarcianには海洋無酸素事変(Toarcian Oceanic Anoxic Event;T-OAE)が発生した。同時期のテチス海の堆積物に記録された炭素同位体比(δ13C)の周期的な変動から日射変化に伴うメタン放出が提唱されているが、そのOAEへの影響は未解明である。そこで本研究では、全球的な炭素同位体比と底層水の酸化還元度の関係を検討するため、当時最大の海洋であったパンサラッサ海の低緯度深海堆積物である美濃帯坂祝セクションの層状チャートを対象として、生物擾乱度から底層水の酸化還元度推定を試み、Ikeda et al. (2018)で未測定だった部分の有機炭素同位体の比計測を行い、他地域の同位体比カーブと比較することで高精度対比を試みた。また、それらの関係から炭素循環に伴う海洋環境変動を検討した。
その結果、Pliensbachian/Toarcian(Pl/To)境界では黒色チャート、頁岩の堆積開始に伴い、δ13Cが負にシフトすると同時に生物擾乱の低下がみられ、δ13Cが正にシフトする際には生物擾乱が回復する傾向がみられた。その後生物擾乱度は数cmスケールで変化したが、δ13Cは数十cmスケールで変化した。T-OAE期では黒色チャート、頁岩の堆積が始まる数cm前の灰色チャート層からδ13Cが振動しながら負にシフトし、生物擾乱度の低下も始まった。黒色頁岩には数百μmオーダーのラミナが発達する一方で、黒色チャートにはそのようなラミナは確認されなかった。
Pl/To境界とT-OAE期で生物擾乱度変動には同様の数cmスケールでの変化がみられ、炭素同位体比の負のシフトと生物擾乱度の低下が対応し、メタン放出と海洋底層の溶存酸素濃度の低下が関連した可能性が示唆された。浅海層では、δ13Cの周期的変動がミランコビッチサイクルに伴う周期的なメタン放出ー吸収に関連したという説が提唱されている。このメタン放出に伴って温暖化-寒冷化を繰り返したことで、氷床の縮小、拡大や底層水の形成速度など海洋大循環を介して、パンサラッサ深海の酸素供給量に影響を与えた可能性がある。