日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-02] 地球惑星科学のアウトリーチ・実践と理論

2024年5月26日(日) 15:30 〜 16:45 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:玉澤 春史(東京大学生産技術研究所)、塚田 健(平塚市博物館)、寺薗 淳也(合同会社ムーン・アンド・プラネッツ)、座長:寺薗 淳也(合同会社ムーン・アンド・プラネッツ)、玉澤 春史(東京大学生産技術研究所)

16:30 〜 16:45

[G02-09] 宇宙天気キャスターと宇宙天気インタプリタ育成の為の実践的教育プログラムの検討

*玉置 晋1,2,4、斉田 季実治2,3、小原 隆博4、柴田 一成5髙城 有生1、野澤 恵1 (1.茨城大学、2.ABLab宇宙天気プロジェクト、3.気象キャスターネットワーク、4.放送大学、5.花山宇宙文化財団)

キーワード:宇宙天気教育、宇宙天気キャスタ、宇宙天気インタプリタ

1. はじめに

宇宙天気とは,宇宙と地上の諸施設の性能、信頼度に影響を与え、また、人命に危険を及ぼす太陽から超高層大気に至る領域の状況を示す.宇宙天気の教育・研究を行う茨城大学理学部野澤研究室は,気象キャスターネットワーク,花山宇宙文化財団,ABLab宇宙天気プロジェクトの協力の元で,宇宙天気キャスターと宇宙天気インタプリタ育成の為の実践的教育プログラムを検討している.第25期太陽活動サイクルの極大期を迎え,学術界・専門家主導のもと,科研費プロジェクト 新学術領域研究 太陽地球圏環境予測(PSTEP)や総務省の宇宙天気予報に関する有識者会議を経て,宇宙天気の体系化や宇宙天気予報における警戒レベルの定義化が進められている.一方で、それらを活用して事業リスクに対応する必要がある産業においては,そもそも宇宙天気リスクに対する認知度が低い.結果として,産業界は実働的に宇宙天気リスクに対処できない脆弱さを有している.私達の実践的教育プログラムは,産業界が宇宙天気リスクを認知し,宇宙天気予報を活用して事業や社会活動に生じるリスクに対応できる社会システムを構築することで,社会の安全・安心に貢献することをミッションとしている.私達はこのミッションを達成する為に,適切な情報を伝える「宇宙天気キャスター」と,社会インフラを守る「宇宙天気インタプリタ」の育成が必要だと考えている.

2. 宇宙天気キャスターの為のトレーニング

宇宙天気リスクに対する社会認知の低さの原因の一つは,「宇宙天気のわかりにくさ」である.よって,実践的な宇宙天気情報をわかりやすく,正しく伝える人材の育成が必要だと考える.私達は,地上の天気の情報を,メディアを通じて伝える実績を持つ気象キャスターが対象領域を宇宙天気に拡張することで,他の自然災害と比較した形で情報を発信することが可能となると考えた.既にある熱中症や紫外線情報などと同様に天気予報の一部として伝えることができれば,社会に浸透しやすい.そこで,2023年度に気象キャスターを対象とした宇宙天気講座「宇宙天気予報の作り方 for 気象キャスターネットワーク」を開講し,約50名が受講登録した.講座のカリキュラムは以下のとおりである.

第1講:宇宙天気監視
第2講:宇宙天気分析(太陽編)
第3講:宇宙天気分析(磁気圏編)
第4講:宇宙天気分析(電離圏・熱圏編)
第5講:宇宙天気情報発信
第6講:宇宙天気予報の将来

3. 宇宙天気インタプリタの為のトレーニング

私達は宇宙天気リスクに対応するには,宇宙天気の社会的影響範囲が広い為に,アカデミアと産業界の専門家が協力して取り組む必要があると考える.産業界の専門家が宇宙天気リスク対応に必要十分な知識・技術を身に着けて,各自の宇宙天気リスクを評価・対応できるようになる必要がある.私達は,最初に宇宙システム運用者の為に宇宙天気インタプリタのトレーニングを開始する.本講義は、宇宙機運用や宇宙活動における安全管理者としての役割を担う「宇宙天気インタプリタ」の能力向上を目的とする.受講者は,危険な宇宙環境の下で発生する宇宙機の事故や重大な懸念を最初に学習し,次に宇宙環境対策、宇宙天気危険情報の活用を習得する.さらに宇宙天気に対する宇宙機のローンチホールド判断や軌道上回避判断演習を行う.

第1講:宇宙天気現象の脅威について
第2講:宇宙天気と宇宙機障害について
第3講:宇宙天気災害への対応について
第4講:宇宙天気危険情報の活用について
第5講:宇宙機のローンチホールド判断・軌道上回避判断演習

4.おわりに

宇宙天気の教育・研究を行う茨城大学理学部野澤研究室は,2023年度より気象キャスターを対象とする「宇宙天気キャスター育成講座」,2024年度より宇宙システム運用者を対象とする「宇宙天気インタプリタ育成講座」のカリキュラム検討とその実践を開始する.

本研究は,科研費基盤 C「宇宙天気予報を深化させた宇宙天気インタプリタ育成カリキュラムの開発」(23K02807)の支援を受けた.