日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-04] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

2024年5月26日(日) 09:00 〜 10:15 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(国立極地研究所)、座長:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(国立極地研究所)

09:15 〜 09:30

[G04-02] 中学校理科授業におけるスケルトン地震計の活用

*印南 航1、岡本 義雄、三橋 礼1、佐藤 雄亮1 (1.大阪教育大学附属天王寺中学校)

キーワード:地震計、能登半島地震、中学校、理科授業

背景
 日本は世界有数の地震大国であり、数年に一度、世界的に見ても大きな地震が発生する。今年1月1日にも、能登半島を震源とする大きな地震が起き、甚大な被害を出したことは記憶に新しい。このような、大きな地震が発生する度に、中学校の理科の授業では、その地震のメカニズムなどを生徒とともに考える機会がしばしばある。

課題
 一方で、地震波のデータを扱う授業では、実際の観測データではなく、既存のデータを用いることが多く、実体験を伴うという点においては、ややインパクトに欠ける授業になってしまう。また、地震計の原理を指導する際にも、実際の地震計が手元にないケースが多く、イラストや動画を活用した説明になることがほとんどである。

提案手法
 本研究では、理科室に設置のスケルトン地震計(岡本・根本2023)で記録した実際の地震波データを用いることにより、初期微動継続時間の読み取りや、P波・S波の速度の算出などのデータ分析を、より興味・関心を持って取り組ませることをねらいとした。また、中の構造が透けて見えるスケルトン地震計の特徴を生かし、生徒がいつでも観察できる場所に地震計を設置し、日常の生活の中で、常に地震計の仕組みを学べる環境の構築を目指した。

研究方法
(1)地震計の準備
 スケルトン地震計を理科室前方の準備台に設置した。この際、PCモニターを常に生徒が見られるようにした。Fig.1に理科室内での設置の様子を示す。
(2)地震計の原理の説明
 地震計の構造を、スケルトン地震計の構造を例にして説明した。
(3)観測データの提示
 スケルトン地震計で観測された地震波のうち、能登半島地震が起きた1月1日の1時間ごとの観測データを生徒に提示をした。
(4)観測データの分析
 波形が読み取りやすい1月3日の地震波のデータ分析を行った。データ分析は、初期微動継続時間の読み取りと、P波・S波の速度の算出を行った。
(5)事後アンケートの実施
 地震計および地震波に対する生徒の意識調査を行った。

研究結果
 スケルトン地震計を理科室内に常設することにより、実験台や地面に衝撃を与え、地震計の動きや波形の様子を観察する生徒が多く見られた。Fig.2は、授業開始前に波形を観察する生徒の様子である。
 また、1月1日の地震波データの提示の際には、16時台から波形が大きく変化することに、教室内で大きな驚きの声が上がった。地震波データの読み取りに関しても、初期微動継続時間の読み取りとP波・S波の算出は問題なくできていた。Fig.3に実際に波形の読み取りで使用した、1月3日午前2時21分発生の地震波のデータを示す。

考察
 休み時間中の生徒の様子やアンケート結果から、スケルトン地震計の設置により、地震計や地震波に対して興味・関心が高まることが示された。また、アンケート結果より、地震波データの分析においても、既存のデータを分析するよりも、興味・関心を持ってデータ分析が行えることが示された。

引用文献
[1]岡本義雄・根本泰雄 教室で用いるスケルトン地震計 -アクリル樹脂,ネオジム磁石,およびESP32基板-,日本地学教育学会第77回全国大会滋賀大会Poster,2023