日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-04] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

2024年5月26日(日) 10:45 〜 12:15 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(国立極地研究所)、座長:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(国立極地研究所)

11:15 〜 11:30

[G04-08] 1種類の岩石しか落ちていない海岸で岩石教室-伊豆半島世界ジオパーク土肥海岸での野外自然教室の事例紹介-

*竹林 知大1,2,3、竹林 大介4 (1.名古屋大学大学院 岩石鉱物学研究室、2.山形大学地域教育文化学部、3.ふじのくに地球環境史ミュージアム、4.静岡科学館る・く・る)

キーワード:野外観察会、伊豆半島、ジオパーク、地学教育、STEAM

河原や海岸で地学系の自然野外教室を開くには、複数種類の岩石転石が分布する場所が選ばれる。しかしながら、発表者らは小学生以上の家族を対象とする自然観察会安山岩一種類しか落ちていない海岸で地学教室を2021年7 月31日(土)の伊豆半島戸田御浜岬にて実施した。この野外教室の背景には、同年3月頃に静岡大学と伊豆市修善寺のビジターセンタージオリアから依頼を頂いた。本地域の地質は、駿河湾の海流によって土砂が運ばれて堆積した砂嘴であり、片側の海岸に1種類の安山岩が分布する地球科学教室を開く条件で難所の一つであった。本教室には保護者4人と小学生5人及び大人1人(地元のジオガイド)が参加した。実施内容は岬の先端部にて4項目を行った;項目1:砂の標本づくり(2カ所);項目2:移動中に植生や昆虫観察;項目3:岩石の肉眼とルーペ観察;項目4:海洋漂着物を拾い海洋ゴミ問題の解説。私たちは準備物は衛星画像と採取場所が印刷された砂の標本カードと、安山岩について解説シートが貼付された木箱を参加者分用意した。項目1では、子どもたちは2カ所で砂を採取して、ルーペで観察して、共通点と相違点を考えた。子どもたちは砂の色と粒子の形状特徴が共通点、粒子の大きさが異なる事が相違点と気が付いた。項目2では幅が200 mほどの小さな森であったが、子どもたちは昆虫(クロアゲハなど)や植生に数種類観察した。項目3では、私たちは岩石の解説をすぐに行わず、岩石を肉眼やルーペで観察させ、珍しいと思った岩石をみつけたら講師らに教えてくださいと指示を出した。子どもは岩石を手に取って観察したところ、赤色の安山岩と灰色の安山岩の違い、約1cmを超える巨晶斜長石斑晶を含む安山岩などを見つけ、岩石の大きさ、形、風化の進行具合、結晶の大きさなど多様な特徴を見つけた。項目4では、海岸にプラスチックごみが偶然流れ着いており、そのごみを回収すると同時に、「もしこのゴミが細かくなったらどうなるか」について子どもたちに話し合う時間を設けた。この4つの内容の展開にはトータルで60分かかった。仮に講師から受講者らに対して一方通行型の教室を開いた場合、「この周辺の地質は安山岩が分布しています」と一言で説明が終了してしまう。そこで本教室では一方通行型の教室ではなく、児童らに観察をさせ、疑問や共通点・相違点や珍しい点を発見させ、講師に報告してもらうことを促すなど、主体的で対話的な教室を展開した。さらに地質と動植物は連続的に繋がっており、植物や昆虫の観察を取り入れることで地球システム学の発展をした。近年では授業にSTEM/STEAM教育において、観察や実験などの実体験をさせ、観察や実験から基づいたデータを用いて考察・議論させることが重要視されている。本来ならば地球科学野外教室として開催するのに懸念される1種類の岩石しか落ちていない海岸でも、本実践では子どもたちと十分なコミュニケーションをとる事によって、楽しい自然観察会を開けることが実証された。