17:15 〜 18:45
[HCG20-P01] 処分場の性能評価モデル構築のための地形情報の整備
~その1 河川横断面データの整備~
キーワード:地層処分、河川下刻、地理情報システム(GIS)、性能評価モデル、地形変化シミュレーション
【背景・目的】
高レベル放射性廃棄物の地層処分事業や安全規制において、地層処分のサイト選定や安全評価における重要な隆起・侵食に関する調査・評価技術における課題の一つとして、河川下刻が将来における地表の地形や地下の地質環境に与える変化やその影響について、定量的評価を可能にする必要がある。特に、河川下刻による地表地形の変化は、地下水流動に変化を及ぼすほか処分場が地表近傍に接近した際の処分場の削剥にも影響が大きく及ぶため、将来の地形変化をシミュレーションすることが重要である。地形の変化を取り入れた性能評価モデルとしては、過去にはMiyahara et al. (2011)、近年では山口ほか(2020)により地形変化シミュレーションによる検討がなされている。
このような検討は、両河岸の尾根間の距離、河川幅、下刻深さ、河岸法面の傾斜角など、河川の横断面形状の情報を基にシミュレーションされるが、河川横断形状に関する情報の整理はあまりされていない。著者らは、このような背景のもと、我が国における主要な河川を対象に国土地理院の10 m DEMを用いたGISによる地形解析により、河川を中心とした横断面形状データを取得してきた(川村ほか, 2023)。本検討では、対象河川を増やしデータを拡充し、データ整理を行った。
【実施内容】
予察的な検討として河川の条件は以下のとおりとした。
・地質が比較的一様で海岸から山地までの距離が比較的短い地域
・隆起・侵食速度データなどがある程度推定、把握されている山地を流れている河川
・上記隆起・侵食速度のバリエーションを考慮し複数の河川を選択
上記条件を満たす河川として、安倍川(幹川流路延長51 km)、大井川(同168 km)、熊野川(同183 km)の3河川(川村ほか, 2023)に加え、荒川(同73 km)、黒部川(同85 km)、庄内川(同96 km)、吉井川(同133 km)、四万十川(同196 km)、天塩川(同256 km)、一ノ瀬川(同88 km)、住用川(同15.5 km)の8河川を追加した。
各河川データについては、ArcGISのリニアリファレンスツールを用い、河口を起点とし、距離3km毎に河川の流路に直交する片側2 kmの河川横断線を作成した。河川横断線の位置情報については、横断線中央の緯度、経度、標高および方位を抽出した。標高データは対象範囲の10 m DEMデータを使用した。地質情報は、20万分の1日本シームレス地質図を参照した。
【結果】
追加した8河川の横断面線を同一表示させると、上流ほど河床が上昇し起伏が大きくなる様子が見てとれる。各河川における横断面形状の比較を行った。比較的隆起速度の速い安倍川、大井川、熊野川の中~上流部の河床とピークの比高はおおよそ200~600 mになる傾向がある。一方で隆起速度が小さいとされる吉井川の起伏のピークは100 m程度と小さく、隆起速度との関係が明瞭である。
本発表では、その他下流から上流にかけての比高の変化、河床からピーク標高までの水平距離などを、隆起速度、地質、気候条件等でグルーピングし整理を行った結果を報告する。これらの結果は、地形変化シミュレーションなど将来予測や地形変化を取り入れた性能評価モデルの妥当性の検証等に寄与する情報になる。
【参考文献】
Miyahara et al., (2011): Journal of NUCLEAR SCIENCE and TECHNOLOGY, Vol. 48, pp. 1069-1076.
山口ほか(2020): 原子力バックエンド研究, Vol. 27, pp.72-82.
川村ほか(2023): 日本地質学会講演要旨, T14-O-8.
【謝辞】
本報告は経済産業省資源エネルギー庁委託事業「令和5年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(JPJ007597)(地質環境長期安定性総合評価技術開発)」の成果の一部である。
高レベル放射性廃棄物の地層処分事業や安全規制において、地層処分のサイト選定や安全評価における重要な隆起・侵食に関する調査・評価技術における課題の一つとして、河川下刻が将来における地表の地形や地下の地質環境に与える変化やその影響について、定量的評価を可能にする必要がある。特に、河川下刻による地表地形の変化は、地下水流動に変化を及ぼすほか処分場が地表近傍に接近した際の処分場の削剥にも影響が大きく及ぶため、将来の地形変化をシミュレーションすることが重要である。地形の変化を取り入れた性能評価モデルとしては、過去にはMiyahara et al. (2011)、近年では山口ほか(2020)により地形変化シミュレーションによる検討がなされている。
このような検討は、両河岸の尾根間の距離、河川幅、下刻深さ、河岸法面の傾斜角など、河川の横断面形状の情報を基にシミュレーションされるが、河川横断形状に関する情報の整理はあまりされていない。著者らは、このような背景のもと、我が国における主要な河川を対象に国土地理院の10 m DEMを用いたGISによる地形解析により、河川を中心とした横断面形状データを取得してきた(川村ほか, 2023)。本検討では、対象河川を増やしデータを拡充し、データ整理を行った。
【実施内容】
予察的な検討として河川の条件は以下のとおりとした。
・地質が比較的一様で海岸から山地までの距離が比較的短い地域
・隆起・侵食速度データなどがある程度推定、把握されている山地を流れている河川
・上記隆起・侵食速度のバリエーションを考慮し複数の河川を選択
上記条件を満たす河川として、安倍川(幹川流路延長51 km)、大井川(同168 km)、熊野川(同183 km)の3河川(川村ほか, 2023)に加え、荒川(同73 km)、黒部川(同85 km)、庄内川(同96 km)、吉井川(同133 km)、四万十川(同196 km)、天塩川(同256 km)、一ノ瀬川(同88 km)、住用川(同15.5 km)の8河川を追加した。
各河川データについては、ArcGISのリニアリファレンスツールを用い、河口を起点とし、距離3km毎に河川の流路に直交する片側2 kmの河川横断線を作成した。河川横断線の位置情報については、横断線中央の緯度、経度、標高および方位を抽出した。標高データは対象範囲の10 m DEMデータを使用した。地質情報は、20万分の1日本シームレス地質図を参照した。
【結果】
追加した8河川の横断面線を同一表示させると、上流ほど河床が上昇し起伏が大きくなる様子が見てとれる。各河川における横断面形状の比較を行った。比較的隆起速度の速い安倍川、大井川、熊野川の中~上流部の河床とピークの比高はおおよそ200~600 mになる傾向がある。一方で隆起速度が小さいとされる吉井川の起伏のピークは100 m程度と小さく、隆起速度との関係が明瞭である。
本発表では、その他下流から上流にかけての比高の変化、河床からピーク標高までの水平距離などを、隆起速度、地質、気候条件等でグルーピングし整理を行った結果を報告する。これらの結果は、地形変化シミュレーションなど将来予測や地形変化を取り入れた性能評価モデルの妥当性の検証等に寄与する情報になる。
【参考文献】
Miyahara et al., (2011): Journal of NUCLEAR SCIENCE and TECHNOLOGY, Vol. 48, pp. 1069-1076.
山口ほか(2020): 原子力バックエンド研究, Vol. 27, pp.72-82.
川村ほか(2023): 日本地質学会講演要旨, T14-O-8.
【謝辞】
本報告は経済産業省資源エネルギー庁委託事業「令和5年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(JPJ007597)(地質環境長期安定性総合評価技術開発)」の成果の一部である。