17:15 〜 18:45
[HCG20-P02] 処分場の性能評価モデル構築のための地形情報の整備~その2 流域形状による流出指標データの整備~
キーワード:地層処分、数値標高モデル、地形変化シミュレーション、地形特徴量、流出指標
【背景・目的】
高レベル放射性廃棄物の地層処分事業や安全規制において、地層処分のサイト選定や安全評価における重要な隆起・侵食に関する調査・評価技術における課題の一つとして、将来において主に河川下刻による地形の変化が地下の地質環境に与える変化やその影響について、定量的評価を可能にする必要がある。地質環境条件のうち、地下水の涵養域や流出域の変化は、地表水の地下への浸透または地下水の地表への流出と流向が変化することにもなるため性能評価モデル構築の際に重要となる。
一方、涵養域・流出域の推定には、降水量や河川流量の実測データを用いて行われるものであるが、地形変化シミュレーションを用いた過去や将来あるいは仮想の地形を対象とする場合、実測が不可能であるため推定が困難である。このことを解決する技術の一つして「数値標高モデルを用いた統計量解析手法による流出量の推定手法」が開発され(景山ほか,2010)、東濃地域で適用され河川流量などの実測データとの整合性についても検証されている(竹内ほか,2011)。
ここでは、地形変化シミュレーションへの適用を念頭に、解析手法適用を再確認することを目的として、実際の河川へ適用した結果について報告する。
【実施内容】
検討対象河川としては、流域面積の大小や隆起速度の異なる安倍川、大井川及び吉井川を選定した。それぞれの河川の地形特徴量の計測対象となる流域(計測流域)の区分については、国土地理院発行の数値標高モデルより流路網を抽出し、各流路のHorton-Strahler次数に基づき本流部を定義した上で、本流に流れ込む特定の次数の流路の流域を計測流域として抽出・区分した。各区分された流域(以降「区分流域」とする)について10項目の地形特徴量を計測し、下流から上流にかけての地形特徴量の変化傾向についてデータ化した。また、地形特徴量の変化傾向と、河川下刻等による地形変化との関連性について検討した。なお、比較・検討に用いられる地形特徴量は10項目に及ぶため、比較・検討を容易かつ効率的に実施するため、景山ほか(2010)の手法に基づき主成分分析やクラスター分析による情報の縮約を行った上で比較・検討した。さらに景山ほか(2010)による表面流出(河川流出)の流れ易さ・流れ難さを表す指標として定義された「流出指標」もあわせて算出し河川下刻が地形に与える影響を推定し可視化した。
【結果】
検討対象とした河川について10項目の地形特徴量のうち地形の険しさの指標となる「流域平均侵食高」、「地形の煩雑さ」、「流域起伏数」の主成分得点の高い区分流域が中~上流部に集中する傾向がみられた。また、流出指標については標高が高い区分流域が集中する領域が高い、すなわち表層水が流れやすい傾向になることが示された。この傾向は一般的な理解と整合的であるが、その領域区分を定性的ではなくある程度定量的に提示できたことに意義があると考える。
今後は、適用事例を拡大し適用性について評価するとともに、地形変化シミュレーションで得れた地形についても適用し実地形との比較・検討することにより、地形変化シミュレーション開発・改良へのフィードバックとする。
【参考文献】
景山宗一郎ほか;水文・水資源学会誌, vol. 23, 2010, pp. 301-311.
竹内竜史ほか;JAEA Research 2011-008, 2011, 77p.
【謝辞】
本報告は経済産業省資源エネルギー庁委託事業「令和5年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(JPJ007597)(地質環境長期安定性総合評価技術開発)」の成果の一部である。
高レベル放射性廃棄物の地層処分事業や安全規制において、地層処分のサイト選定や安全評価における重要な隆起・侵食に関する調査・評価技術における課題の一つとして、将来において主に河川下刻による地形の変化が地下の地質環境に与える変化やその影響について、定量的評価を可能にする必要がある。地質環境条件のうち、地下水の涵養域や流出域の変化は、地表水の地下への浸透または地下水の地表への流出と流向が変化することにもなるため性能評価モデル構築の際に重要となる。
一方、涵養域・流出域の推定には、降水量や河川流量の実測データを用いて行われるものであるが、地形変化シミュレーションを用いた過去や将来あるいは仮想の地形を対象とする場合、実測が不可能であるため推定が困難である。このことを解決する技術の一つして「数値標高モデルを用いた統計量解析手法による流出量の推定手法」が開発され(景山ほか,2010)、東濃地域で適用され河川流量などの実測データとの整合性についても検証されている(竹内ほか,2011)。
ここでは、地形変化シミュレーションへの適用を念頭に、解析手法適用を再確認することを目的として、実際の河川へ適用した結果について報告する。
【実施内容】
検討対象河川としては、流域面積の大小や隆起速度の異なる安倍川、大井川及び吉井川を選定した。それぞれの河川の地形特徴量の計測対象となる流域(計測流域)の区分については、国土地理院発行の数値標高モデルより流路網を抽出し、各流路のHorton-Strahler次数に基づき本流部を定義した上で、本流に流れ込む特定の次数の流路の流域を計測流域として抽出・区分した。各区分された流域(以降「区分流域」とする)について10項目の地形特徴量を計測し、下流から上流にかけての地形特徴量の変化傾向についてデータ化した。また、地形特徴量の変化傾向と、河川下刻等による地形変化との関連性について検討した。なお、比較・検討に用いられる地形特徴量は10項目に及ぶため、比較・検討を容易かつ効率的に実施するため、景山ほか(2010)の手法に基づき主成分分析やクラスター分析による情報の縮約を行った上で比較・検討した。さらに景山ほか(2010)による表面流出(河川流出)の流れ易さ・流れ難さを表す指標として定義された「流出指標」もあわせて算出し河川下刻が地形に与える影響を推定し可視化した。
【結果】
検討対象とした河川について10項目の地形特徴量のうち地形の険しさの指標となる「流域平均侵食高」、「地形の煩雑さ」、「流域起伏数」の主成分得点の高い区分流域が中~上流部に集中する傾向がみられた。また、流出指標については標高が高い区分流域が集中する領域が高い、すなわち表層水が流れやすい傾向になることが示された。この傾向は一般的な理解と整合的であるが、その領域区分を定性的ではなくある程度定量的に提示できたことに意義があると考える。
今後は、適用事例を拡大し適用性について評価するとともに、地形変化シミュレーションで得れた地形についても適用し実地形との比較・検討することにより、地形変化シミュレーション開発・改良へのフィードバックとする。
【参考文献】
景山宗一郎ほか;水文・水資源学会誌, vol. 23, 2010, pp. 301-311.
竹内竜史ほか;JAEA Research 2011-008, 2011, 77p.
【謝辞】
本報告は経済産業省資源エネルギー庁委託事業「令和5年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(JPJ007597)(地質環境長期安定性総合評価技術開発)」の成果の一部である。