17:15 〜 18:45
[HCG20-P05] 水文地質情報と地球化学データのGIS解析による上北平野の広域地下水流動評価
キーワード:GIS、水文地質情報、地下水、水質、同位体、上北平野
放射性廃棄物の中深度処分では,廃棄物埋設地を含む広域地下水流動の評価が必要とされる.一般に,地下水流動の評価にあたっては,既存文献から収集される地形・地質,既設井戸の水位・流量等の情報に加え,既設井戸を対象とした地下水調査や地表水調査,ボーリング調査により得られる水質・同位体データ等を基に,対象地域における地下水流動系の概念的理解がなされる.本研究では,青森県上北平野を対象として,既存文献に基づく水文地質情報と既設井戸調査およびボーリング調査に基づく水質・同位体等のデータをGIS上で解析することにより,広域地下水流動について検討した結果を報告する.
青森県東部に位置する上北平野は,海成段丘が平野全体に広く分布する低平な台地型海岸平野であり,北東部には汽水湖である小川原湖が位置している.平野の主要部では,新第三紀以降の地層が比較的水平に堆積しているが,東側や南北に向かってその深度はやや浅くなり,緩やかな盆状構造を示す.本研究では,平野内30ヶ所以上の既設井戸(水源井等)において地下水調査を行うとともに,3地点でボーリング調査を実施し,詳細な地質柱状図,地下水の水質・同位体データ,水理データを取得した.また,既存文献から500地点以上の井戸データを収集し,地質柱状図,井戸の水位・流量等の水文地質データをGIS上に集約した.
既存文献の井戸データから,井戸の位置情報と標高が特定可能なデータを抽出し,地質柱状図の地層区分を行った後,それに基づき3次元地質モデルを作成した(Gresse et al., 2023).地質柱状図と各岩相の代表的な透水係数の値を用いて,各地層区分の鉛直・水平方向の透水係数を概算し,各層における水平方向の流動特性を推定した.また,水文地質データとして,地層区分毎の粘土・シルト層の厚さの割合,水理水頭などをマッピングした.水理水頭分布等を基に,各ボーリング調査地点を通る地下水流動経路と推定される涵養域をGIS上で追跡して求めた.一方,ボーリング調査によって採取した地下水試料の見かけの14C年代は最大で1万6千年から1万9千年程度であり,最終氷期に相当する.発表では,これらを含む水質・同位体データの分布と既存文献に基づく水文地質データの関係を分析し,上北平野における地下水流動の特徴について検討した結果を報告する.
謝辞:本研究は,原子力規制委員会原子力規制庁「平成31年度原子力発電施設等安全技術対策委託費(廃棄物埋設における自然事象等を考慮した地盤の性能評価に関する研究)事業」,「令和2年度原子力発電施設等安全技術対策委託費(自然事象等の評価に関する研究)事業」,「令和3年度原子力発電施設等安全技術対策委託費(廃棄物埋設における自然事象等の評価に関する研究)事業」,「令和4年度原子力発電施設等安全技術対策委託費(廃棄物埋設における自然事象等の評価に関する研究)事業」,および「令和5年度原子力発電施設等安全技術対策委託費(廃棄物埋設における自然事象等の評価に関する研究)事業」として実施した.
文献:Gresse, M. et al. (2023) Preliminary 3D groundwater flow modelling of Kamikita plain (Japan): long-term simulation of seawater intrusion. Japan Geoscience Union Meeting 2023, AHW21-P06.
青森県東部に位置する上北平野は,海成段丘が平野全体に広く分布する低平な台地型海岸平野であり,北東部には汽水湖である小川原湖が位置している.平野の主要部では,新第三紀以降の地層が比較的水平に堆積しているが,東側や南北に向かってその深度はやや浅くなり,緩やかな盆状構造を示す.本研究では,平野内30ヶ所以上の既設井戸(水源井等)において地下水調査を行うとともに,3地点でボーリング調査を実施し,詳細な地質柱状図,地下水の水質・同位体データ,水理データを取得した.また,既存文献から500地点以上の井戸データを収集し,地質柱状図,井戸の水位・流量等の水文地質データをGIS上に集約した.
既存文献の井戸データから,井戸の位置情報と標高が特定可能なデータを抽出し,地質柱状図の地層区分を行った後,それに基づき3次元地質モデルを作成した(Gresse et al., 2023).地質柱状図と各岩相の代表的な透水係数の値を用いて,各地層区分の鉛直・水平方向の透水係数を概算し,各層における水平方向の流動特性を推定した.また,水文地質データとして,地層区分毎の粘土・シルト層の厚さの割合,水理水頭などをマッピングした.水理水頭分布等を基に,各ボーリング調査地点を通る地下水流動経路と推定される涵養域をGIS上で追跡して求めた.一方,ボーリング調査によって採取した地下水試料の見かけの14C年代は最大で1万6千年から1万9千年程度であり,最終氷期に相当する.発表では,これらを含む水質・同位体データの分布と既存文献に基づく水文地質データの関係を分析し,上北平野における地下水流動の特徴について検討した結果を報告する.
謝辞:本研究は,原子力規制委員会原子力規制庁「平成31年度原子力発電施設等安全技術対策委託費(廃棄物埋設における自然事象等を考慮した地盤の性能評価に関する研究)事業」,「令和2年度原子力発電施設等安全技術対策委託費(自然事象等の評価に関する研究)事業」,「令和3年度原子力発電施設等安全技術対策委託費(廃棄物埋設における自然事象等の評価に関する研究)事業」,「令和4年度原子力発電施設等安全技術対策委託費(廃棄物埋設における自然事象等の評価に関する研究)事業」,および「令和5年度原子力発電施設等安全技術対策委託費(廃棄物埋設における自然事象等の評価に関する研究)事業」として実施した.
文献:Gresse, M. et al. (2023) Preliminary 3D groundwater flow modelling of Kamikita plain (Japan): long-term simulation of seawater intrusion. Japan Geoscience Union Meeting 2023, AHW21-P06.