17:15 〜 18:45
[HCG20-P06] コンクリーション化剤を用いた高透水性帯水層のシーリング実証試験
キーワード:コンクリーション化材、高透水性帯水層、炭酸カルシウム、シーリング
はじめに:炭酸塩コンクリーションは、堆積岩中に認められる、硬く固結した岩石の総称である。Yoshida et al.(2015, 2018, 2019, 2020)は、ツノガイの化石を核として持つ球状炭酸塩コンクリーションを分析し、これらが海底堆積物中に埋没した生物遺骸から拡散した重炭酸イオンを含む有機酸と海水中のカルシウムイオンとの過飽和・沈殿反応によって形成されることや、その形成が数年~数十年という、地質学的には極めて短期間で完了することを明らかにした。
炭酸塩コンクリーションの内部では、カルシウムなどの濃度が概ね均質に分布することが元素分布測定などから明らかにされている(Yoshida et al. 2015, 2018)。さらに天然のコクリーション試料の透水試験やエコーチップ硬さ試験装置による硬度の測定の結果、母岩に比べて透水性が低く、硬いことが示された(竹内ほか,2022)。近年、コンクリーションの形成メカニズムを利用した人工のコンクリーション化材(以下、コンシード)が開発され、地下空間のトンネル周辺の緩み領域などのシーリング材として適用する試験が行われている。コンシードは、含まれるカルシウムイオンと重炭酸イオンの反応で形成される炭酸カルシウムが岩盤中の空隙を充填し拡がっていくことが幌延地下研などで確認されている(たとえば、吉田、2023)。今回、現場適用試験の一環として、高透水性の砂礫層中に掘削された井戸を対象にコンシードを用いたシーリング試験を実施した。本講演では、コンシード注入前後の透水性の変化等について紹介する。
実施内容と結果:原位置試験は東京都世田谷区にある日本大学文理学部の敷地内に掘削された深度約15~18mの井戸を用いて実施した。このサイトには深度約10~12mの範囲にほぼ水平な砂礫層から構成される、1E-4 (m/s)オーダーの透水係数を有する帯水層が分布している。サイト内には合計5本の井戸が掘削されており、それぞれ砂礫層の下部1mの深度にスクリーンが設置されている。これらのうち南北方向に直線状に並ぶ4本の井戸のうち、0.5m間隔で掘削された3本を主な試験対象とした。3本の井戸の両端の井戸のスクリーン区間を対象に、セメントミルクとコンシードを混ぜた止水材を注入した。コンシードは、混和させたセメントや地下水中のカルシウムイオンとの化学反応により炭酸カルシウムを形成し、時間とともに硬化領域が拡がっていくことが期待される。これにより3本のうちの中央の井戸の透水性の変化を指標にコンシードによる止水効果を評価している。2024年1月中旬にコンシードを注入し、その後、2週間~1か月間隔で透水試験(スラグ試験や揚水試験)を実施することとしている。
注入の結果、注入孔横の中央の井戸への注入材の到達が確認された。さらに2週間後に中央の井戸で実施したスラグ試験で求められた透水係数は2.0E-5 (m/s)であり、コンシード注入前の1.5E-4(m/s)と比べて一桁程度低下していることが確認された。
まとめ:コンシード注入後、2週間で中央の井戸の透水性が低下する傾向が確認された。コンシードの特性を考慮すれば、今後、時間経過とともに低透水性の領域が拡大することが期待される。今後も定期的な透水試験を実施し、経過を確認する予定である。加えて、炭酸カルシウム形成に伴う硬化領域の拡がりを確認するための地震波探査も実施しており、その経過についても報告する。
今回対象としている1E-4 (m/s)程度の透水係数を有する高透水性地盤におけるコンシードの止水効果が確認されれば、今後は本材料を地下施設等のシーリングのみならず、その他の浅層の地盤改良にも適用することが期待される。
炭酸塩コンクリーションの内部では、カルシウムなどの濃度が概ね均質に分布することが元素分布測定などから明らかにされている(Yoshida et al. 2015, 2018)。さらに天然のコクリーション試料の透水試験やエコーチップ硬さ試験装置による硬度の測定の結果、母岩に比べて透水性が低く、硬いことが示された(竹内ほか,2022)。近年、コンクリーションの形成メカニズムを利用した人工のコンクリーション化材(以下、コンシード)が開発され、地下空間のトンネル周辺の緩み領域などのシーリング材として適用する試験が行われている。コンシードは、含まれるカルシウムイオンと重炭酸イオンの反応で形成される炭酸カルシウムが岩盤中の空隙を充填し拡がっていくことが幌延地下研などで確認されている(たとえば、吉田、2023)。今回、現場適用試験の一環として、高透水性の砂礫層中に掘削された井戸を対象にコンシードを用いたシーリング試験を実施した。本講演では、コンシード注入前後の透水性の変化等について紹介する。
実施内容と結果:原位置試験は東京都世田谷区にある日本大学文理学部の敷地内に掘削された深度約15~18mの井戸を用いて実施した。このサイトには深度約10~12mの範囲にほぼ水平な砂礫層から構成される、1E-4 (m/s)オーダーの透水係数を有する帯水層が分布している。サイト内には合計5本の井戸が掘削されており、それぞれ砂礫層の下部1mの深度にスクリーンが設置されている。これらのうち南北方向に直線状に並ぶ4本の井戸のうち、0.5m間隔で掘削された3本を主な試験対象とした。3本の井戸の両端の井戸のスクリーン区間を対象に、セメントミルクとコンシードを混ぜた止水材を注入した。コンシードは、混和させたセメントや地下水中のカルシウムイオンとの化学反応により炭酸カルシウムを形成し、時間とともに硬化領域が拡がっていくことが期待される。これにより3本のうちの中央の井戸の透水性の変化を指標にコンシードによる止水効果を評価している。2024年1月中旬にコンシードを注入し、その後、2週間~1か月間隔で透水試験(スラグ試験や揚水試験)を実施することとしている。
注入の結果、注入孔横の中央の井戸への注入材の到達が確認された。さらに2週間後に中央の井戸で実施したスラグ試験で求められた透水係数は2.0E-5 (m/s)であり、コンシード注入前の1.5E-4(m/s)と比べて一桁程度低下していることが確認された。
まとめ:コンシード注入後、2週間で中央の井戸の透水性が低下する傾向が確認された。コンシードの特性を考慮すれば、今後、時間経過とともに低透水性の領域が拡大することが期待される。今後も定期的な透水試験を実施し、経過を確認する予定である。加えて、炭酸カルシウム形成に伴う硬化領域の拡がりを確認するための地震波探査も実施しており、その経過についても報告する。
今回対象としている1E-4 (m/s)程度の透水係数を有する高透水性地盤におけるコンシードの止水効果が確認されれば、今後は本材料を地下施設等のシーリングのみならず、その他の浅層の地盤改良にも適用することが期待される。