15:30 〜 15:45
[HCG22-01] 生涯二酸化炭素排出量の世代間比較: 公平性と将来への示唆
キーワード:気候変動、世代間格差、グローバルサウス、公平性、生涯二酸化炭素排出量、気候変動に対する責任
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の評価報告書では、世界平均気温で測定される気候変動の悪化と、温室効果ガスの累積排出量との間に明らかな相関があることが強調されている。温室効果ガスは個々の国から排出されるが、その影響は国境を越え、地球規模の気候変動と損害の不平等な分配をもたらす。歴史的な二酸化炭素の排出は、主に北半球の国々に起因しているが、気候変動進行への寄与が最も少ない南半球の地域社会は今後数十年、さらには数世紀にわたって、気候変動による最も重い負担を負うことになると予想されている。このような理由から、人為的な気候変動は地理的にも時間的にも不公平の問題とみなされることが多い。地理的な気候正義については広範な研究が行われているが、世代間の不公平の検討については議論が十分とは言い難い。したがって、本研究の目的は生涯炭素排出量の分析を通じて世代間格差を精査することで、気候変動の原因に対する責任の格差を明らかにすることである。
本研究では1900年から2070年の間に生まれた世代について、共通社会経済経路-代表的濃度経路(SSP-RCP)シナリオの枠組みの中で、一人当たりの生涯二酸化炭素排出量を計算した。その結果、SSP1下を仮定すると全世代における一人当たりの生涯排出量に関して、RCP1.9の下では、1971年生まれの個人が生涯に排出する二酸化炭素量が最も多く、1960年生まれや2000年生まれの人の約1.5倍になると予測された。逆にRCP4.5では2005年生まれの人が最大の責任を負うことになる。ベースライン・シナリオでは、2050年以降に生まれた人が最大の負担を負うことになる。(Figure. 1)
また、世代間の二酸化炭素排出量の格差だけでなく、グローバル・サウスに対する格差を認識することも不可欠である。そこで我々はOECD加盟国と非加盟国の生涯二酸化炭素排出量を比較した。その結果、2000年頃まではOECD諸国が一人当たりの生涯排出量を独占していたが、SSP1-RCP1.9の下では、OECD諸国の一人当たりの生涯二酸化炭素累積排出量は急速に減少し、2020年頃にはOECD諸国と非OECD諸国との間で逆転が起こると予想される。またSSP2-RCP3.4では、一人当たりの生涯二酸化炭素排出量は2050年以降に安定し、OECD加盟国と非加盟国の生涯二酸化炭素排出量には完全な逆転は起きないと考えられる。逆にSSP3-RCP7.0では格差が拡大し、世代間格差だけでなく地域間格差も拡大することを示している。(Figure. 2)
本研究で明らかになった世代間の生涯二酸化炭素排出量の変動は、将来の排出パターンに左右される気候変動に対する責任の流動的な性質を強調している。この研究結果は、上の世代により大きな責任があると主張する若い世代を非難するためのものではない。社会の分断化と排出量の増加というシナリオの下では、世代間格差だけでなく、北半球と南半球の地理的格差もさらに拡大することは言を俟たない。このことは、若い世代に課せられた責任の大きさを強調するものであり、今後の緩和努力の進展と効果が重要であることを示している。
本研究では1900年から2070年の間に生まれた世代について、共通社会経済経路-代表的濃度経路(SSP-RCP)シナリオの枠組みの中で、一人当たりの生涯二酸化炭素排出量を計算した。その結果、SSP1下を仮定すると全世代における一人当たりの生涯排出量に関して、RCP1.9の下では、1971年生まれの個人が生涯に排出する二酸化炭素量が最も多く、1960年生まれや2000年生まれの人の約1.5倍になると予測された。逆にRCP4.5では2005年生まれの人が最大の責任を負うことになる。ベースライン・シナリオでは、2050年以降に生まれた人が最大の負担を負うことになる。(Figure. 1)
また、世代間の二酸化炭素排出量の格差だけでなく、グローバル・サウスに対する格差を認識することも不可欠である。そこで我々はOECD加盟国と非加盟国の生涯二酸化炭素排出量を比較した。その結果、2000年頃まではOECD諸国が一人当たりの生涯排出量を独占していたが、SSP1-RCP1.9の下では、OECD諸国の一人当たりの生涯二酸化炭素累積排出量は急速に減少し、2020年頃にはOECD諸国と非OECD諸国との間で逆転が起こると予想される。またSSP2-RCP3.4では、一人当たりの生涯二酸化炭素排出量は2050年以降に安定し、OECD加盟国と非加盟国の生涯二酸化炭素排出量には完全な逆転は起きないと考えられる。逆にSSP3-RCP7.0では格差が拡大し、世代間格差だけでなく地域間格差も拡大することを示している。(Figure. 2)
本研究で明らかになった世代間の生涯二酸化炭素排出量の変動は、将来の排出パターンに左右される気候変動に対する責任の流動的な性質を強調している。この研究結果は、上の世代により大きな責任があると主張する若い世代を非難するためのものではない。社会の分断化と排出量の増加というシナリオの下では、世代間格差だけでなく、北半球と南半球の地理的格差もさらに拡大することは言を俟たない。このことは、若い世代に課せられた責任の大きさを強調するものであり、今後の緩和努力の進展と効果が重要であることを示している。