16:45 〜 17:00
[HCG23-11] 諏訪湖堆積物コア中の古土壌層におけるバイオマーカー組成の特徴

キーワード:古土壌、バイオマーカー、諏訪湖、古環境、最終氷期、湖沼堆積物
土壌は気候、生物、地形などの土壌生成因子が多様に影響することで形成される。そのため、過去に形成され、埋没した古土壌は陸域の古気候、古環境情報を記録した重要なアーカイヴである。その認定においては現地性の植物根や土壌層位、土壌構造に着目するが(Retallack et al., 2001)、堆積物中の有機物も土壌化作用によって変質しており、有機地球化学的な古土壌の評価が可能である。湖沼は湖水域の拡大縮小に応じて河川域や湿原などの環境に遷移しやすく、湖岸においては堆積環境が急激に変化する。長野県諏訪湖は湖面積が大きく変動しており、湖岸の陸上コアには多様な堆積相が含まれている。また、湖成層中にも古土壌が認定されており、一時的に堆積物が大気へ露出して土壌化作用を受けたことが分かっている(Hatano et al., 2023)。そのため、堆積相と比較した有機分子指標の検討や土壌化作用による有機物への影響を評価することができる。本研究では諏訪湖堆積物に含まれる生物起源有機分子(バイオマーカー)を用い、堆積環境の復元、土壌化作用の評価を行う。
本研究では2020年に諏訪湖湖岸域で採取された堆積物コアST2020を用いた。コアの年代はAMS14C年代測定により決定し、コア最下部が約2.7万年前である。堆積学的な調査から蛇行河川―氾濫原相(meandering fluvial)、沼沢相(pond)、湖成相(lacustrine)、デルタ相(delta plain)と堆積環境が大きく変化したことが推定されている。コアを通じて古土壌が認定されており、湖沼堆積物中にも古土壌層が挟在する(Hatano et al., 2023)。コア試料は1~2cm層厚で採取、溶媒抽出成分をカラムで分画し、GC-MS測定によりバイオマーカー分析を行った。
堆積物試料からは長鎖n-アルカン、アンテイソアルカン、C30ホパンが検出された。n-アルカンは植物ワックスに由来し、生体内では奇数鎖が卓越するため、奇数炭素鎖優位性指標(CPI)はn-アルカンの続成の程度を示す。また、バクテリア由来のC30ホパンは生合成された初期は17β(H), 21β(H)の立体配置が卓越するため、すべてのホパンに対するββ体ホパンの割合(ββホパン比)も続成の指標として用いられる。古土壌においてCPIが低い値、ββホパン比が特徴的に高い値をとった。同様に、粘土集積構造やargillanは認められないが、根化石を含む試料においてもCPIが低く、ββホパン比が高かった。これは根化石の影響を反映した結果であると考えられる。古土壌認定にも用いられる根は他の植物部位と比べて奇数鎖優位性が低いことが報告されており(Gocke et al., 2013)、根由来のn-アルカンが付加したことでCPIが下がったのだと考えられる。また、根圏にはホパンを生成するバクテリアが豊富に存在しており(Belin et al., 2018)、生体的なββホパンが加わり、高いββホパン比をとったのだと考えられる。アンテイソアルカンは3位にメチル基を持つアルカンであり、古土壌や根化石を含む試料において高濃度に検出された。アンテイソアルカンは微生物活動に由来するという報告があり(Matsumoto et al., 1992)、これらの層準において微生物活動が活発であった可能性がある。
本研究では2020年に諏訪湖湖岸域で採取された堆積物コアST2020を用いた。コアの年代はAMS14C年代測定により決定し、コア最下部が約2.7万年前である。堆積学的な調査から蛇行河川―氾濫原相(meandering fluvial)、沼沢相(pond)、湖成相(lacustrine)、デルタ相(delta plain)と堆積環境が大きく変化したことが推定されている。コアを通じて古土壌が認定されており、湖沼堆積物中にも古土壌層が挟在する(Hatano et al., 2023)。コア試料は1~2cm層厚で採取、溶媒抽出成分をカラムで分画し、GC-MS測定によりバイオマーカー分析を行った。
堆積物試料からは長鎖n-アルカン、アンテイソアルカン、C30ホパンが検出された。n-アルカンは植物ワックスに由来し、生体内では奇数鎖が卓越するため、奇数炭素鎖優位性指標(CPI)はn-アルカンの続成の程度を示す。また、バクテリア由来のC30ホパンは生合成された初期は17β(H), 21β(H)の立体配置が卓越するため、すべてのホパンに対するββ体ホパンの割合(ββホパン比)も続成の指標として用いられる。古土壌においてCPIが低い値、ββホパン比が特徴的に高い値をとった。同様に、粘土集積構造やargillanは認められないが、根化石を含む試料においてもCPIが低く、ββホパン比が高かった。これは根化石の影響を反映した結果であると考えられる。古土壌認定にも用いられる根は他の植物部位と比べて奇数鎖優位性が低いことが報告されており(Gocke et al., 2013)、根由来のn-アルカンが付加したことでCPIが下がったのだと考えられる。また、根圏にはホパンを生成するバクテリアが豊富に存在しており(Belin et al., 2018)、生体的なββホパンが加わり、高いββホパン比をとったのだと考えられる。アンテイソアルカンは3位にメチル基を持つアルカンであり、古土壌や根化石を含む試料において高濃度に検出された。アンテイソアルカンは微生物活動に由来するという報告があり(Matsumoto et al., 1992)、これらの層準において微生物活動が活発であった可能性がある。