日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG25] 文化水文学

2024年5月27日(月) 13:45 〜 15:00 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:中村 高志(山梨大学大学院・国際流域環境研究センター)、近藤 康久(総合地球環境学研究所)、高橋 そよ(琉球大学)、安原 正也(立正大学地球環境科学部)、座長:中村 高志(山梨大学大学院・国際流域環境研究センター)、安原 正也(立正大学地球環境科学部)、近藤 康久(総合地球環境学研究所)

14:15 〜 14:30

[HCG25-03] 能登半島地震による水利用の影響調査速報(1):地域における小規模な水源の役割

*中村 高志1西田 継1伊藤 友里1、野水 克也2、山本 亮3 (1.山梨大学大学院・国際流域環境研究センター、2.サイボウズ株式会社、3.株式会社 百笑の暮らし)

キーワード:能登半島地震、避難生活、生活用水、地域の水源

2023年1月1日16時10分に能登半島で発生した地震は、穴水町の北東42km、深さ16km(暫定値)を震源とし、マグニチュード7.6で観測最大震度7を記録した。この地震により能登半島の広い範囲で家屋倒壊、土砂崩れ等、甚大な被害が生じた。発表者らは地元住民の要請により2月8〜10日の間に現地入りし、輪島市の山間部に位置する三井地区において水利用の被災状況と時の代替え水源となり得る井戸や湧水、表流水について調査を実施した。
 輪島市三井地区の上水道の水源は、およそ12km離れた市街地にある標高6mの輪島浄水場から三井地区の配水池のある山間部まで複数のポンプ場を経由して送水されていたが、震災後から導水管や配水池のタンク破損により断水となっていた。これに対して、臨時の河川水取水とろ過システムを導入するほか、導水管の漏水点検および修復を進めているが、2月10日の時点で断水は続いていた。
 指定避難所には生活用水として給水タンクが配備され、ポリタンクへ汲んで持ち帰るという生活が続いていた。このため、入浴はもちろんトイレや炊事も満足に行えない状況が1ヶ月以上も続いている。一方、山間部集落においては古くから裏山の沢水や自宅の井戸を生活用水として利用していた住宅も多く、こうした家や集落では震災後1週間程度で復旧した電力により井戸ポンプが利用でき、生活用水については震災前と同等の利用ができていた。さらに井戸水を有する家においては被災者間でのトイレやお風呂の共有や、井戸水の導水パイプを隣接する家屋に接続するなど、地域での互助も行われていた。このような状況下において、従民の中には既存の水道システム以外の代替水源の重要性の認識が広まっていて、地域の伝統的な小規模な水源の価値が見直されていた。発表においては、代替水源となり得る地域の水について水文学的な特徴をまとめ、今後実施予定の追加調査の結果を含めて報告を行う。