11:30 〜 11:45
[HDS10-09] 人工島に立地する集合住宅居住者の防災意識の変化に関する研究
神戸市中央区港島地区での調査結果から
キーワード:防災意識、集合住宅、自宅避難、人工島
2011年に発生した東日本大震災では想定された収容人数を超過することによる避難所不足が発生し、避難を必要とする状況にありながら行政によって準備された避難所での避難ができない被災者が多数発生した。その原因のひとつとして、中高層集合住宅の住民が避難所に避難したことがあげられる。比較的被害の少ないことが想定される中高層集合住宅の住民は、少なくとも当日は避難所への避難を行わないものと思われていた。しかし、自宅に被害は無いものの、度重なる余震への不安やライフラインの停止、 家具の転倒による室内空間の確保ができなくなることで、避難所への避難を選択したと思われる。さらには2020年以降の新型コロナウイルス感染症拡大の影響は、避難所の想定収容人員の点での見直しを迫ることになった。これまでよりも余裕を持った空間での避難が必要となるという認識から、従来の収容定員を見直す動きや、感染拡大防止を優先して避難所での受け入れを断る事例なども発生している。
これらをふまえると、中高層集合住宅が多く立地する地区において災害対策を進める場合、災害発生時、もしくは災害発生の恐れがある場合に住民それぞれがどのように避難行動を取るのかを把握しておくことが、このような混乱を防ぐためには必要となる。実際に風水害時には避難所への避難が唯一の選択肢ではなく、なるべく高い場所で安全を確保するといった垂直避難が推奨される場合もある。さらに、人口密度が高く、地域防災計画によって指定される避難所の収容人員と、周辺に居住する住民の数に大きく乖離がある上に、避難所における空間の余裕を確保することが求められることになれば、災害時の安全確保については、自宅に留まることも重要な選択肢の一つとして引き続き考えなくてはならない。
これらを踏まえ、本研究では人工島に立地し、中高層集合住宅のみで構成される地区における住民の防災意識の実情を把握することで、対策を効果的にするための方法について考察する。具体的な研究対象として神戸市中央区港島地区を取り上げ、継続的な地域全体の防災活動をする中で、住民の意識がどのように変化していくのかを質問紙調査の結果から分析する。
調査は2018年と2023年に、それぞれすべての世帯を対象として質問紙を配布、回収する形で実施されている。2018年の調査の直前には、大阪北部地震、台風19号が発生し、影響が発生している。それが契機となり防災意識が向上したとはいえず、むしろ1995年の阪神・淡路大震災の被災経験が自宅での備えに繋がっていることが明らかとなった。また、災害時の懸念としては、飲料水や食料の不足もさることながら、トイレが利用できないことに対する回答が最も多くなった。しかしながら回答者の実際の備えの中にはトイレ対策は含まれていない。その結果を受けて、自宅での避難を地域として推奨するものの、非常用トイレの対策については地域全体で普及を進めてきた。
さまざまな防災に関する取組を継続してきたあとの2023年に再度、ほぼ同様の設問で質問紙調査を実施した。まずは回収率が大きく向上し、2018年には全体で19.4%だったものが2023年には30.4%まで上昇している。また、災害時の懸念に関しては、最初の調査の結果と同様、トイレに関する心配が最も多く回答された。それに対する備えとして、2018年調査において非常用トイレの備蓄をしているという回答は14.0%だったものが、2023年調査では43.4%と大きく向上している。
自宅で避難することを前提とし、そのためのトイレ機能の確保の重要性を地区全体で周知してきた。また非常用トイレの斡旋も行ってきた。こういった地域の実情に合わせた対策の積み重ねが、地区住民の防災意識の向上、そして具体的かつ有効性の高い個人の対策へと繋がっていることが明らかとなった。
さらには、築年数ごとの住民意識の違いや、分譲マンションと賃貸マンション住民間の意識の違いも明らかとなっている。住宅や居住地のリスクを適切に判断し、その対策も地区全体で検討、実践することが住民全体の防災リテラシーと具体的対策の充実の双方に有効に機能することが明らかとなったといえる。
これらをふまえると、中高層集合住宅が多く立地する地区において災害対策を進める場合、災害発生時、もしくは災害発生の恐れがある場合に住民それぞれがどのように避難行動を取るのかを把握しておくことが、このような混乱を防ぐためには必要となる。実際に風水害時には避難所への避難が唯一の選択肢ではなく、なるべく高い場所で安全を確保するといった垂直避難が推奨される場合もある。さらに、人口密度が高く、地域防災計画によって指定される避難所の収容人員と、周辺に居住する住民の数に大きく乖離がある上に、避難所における空間の余裕を確保することが求められることになれば、災害時の安全確保については、自宅に留まることも重要な選択肢の一つとして引き続き考えなくてはならない。
これらを踏まえ、本研究では人工島に立地し、中高層集合住宅のみで構成される地区における住民の防災意識の実情を把握することで、対策を効果的にするための方法について考察する。具体的な研究対象として神戸市中央区港島地区を取り上げ、継続的な地域全体の防災活動をする中で、住民の意識がどのように変化していくのかを質問紙調査の結果から分析する。
調査は2018年と2023年に、それぞれすべての世帯を対象として質問紙を配布、回収する形で実施されている。2018年の調査の直前には、大阪北部地震、台風19号が発生し、影響が発生している。それが契機となり防災意識が向上したとはいえず、むしろ1995年の阪神・淡路大震災の被災経験が自宅での備えに繋がっていることが明らかとなった。また、災害時の懸念としては、飲料水や食料の不足もさることながら、トイレが利用できないことに対する回答が最も多くなった。しかしながら回答者の実際の備えの中にはトイレ対策は含まれていない。その結果を受けて、自宅での避難を地域として推奨するものの、非常用トイレの対策については地域全体で普及を進めてきた。
さまざまな防災に関する取組を継続してきたあとの2023年に再度、ほぼ同様の設問で質問紙調査を実施した。まずは回収率が大きく向上し、2018年には全体で19.4%だったものが2023年には30.4%まで上昇している。また、災害時の懸念に関しては、最初の調査の結果と同様、トイレに関する心配が最も多く回答された。それに対する備えとして、2018年調査において非常用トイレの備蓄をしているという回答は14.0%だったものが、2023年調査では43.4%と大きく向上している。
自宅で避難することを前提とし、そのためのトイレ機能の確保の重要性を地区全体で周知してきた。また非常用トイレの斡旋も行ってきた。こういった地域の実情に合わせた対策の積み重ねが、地区住民の防災意識の向上、そして具体的かつ有効性の高い個人の対策へと繋がっていることが明らかとなった。
さらには、築年数ごとの住民意識の違いや、分譲マンションと賃貸マンション住民間の意識の違いも明らかとなっている。住宅や居住地のリスクを適切に判断し、その対策も地区全体で検討、実践することが住民全体の防災リテラシーと具体的対策の充実の双方に有効に機能することが明らかとなったといえる。
