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[HDS10-P02] 御嶽山地域と他の火山地域における地域住民や観光客・登山客に対する火山防災啓発の取り組みの比較
キーワード：火山防災、防災リテラシー、御嶽山、質的研究
本発表では2014年の噴火以降の御嶽山地域における住民や観光客・登山客への火山防災啓発活動と他の火山地域の活動について比較する。
65名（行方不明者含む）が犠牲になった2014年の御嶽山噴火から10年が経過しようとしている。この噴火は前兆の捉えにくい水蒸気噴火であり、比較的小規模であったが、噴火時、火口付近に多数の登山者が訪れていたため、被害が大きくなった。この噴火を契機に火山周辺の住民だけでなく登山者に対する火山防災の必要性が国や自治体で議論された。
御嶽山地域では岐阜・長野両県の火山防災協議会関係者で行われたワークショップ（1）や長野県火山防災のあり方検討会（2）で火山防災のあり方が議論された。それらの結果を受けて、2017年に名古屋大学御嶽山火山研究施設が設置され（3）、2018年から火山マイスター制度が発足した（4）。さらに2022年8月には、御嶽山ビジターセンターが、木曽町（「さとテラス三岳」道の駅三岳）および長野県と王滝村（「やまテラス王滝」田の原登山口）によって開設された（4）。現在、これらの施設・組織を中心に火山活動の評価、火山の知識や防災の啓発、地域振興の活動が行われている（5）。
演者らは、噴火以降の御嶽山地域の火山防災普及活動を他地域の例と比較し、位置づけるために、洞爺湖有珠火山マイスター、磐梯山噴火記念館、箱根ジオミュージアム、富士山科学研究所、阿蘇火山博物館、雲仙岳災害記念館、桜島ミュージアムを訪問、インタビュー調査を行った（6,7）。
登山者への火山防災啓発に関しては、御嶽山地域では、火山マイスターによる登山ルートでの啓発活動や登山者を対象とした避難訓練(8)など独自の試みが行われている。一方、住民への啓発に関しては、地元の火山防災への関心が高まらず、火山マイスター制度もあまり周知できていないという課題がある。有珠山や富士山など火山防災に対する住民の関心が高い地域での啓発活動や火山のもたらす恵みと災害の両面を伝えるジオパーク活動が参考になると考えられる。また、他の火山地域から火山防災を見直すきっかけとなった御嶽山地域への関心が寄せられており、相互交流や情報交換が有益であると考えられる。2024年2月に御嶽山火山マイスターの九州地域（阿蘇・雲仙）への視察が予定されている。
＊本研究は文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画（第２次）」の支援を受けた。
(1)Nakamura et al. (2019) An Approach to Volcano Disaster Resilience and Governance: Action Research in Japan in the aftermath of Mt. Ontake Eruption, Journal of Disaster Research, 14, 829-842.
(2)https://www.pref.nagano.lg.jp/bosai/kurashi/shobo/bosai/bosai/kazanarikata/chukanhokoku.html
(3)國友孝洋, 田ノ上和志, 山岡耕春（2018）名古屋大学御嶽山火山研究施設, 日本火山学会講演予稿集, B1-11.
(4)窪田 優希, 田ノ上 和志 (2018) 御嶽山火山マイスターが創る新たな“火山防災”の取組, 日本火山学会講演予稿集, P119.
(5)金幸隆 他 (2022) 御嶽山ビジターセンターを活用した火山教育と防災啓発の意義, 日本火山学会予稿集P2-14.
(6) 堀井雅恵 他（2023）2014年噴火以降の御嶽山地域の火山防災啓発活動の相対的位置づけ‐他の火山地域との比較から‐, 日本火山学会予稿集B3-21.
(7) Horii et al. (2024) Comparative Study of Literacy Enhancement on Volcanic Disaster Reduction for the Residents and Visitors in Mt. Ontakesan and Other Volcanic Areas, Journal of Disaster Research, 19, 159-172.
(8) 金幸隆 他 (2023) 御嶽山における初の登山者参加型避難訓練, 日本火山学会予稿集B3-22.
65名（行方不明者含む）が犠牲になった2014年の御嶽山噴火から10年が経過しようとしている。この噴火は前兆の捉えにくい水蒸気噴火であり、比較的小規模であったが、噴火時、火口付近に多数の登山者が訪れていたため、被害が大きくなった。この噴火を契機に火山周辺の住民だけでなく登山者に対する火山防災の必要性が国や自治体で議論された。
御嶽山地域では岐阜・長野両県の火山防災協議会関係者で行われたワークショップ（1）や長野県火山防災のあり方検討会（2）で火山防災のあり方が議論された。それらの結果を受けて、2017年に名古屋大学御嶽山火山研究施設が設置され（3）、2018年から火山マイスター制度が発足した（4）。さらに2022年8月には、御嶽山ビジターセンターが、木曽町（「さとテラス三岳」道の駅三岳）および長野県と王滝村（「やまテラス王滝」田の原登山口）によって開設された（4）。現在、これらの施設・組織を中心に火山活動の評価、火山の知識や防災の啓発、地域振興の活動が行われている（5）。
演者らは、噴火以降の御嶽山地域の火山防災普及活動を他地域の例と比較し、位置づけるために、洞爺湖有珠火山マイスター、磐梯山噴火記念館、箱根ジオミュージアム、富士山科学研究所、阿蘇火山博物館、雲仙岳災害記念館、桜島ミュージアムを訪問、インタビュー調査を行った（6,7）。
登山者への火山防災啓発に関しては、御嶽山地域では、火山マイスターによる登山ルートでの啓発活動や登山者を対象とした避難訓練(8)など独自の試みが行われている。一方、住民への啓発に関しては、地元の火山防災への関心が高まらず、火山マイスター制度もあまり周知できていないという課題がある。有珠山や富士山など火山防災に対する住民の関心が高い地域での啓発活動や火山のもたらす恵みと災害の両面を伝えるジオパーク活動が参考になると考えられる。また、他の火山地域から火山防災を見直すきっかけとなった御嶽山地域への関心が寄せられており、相互交流や情報交換が有益であると考えられる。2024年2月に御嶽山火山マイスターの九州地域（阿蘇・雲仙）への視察が予定されている。
＊本研究は文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画（第２次）」の支援を受けた。
(1)Nakamura et al. (2019) An Approach to Volcano Disaster Resilience and Governance: Action Research in Japan in the aftermath of Mt. Ontake Eruption, Journal of Disaster Research, 14, 829-842.
(2)https://www.pref.nagano.lg.jp/bosai/kurashi/shobo/bosai/bosai/kazanarikata/chukanhokoku.html
(3)國友孝洋, 田ノ上和志, 山岡耕春（2018）名古屋大学御嶽山火山研究施設, 日本火山学会講演予稿集, B1-11.
(4)窪田 優希, 田ノ上 和志 (2018) 御嶽山火山マイスターが創る新たな“火山防災”の取組, 日本火山学会講演予稿集, P119.
(5)金幸隆 他 (2022) 御嶽山ビジターセンターを活用した火山教育と防災啓発の意義, 日本火山学会予稿集P2-14.
(6) 堀井雅恵 他（2023）2014年噴火以降の御嶽山地域の火山防災啓発活動の相対的位置づけ‐他の火山地域との比較から‐, 日本火山学会予稿集B3-21.
(7) Horii et al. (2024) Comparative Study of Literacy Enhancement on Volcanic Disaster Reduction for the Residents and Visitors in Mt. Ontakesan and Other Volcanic Areas, Journal of Disaster Research, 19, 159-172.
(8) 金幸隆 他 (2023) 御嶽山における初の登山者参加型避難訓練, 日本火山学会予稿集B3-22.