17:15 〜 18:45
[HDS10-P05] 文化遺産防災マップによる文化遺産の災害リスク評価について
キーワード:文化遺産の防災、災害時における文化遺産の被災推定、文化遺産防災マップ、文化遺産の災害リスク評価
自然災害時においては、被災地の個人や社会と同様に、地域の文化財や歴史的な文物といった様々な文化遺産も危機的な状況に陥る。被災文化遺産に対する救済や支援は、近年の災害において注視されるようになってきたが、災害直後の人命救助や被災者の生活再建が優先される中で、文化遺産が失われる場合も数多い。文化遺産においても、被災地の復旧を妨げないことに留意した上で、可能な限り速やかに対応をする必要がある。報告では、オンラインマップで作成した文化遺産防災マップを活用し、災害時における文化遺産の被災推定とこれによる文化遺産救援の迅速化、さらに平常時における文化遺産に対する災害リスクの可視化について述べていくことにする。
文化遺産マップは、2011年の東日本大震災における経験をもとに作成を開始した。大規模災害時、甚大な被害をうけた被災地においては、交通網・情報網の遮断によって現地の情報が得られない場合が多い。ゆえに、事前に国や自治体が指定する文化財情報をはじめとした各種文化遺産の情報をオンラインマップ上に登録した文化遺産防災マップを構築し、災害時発生時には関係各所から発信される被災情報を重ね合わせ、被災地の外から文化遺産の被災状況を推定するものである。現段階で、我々はeコミマップをプラットフォームとして、文化遺産の種類によってアイコンを仕分けし、位置情報を登録した文化遺産防災マップを構築している。また、災害時の文化遺産に対する破壊・盗難を抑制するため、ID/パスワードで閲覧者を管理している。
2024年1月1日に発生した能登半島地震においては、国・県の指定文化財の位置情報と推定震度分布を重ね合わせ、建物被害が生じる震度5以上の領域に存在する文化財をリストアップする作業を実施し、1月9日時点で石川県・富山県・新潟県の被災3県について被災の可能性がある文化財を約1500件リストアップした。これはあくまで速報値であるが、今回の震災により多数の文化遺産が被災したことが予測され、データについては関係各所に情報を共有することで、被災文化遺産の救済への活用を期すことにした。
以上のように、文化遺産の被災情報が迅速に推定する一方で、実際に被災した文化遺産を迅速に救済するためには、文化遺産防災マップが関係者・関係機関の連携の中に位置づけなければ、その効果を発揮することができない。そのためには、文化遺産防災マップを活用した事前防災活動を実施する必要がある。2023年より、岩手県博物館が本研究の文化遺産防災マップを利用し、岩手県版文化遺産防災マップを制作するとともに、県内の文化財関係者が参加した災害時の被災文化遺産救済の図上訓練を実施した。この図上訓練では、文化財の位置情報に水害のハザードマップを重ね合わせ、それぞれの文化財に迫る災害リスクについて検討した。これは単に文化遺産の災害リスクを可視化するだけでなく、災害前に文化遺産の救済を目的とした広域的な連携体制を構築できるという意味をもつ。
文化遺産マップは、2011年の東日本大震災における経験をもとに作成を開始した。大規模災害時、甚大な被害をうけた被災地においては、交通網・情報網の遮断によって現地の情報が得られない場合が多い。ゆえに、事前に国や自治体が指定する文化財情報をはじめとした各種文化遺産の情報をオンラインマップ上に登録した文化遺産防災マップを構築し、災害時発生時には関係各所から発信される被災情報を重ね合わせ、被災地の外から文化遺産の被災状況を推定するものである。現段階で、我々はeコミマップをプラットフォームとして、文化遺産の種類によってアイコンを仕分けし、位置情報を登録した文化遺産防災マップを構築している。また、災害時の文化遺産に対する破壊・盗難を抑制するため、ID/パスワードで閲覧者を管理している。
2024年1月1日に発生した能登半島地震においては、国・県の指定文化財の位置情報と推定震度分布を重ね合わせ、建物被害が生じる震度5以上の領域に存在する文化財をリストアップする作業を実施し、1月9日時点で石川県・富山県・新潟県の被災3県について被災の可能性がある文化財を約1500件リストアップした。これはあくまで速報値であるが、今回の震災により多数の文化遺産が被災したことが予測され、データについては関係各所に情報を共有することで、被災文化遺産の救済への活用を期すことにした。
以上のように、文化遺産の被災情報が迅速に推定する一方で、実際に被災した文化遺産を迅速に救済するためには、文化遺産防災マップが関係者・関係機関の連携の中に位置づけなければ、その効果を発揮することができない。そのためには、文化遺産防災マップを活用した事前防災活動を実施する必要がある。2023年より、岩手県博物館が本研究の文化遺産防災マップを利用し、岩手県版文化遺産防災マップを制作するとともに、県内の文化財関係者が参加した災害時の被災文化遺産救済の図上訓練を実施した。この図上訓練では、文化財の位置情報に水害のハザードマップを重ね合わせ、それぞれの文化財に迫る災害リスクについて検討した。これは単に文化遺産の災害リスクを可視化するだけでなく、災害前に文化遺産の救済を目的とした広域的な連携体制を構築できるという意味をもつ。
