17:15 〜 18:45
[HDS10-P07] 防災気象情報の発令実態からみた課題の同定
〜利用者側の災害時行動の視点から〜
キーワード:防災気象情報、時空間粒度、防災リテラシー
近年,気象の予測精度が高まり,社会的期待に応じて防災気象情報の種類が増加しており,それに応じて,利用者側のニーズ(立場・環境)に応じた適切な選別が利用者側に求められる結果となっている.また,防災気象情報は専門用語によって発表されるものもあり,その情報の意味(気象の変化や発令理由)は,すべての人が理解しているとも限らない.そこで本発表では,以下の3点に着目し防災気象情報の現状と課題について報告する.
(1)情報の種類と時空間粒度
近年,防災気象情報の種類は増加し,空間粒度は都道府県スケールから1kmスケールまで,時間粒度は1週間スケールから5分毎に更新される情報まで,メッシュ化,高解像度化により時間,空間ともに粒度の細かい情報が発表されるようになってきている.竹之内ほか(2014)では,情報利用者は広域の自然現象を量的に把握しているのではなく,小学校区程度の範囲に生じる地域の現象を質的に捉えていると結論付けており,利用者のニーズに基づけば高解像度化は評価できそうであるが,一方で,関谷(2022)は高解像度化により発災までのリードタイムが短くなることを指摘している.そこで,複数の土砂災害発生事例について発災時までに発表された情報の種類やリードタイム,粒度の時系列変化について調査することで,情報の種類の増加や時空間粒度の高解像度化が利用者に与える功罪について考察する.
(2)認知度・理解度
防災気象情報の認知度・理解度に関するアンケート調査は専門家や自治体によってこれまでに複数行われており(牛山,2013;気象庁,2022;広島県,2018),“土砂災害警戒情報“について平成17年以降に全国各地で実施されたアンケートを分析すると認知度は年々上昇する傾向が見られるものの,理解度は10年前からさほど変化しておらず,現行の防災気象情報に内在する課題であるといえる.大雨警報,記録的短時間大雨情報など,その他の情報についてもこれと同じ分析を行い同様の傾向がみられるか調査する.
(3)確度・頻度
国土交通省(2021)によると2009年から2019年までに全国に発表した土砂災害警戒情報は的中率が4.7 %,捕捉率が96.4 %であり発表頻度を上げることで災害の見逃しを減らしているが、情報の確度は下がってしまう。一方で、避難行動を誘発する気象情報発令の頻度を、住民が避難行動を実施可能と考える許容範囲と照らし合わせると、気象情報発令の頻度が適切かを評価できると考えた。気象庁(2022)が行ったアンケートによると、住民側の認識として、台風や大雨時の避難行動は全体の約23%が1年に2回以上は避難行動が実施できる、約20%が1年に1回なら避難行動が実施できると回答していた。これらの結果と各情報の発表頻度や確度を比較することで、防災気象情報の発令実態が利用者のニーズを満足させられているかを調査し、新しい評価を実施する.
以上3点について分析および評価を実施し、防災気象情報の発令にかかる適正化にむけた課題と解決策の検討結果を報告する.
(1)情報の種類と時空間粒度
近年,防災気象情報の種類は増加し,空間粒度は都道府県スケールから1kmスケールまで,時間粒度は1週間スケールから5分毎に更新される情報まで,メッシュ化,高解像度化により時間,空間ともに粒度の細かい情報が発表されるようになってきている.竹之内ほか(2014)では,情報利用者は広域の自然現象を量的に把握しているのではなく,小学校区程度の範囲に生じる地域の現象を質的に捉えていると結論付けており,利用者のニーズに基づけば高解像度化は評価できそうであるが,一方で,関谷(2022)は高解像度化により発災までのリードタイムが短くなることを指摘している.そこで,複数の土砂災害発生事例について発災時までに発表された情報の種類やリードタイム,粒度の時系列変化について調査することで,情報の種類の増加や時空間粒度の高解像度化が利用者に与える功罪について考察する.
(2)認知度・理解度
防災気象情報の認知度・理解度に関するアンケート調査は専門家や自治体によってこれまでに複数行われており(牛山,2013;気象庁,2022;広島県,2018),“土砂災害警戒情報“について平成17年以降に全国各地で実施されたアンケートを分析すると認知度は年々上昇する傾向が見られるものの,理解度は10年前からさほど変化しておらず,現行の防災気象情報に内在する課題であるといえる.大雨警報,記録的短時間大雨情報など,その他の情報についてもこれと同じ分析を行い同様の傾向がみられるか調査する.
(3)確度・頻度
国土交通省(2021)によると2009年から2019年までに全国に発表した土砂災害警戒情報は的中率が4.7 %,捕捉率が96.4 %であり発表頻度を上げることで災害の見逃しを減らしているが、情報の確度は下がってしまう。一方で、避難行動を誘発する気象情報発令の頻度を、住民が避難行動を実施可能と考える許容範囲と照らし合わせると、気象情報発令の頻度が適切かを評価できると考えた。気象庁(2022)が行ったアンケートによると、住民側の認識として、台風や大雨時の避難行動は全体の約23%が1年に2回以上は避難行動が実施できる、約20%が1年に1回なら避難行動が実施できると回答していた。これらの結果と各情報の発表頻度や確度を比較することで、防災気象情報の発令実態が利用者のニーズを満足させられているかを調査し、新しい評価を実施する.
以上3点について分析および評価を実施し、防災気象情報の発令にかかる適正化にむけた課題と解決策の検討結果を報告する.
