日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS10] 防災リテラシー

2024年5月27日(月) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:高橋 誠(名古屋大学大学院環境学研究科)、木村 玲欧(兵庫県立大学)


17:15 〜 18:45

[HDS10-P12] 火災対応マニュアルの分析による火災対応能力の導出と、市民の火災対応能力向上のための防災教育プログラムの開発

*木村 玲欧1、山野 智也2 (1.兵庫県立大学、2.神戸市消防局)

キーワード:防災訓練プログラム、インストラクショナル・デザイン、アディーモデル、率先避難者、ゲーミフィケーション

火災は、毎年のように多数の人的被害が発生する非常に身近で重大なリスクである。総務省消防庁の統計によると、2022年に日本で発生した総出火件数は36,314件であった。しかし各自治体消防が発行している火災対応マニュアルには、記述内容の違いや分量の多寡、マニュアルの形式などの違いがある。そこで本研究では、各自治体消防の火災対応マニュアルを収集・分類して、火災対応に必要な能力を同定した上で、それらの能力を身につけ、火災における率先避難者になるための「火災対応能力向上教育プログラム」を開発した。
 本研究では、ID(インストラクショナル・デザイン)理論のADDIEプロセス(分析・設計・開発・実施・評価の順番で開発を行う考え方)に基づいて、教育プログラム開発・検証を行った。既存のマニュアルから抽出した54個の火災対応能力に、火災避難時に重要な要素となるバイアスに関する4個の能力を追加し、計58個の能力を抽出した。これらをクラスター分析(Ward法・ユークリッド平方距離)にかけたところ、7つのクラスターが抽出された。1つめが、火災の性質と火災に関する人間の性質を知る、2つめが、率先避難者としての共助の方法や避難後の応急手当ができる、3つめが道具を用いた避難・誘導ができる、4つめが、火災警報器を理解し初期消火ができる、5つめが、避難時に正しい姿勢をとることができる、6つめが、過去の事例をもとに火災の恐ろしさを理解できる、7つめが、火災予防ができるである。
 これらの7つのクラスターから、13個の学習目標をたてて、「火災対応能力を身につけよう」という教育プログラムを開発した。大学生を対象とした、90分の指導案と、オリジナルの教材を作成した。教材には、ゲーミング手法を取り入れて、火災避難時の行動を判断する「火災避難ゲーム」、火災予防を学ぶ「出火原因推理ゲーム」を作成した。大学生46人を対象に、作成した学習指導案をもとに教育プログラムを実施した。プログラムを評価するために、実施前と実施後に、「13の学習目標」の各項目について「できる」~「できない」の5段階で自己評価をしてもらった。分析を行ったところ、学習目標で設定された全ての能力において1%水準で統計的な有意差あった。よって本プログラムは学習目標を達成できる効果的なプログラムだと結論づけた。