日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GG 地理学

[H-GG02] 自然資源・環境に関する地球科学と社会科学の対話

2024年5月26日(日) 10:45 〜 12:15 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:上田 元(一橋大学・大学院社会学研究科)、大月 義徳(東北大学大学院理学研究科地学専攻環境地理学講座)、古市 剛久(森林総合研究所)、佐々木 達(法政大学)、座長:大月 義徳(東北大学大学院理学研究科地学専攻環境地理学講座)、古市 剛久(森林総合研究所)、上田 元(一橋大学・大学院社会学研究科)


10:45 〜 11:00

[HGG02-06] サンゴ礁衰退の原因となる赤土流出の陸域環境要因とその地域的差異
-石垣島・西表島を対象として-

*山本 あゆ夏1齋藤 仁1 (1.国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学)

キーワード:赤土流出、サンゴ礁、環境問題、流域

近年,サンゴ礁の急速な衰退が問題となっている.沖縄県周辺海域は豊かなサンゴ礁が広がる地域の代表的な場所である.しかし,近年赤土の流出によるサンゴ礁への被害が問題視されている.沖縄県では地形・土壌・多雨などの赤土等が流出しやすい自然的条件に,農地・土地開発等の人間活動が加わり赤土汚濁が発生している.赤土流出に関する研究がこれまでに行われてきたが,流出要因とその地域的・季節的差異まで統合的に言及するには至っていない.そこで本研究では,赤土流出を促す地と土地利用等の陸域環境要因を流域単位で分析し,河口でのSPSS値(海域底質中懸濁物質含有量)との関係を統計的に分析することで,SPSS値に地域的差異が見られる要因を明らかにする.対象地域は,沖縄県石垣島と西表島である.研究手法として,QGISを用いた流域分割と地形解析,SPSSと陸域環境要因との相関分析,および機械学習の一つであるrandom forestを用いて陸域環境要因の重要度を検討した.結果,重要な陸域環境要因には地域的差異と,季節変化が見られることが明らかになった.特に石垣島のような人工的な土地利用が多い地域では,SPSS値はその土地利用形態と強く関連する傾向にあった.また,田,牧場・牧草地,野草地等の従来はあまり指摘されてこなかった土地利用形態からの赤土流出の可能性が示唆された.今後は,より詳細に陸域環境要因とその地域的・季節的差異を分析することが課題である.陸域環境要因とサンゴの生息状況との対応を時空間的に検討することにより,サンゴ礁生態系の保全に貢献できると考える.