11:00 〜 11:15
[HGG02-07] 大雪山国立公園における登山道荒廃に関する長期モニタリングと今後の登山道管理
キーワード:国立公園、登山道荒廃、登山道維持管理、長期モニタリング、3次元化
登山道は,登山者が山頂や山小屋に移動するための必要不可欠なインフラであるのと同時に,利用による圧力から自然環境を保護するための役割を有する.しかし,登山道の立地や設計に関して,歩きやすさといった利便性が重視され,必ずしも自然環境の脆弱性に配慮した設計や配置にはなっていない.その結果,海外を含め多くの国立公園や自然保護区において登山道侵食といった荒廃や劣化が問題化している.しかし,日本における国立公園の維持管理に必要な人員や予算は必ずしも十分とはいえず,荒廃した登山道が適切に管理されず放置された結果,近年多発する大雨によってさらに荒廃が進行する悪循環に陥っている.
こうした状況を踏まえ,北海道中心部に位置する大雪山国立公園では,登山者ボランティアを巻き込んだ登山道の補修作業が2017年より行われるようになった.しかし,大雪山国立公園内の登山道は,長期的なモニタリングがほとんど行われていないため,補修作業の対象となる登山道に関する優先順位付けとその科学的根拠は,決して十分とは言えない.
そこで本研究では,登山道荒廃の変化と傾向を明らかにするために,2014年から2022年にかけてUAVやポールフォトといった3次元的な計測手法を用いた長期的なモニタリングを行った.標高2060メートル前後に位置する北海平とよばれる溶岩流と火砕流堆積物よって形成された平坦地を通過する登山道を10区間に分けて調査を行った.
2014年の最初の調査では,南東向き斜面に位置する粘土質土壌が発達した調査区間において,すでに200 m3を超える規模の大きな侵食が見られた.一方で,長期モニタリングを行った2014年から2022年の8年間の変化では,北西向き斜面に位置する火砕流堆積物に覆われた調査区間において10 m3を超える侵食が見られ,いずれも南東向き斜面に位置する調査区間よりも大きな侵食量を示した.このことは,2016年,2018年,2022年に発生した1日降水量が80 mmを超えるような大雨イベントに対して,それぞれの調査区間で反応が一様ではないことを示している.以上のことから,補修作業を行う登山道を決定するには,侵食速度の変化の見極めが重要であることがわかった.
脆弱な環境を有する大雪山国立公園では,補修作業は慎重に行われる必要があり,長期的なモニタリングは欠かせない.しかし,専門職員の人数や予算の不足から300 kmに及ぶ全区間の登山道を網羅することは現実的ではない.そこで,登山道の維持管理の意思決定に欠かせない基礎的なデータ取得に関して,補修作業同様に登山者ボランティアの参画が大きな役割を果たす可能性がある.本研究ではUAVやポールフォトを用いたが,Apple社のiPhoneにはLidarが搭載されており同様の3次元データの取得が比較的簡易に行うことができる.データ集積プラットフォーム及びフィードバック体制の構築により,自然環境の保全への貢献という価値の提供を行うことができる.国立公園の価値を高め,持続可能な登山道の利用には,3次元データによる長期モニタリングと登山者ボランティアの協力が必要不可欠である.
こうした状況を踏まえ,北海道中心部に位置する大雪山国立公園では,登山者ボランティアを巻き込んだ登山道の補修作業が2017年より行われるようになった.しかし,大雪山国立公園内の登山道は,長期的なモニタリングがほとんど行われていないため,補修作業の対象となる登山道に関する優先順位付けとその科学的根拠は,決して十分とは言えない.
そこで本研究では,登山道荒廃の変化と傾向を明らかにするために,2014年から2022年にかけてUAVやポールフォトといった3次元的な計測手法を用いた長期的なモニタリングを行った.標高2060メートル前後に位置する北海平とよばれる溶岩流と火砕流堆積物よって形成された平坦地を通過する登山道を10区間に分けて調査を行った.
2014年の最初の調査では,南東向き斜面に位置する粘土質土壌が発達した調査区間において,すでに200 m3を超える規模の大きな侵食が見られた.一方で,長期モニタリングを行った2014年から2022年の8年間の変化では,北西向き斜面に位置する火砕流堆積物に覆われた調査区間において10 m3を超える侵食が見られ,いずれも南東向き斜面に位置する調査区間よりも大きな侵食量を示した.このことは,2016年,2018年,2022年に発生した1日降水量が80 mmを超えるような大雨イベントに対して,それぞれの調査区間で反応が一様ではないことを示している.以上のことから,補修作業を行う登山道を決定するには,侵食速度の変化の見極めが重要であることがわかった.
脆弱な環境を有する大雪山国立公園では,補修作業は慎重に行われる必要があり,長期的なモニタリングは欠かせない.しかし,専門職員の人数や予算の不足から300 kmに及ぶ全区間の登山道を網羅することは現実的ではない.そこで,登山道の維持管理の意思決定に欠かせない基礎的なデータ取得に関して,補修作業同様に登山者ボランティアの参画が大きな役割を果たす可能性がある.本研究ではUAVやポールフォトを用いたが,Apple社のiPhoneにはLidarが搭載されており同様の3次元データの取得が比較的簡易に行うことができる.データ集積プラットフォーム及びフィードバック体制の構築により,自然環境の保全への貢献という価値の提供を行うことができる.国立公園の価値を高め,持続可能な登山道の利用には,3次元データによる長期モニタリングと登山者ボランティアの協力が必要不可欠である.
