[H-GM03] 地形

[HGM03-06] 下方侵食を制限する模擬岩盤層を導入した岩盤流路の室内モデル実験：下方侵食と側方侵食の関係性

*井川 翔斗¹、遠藤 徳孝¹ (1.金沢大学大学院自然科学研究科)

キーワード：山地河川、岩盤流路、下方侵食、側方侵食、室内モデル実験

山地河川は河床の大部分で岩盤が露出している状態であることが普通であり，部分的，且つ，一時的に沖積層が発達することはあるが流路自体は基盤岩で構成されている．そして，長期タイムスケールにおいて山地河川は，山地の景観に大きく寄与している．山地河川の発達過程では，鉛直下方向への侵食である下刻（下方侵食）と，水平方向に侵食し谷幅の拡大や流路の蛇行をもたらす側刻（側方侵食）が働く．山地河川の流域スケールの室内モデル実験を行った先行研究では，時間当たりの流域全体の隆起量が削剥速度より大きい下刻優位な状態から両者が釣り合い動的な平衡状態へと移行した後で側刻優位となることが，流路の側方移動の活発化から示唆された．我々の以前の研究では，流路スケールの室内モデル実験として，流路基盤から一定の深さに下刻不可能な層として木製の板を埋め込み，基盤表面の半円筒状の初期流路に上流端から給水した．この実験中，板が露出した場所で下刻が制限され，その後側刻が活発化する傾向が認められた．つまり，下刻量の減少に伴って側刻量が増加することが示唆された．しかし，ここでは板によって侵食量を完全にゼロとして制限しており，実際の自然河川の制限様式と乖離している可能性がある．そこで本研究のモデル実験では，板の代わりに流路基盤よりも硬く侵食されにくいが決して侵食不可能ではない模擬岩盤層を導入した．その結果，硬い岩盤層が露出し下刻がある程度制限される（極端に下刻速度が遅くなる）場合にも側刻が活発化する傾向がみられた．従って，先行研究と本研究の両方において下刻の減少に伴う側刻の増大が示されたため，少なくともある一定条件下では，これら２方向の侵食速度には負の相関関係が示唆された．