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[HGM03-P14] 地震時地盤災害等に対応する地形・地質ゾーニングマップ作成のためのGIS分析
キーワード:DEM、斜面崩壊、地震時斜面崩壊、地質図、地盤
地震時の主要な地盤災害として地すべりを含む広義の斜面崩壊があるが、直接的な人的被害の他、道路などインフラに与える影響が大きく、脆弱な地域を事前に把握しておくことは事前の防災減災への喫緊の課題となっている。一方で、地震発生時に斜面崩壊の発生可能性を推計することは、直後の災害対応などに貢献するための重要な技術である。地震発生時の斜面崩壊推定アルゴリズムとして、日本では、平成7年(1995年)兵庫県南部地震の六甲山地での被害を元に設計された判別式である六甲式(内田ほか,2004)や修正六甲式(神谷ほか,2012)、さらに近年、平成28年(2016年)熊本地震における阿蘇地区のケースから、傾斜をベースに崩壊面積率を推計する式も発表されている(Sakai et al., 2022)。これらの式は、花崗岩山地や火山地など、ある特定の岩相の地域を題材に構築されており、より多様な全国の斜面に対応するためにはゾーニングマップによる補正または係数の調整が必要であり、全国をカバーするゾーニングマップの作成が求められる。
本研究では、基盤地図情報数値標高モデル(国土地理院)、20万分の1シームレス地質図(産業技術総合研究所)等、全国をカバーする地理空間情報を収集し、地形・地質ゾーニングマップの作成を目的としてGIS分析を行った。まず基盤地図情報数値標高モデルを素材として作成した30mDEMから、単位斜面の区分けを行った全国のポリゴンデータを作成した。さらに傾斜・最寄り落水線からの比高(HAND)・尾根谷密度(TEXTURE)を中心に、凸部の分布密度(CONVEXITY)や水面高に近い領域を補足的に用いて地形の形態的分類を行った。類似のDEM地形分類図は、森林土壌デジタルマップ(森林総合研究所)の表層土壌に関する土壌特性値の推計にパラメータの1つとして利用実績がある他、既存の地形分類図が無い地域でも標高データのみで手軽に作成できることから、各国で地震による揺れやすさのプロキシや、斜面崩壊の発生可能性、土壌の推計等に使われている。また斜面崩壊の発生斜面には形態的に似通った特徴が見られ、特に表層崩壊は、丘陵性山地などDEM地形分類図の特定の凡例に集中する傾向がある事が明らかとなっている(Iwahashi et al., 2021)。しかし、火山地など表土・地質構造が脆弱な領域では、他地域では表層崩壊が少ない地形でも崩壊が多発するケースが見られた。また、長大な上部斜面ほど大型の斜面崩壊の割合が増える傾向があるが、強い揺れを観測した地震では、長大ではない凹凸の多い斜面でも大規模に崩壊する傾向が見られ、さらにそれは地質にも影響されている事がわかった。地震時地盤災害等に対応する地形・地質ゾーニングマップに仕立てるためには、地形の形態的分類のみでは不十分であり、岩相分類的な地質情報や、表土の情報を単位斜面のポリゴンに属性として加え、何らかの形でグループ分けに溶かし込む必要がある。
引用文献
Iwahashi J, Yamazaki D, Nakano T, Endo R (2021): Classification of topography for ground vulnerability assessment of alluvial plains and mountains of Japan using 30 m DEM. Progress in Earth and Planetary Science, 8:3. DOI: 10.1186/s40645-020-00398-0
神谷泉,乙井康成,中埜貴元,小荒井衛(2012):地震による斜面崩壊危険度評価判別式「六甲式」の改良と実時間運用,写真測量とリモートセンシング,51(6),381-386.
Sakai, Y., Uchida, T., Hirata, I., Tanehira, K., Fujiwara, Y.(2022):Interrelated impacts of seismic ground motion and topography on coseismic landslide occurrence using high‑resolution displacement SAR data, Landslides, doi: 10.1007/s10346-022-01909-4.
内田太郎,片岡正次郎,岩男忠明,松尾修,寺田秀樹,中野泰雄,杉浦信男,小山内信智(2004):地震による斜面崩壊危険度評価手法に関する研究,国土技術政策総合研究所資料,第204号,91p.
本研究では、基盤地図情報数値標高モデル(国土地理院)、20万分の1シームレス地質図(産業技術総合研究所)等、全国をカバーする地理空間情報を収集し、地形・地質ゾーニングマップの作成を目的としてGIS分析を行った。まず基盤地図情報数値標高モデルを素材として作成した30mDEMから、単位斜面の区分けを行った全国のポリゴンデータを作成した。さらに傾斜・最寄り落水線からの比高(HAND)・尾根谷密度(TEXTURE)を中心に、凸部の分布密度(CONVEXITY)や水面高に近い領域を補足的に用いて地形の形態的分類を行った。類似のDEM地形分類図は、森林土壌デジタルマップ(森林総合研究所)の表層土壌に関する土壌特性値の推計にパラメータの1つとして利用実績がある他、既存の地形分類図が無い地域でも標高データのみで手軽に作成できることから、各国で地震による揺れやすさのプロキシや、斜面崩壊の発生可能性、土壌の推計等に使われている。また斜面崩壊の発生斜面には形態的に似通った特徴が見られ、特に表層崩壊は、丘陵性山地などDEM地形分類図の特定の凡例に集中する傾向がある事が明らかとなっている(Iwahashi et al., 2021)。しかし、火山地など表土・地質構造が脆弱な領域では、他地域では表層崩壊が少ない地形でも崩壊が多発するケースが見られた。また、長大な上部斜面ほど大型の斜面崩壊の割合が増える傾向があるが、強い揺れを観測した地震では、長大ではない凹凸の多い斜面でも大規模に崩壊する傾向が見られ、さらにそれは地質にも影響されている事がわかった。地震時地盤災害等に対応する地形・地質ゾーニングマップに仕立てるためには、地形の形態的分類のみでは不十分であり、岩相分類的な地質情報や、表土の情報を単位斜面のポリゴンに属性として加え、何らかの形でグループ分けに溶かし込む必要がある。
引用文献
Iwahashi J, Yamazaki D, Nakano T, Endo R (2021): Classification of topography for ground vulnerability assessment of alluvial plains and mountains of Japan using 30 m DEM. Progress in Earth and Planetary Science, 8:3. DOI: 10.1186/s40645-020-00398-0
神谷泉,乙井康成,中埜貴元,小荒井衛(2012):地震による斜面崩壊危険度評価判別式「六甲式」の改良と実時間運用,写真測量とリモートセンシング,51(6),381-386.
Sakai, Y., Uchida, T., Hirata, I., Tanehira, K., Fujiwara, Y.(2022):Interrelated impacts of seismic ground motion and topography on coseismic landslide occurrence using high‑resolution displacement SAR data, Landslides, doi: 10.1007/s10346-022-01909-4.
内田太郎,片岡正次郎,岩男忠明,松尾修,寺田秀樹,中野泰雄,杉浦信男,小山内信智(2004):地震による斜面崩壊危険度評価手法に関する研究,国土技術政策総合研究所資料,第204号,91p.
