11:00 〜 11:15
[HQR05-08] 関東平野北部,思川・渡良瀬川流域におけるMIS6以降の地形発達過程と海成層・河成層の高度に基づいた地殻変動速度評価

キーワード:海水準変動、地殻変動、第四紀、関東平野
1.はじめに
数万~数十万年間の長期的な地殻変動は,地形・地質学的な手法によって推定される.具体的には,海成段丘・海成層の現在の高度とそれらが形成・堆積した当時の相対的海水準の比高から求める方法,類似した気候・海水準条件(例えば,MIS2と6)で形成された段丘や埋没谷の比高から求める方法がある.前者の手法では,海水準が概ね定まるため,ほぼ正確な地殻変動量が求められるが,後者の手法の河床高度は,海水準変動のほか降水量や砕屑物供給量などによっても変化するため,地殻変動量と同値ではないと考えられる.しかし,内陸部の地殻変動量の推定手法は他にほとんどなく,正確さの検討はあまり行われてこなかった.そこで本研究では,海成層と河成層が交互に堆積し,両手法の比較が可能な思川・渡良瀬川流域にて,この点を検討する.
2.手法
段丘区分,ボーリングコアの堆積相解析,埋没谷のマッピングを行った.
段丘面の区分は,国土地理院の5mDEMを使用し,比高に基づいて行った.
3本のオールコア:上流側(北)から順に GC-OY-2,GC-OY-1,GC-NG-1コアを対象に,層相の観察,粒度分析,元素分析,帯磁率測定,礫種判別を行った.
埋没谷のマッピングは,ボーリングデータベース(Geo-station)を使用し,オールコアの解析結果を参考に,MIS2とMIS6に形成された埋没谷の基底礫層を抽出した.
3.結果
3.1段丘区分
段丘面は下総下位面と宝木面の2面に区分した.周辺地域の段丘面との連続性から,下総下位面はMIS5.3,宝木面はMIS4に形成された[1]と考えられる.コア掘削地点は,いずれも宝木面に位置する.
3.2堆積相解析
詳細は宮本ほか(2020)[2]で報告したため省くが,全てのコアでMIS6の河成層,MIS5.5の海成層,MIS4にかけての河成層が分布した.新たに行った礫種判別の結果は,MIS6の砂礫層は堆積岩・流紋岩礫を主体(95~97%)とし,MIS4の砂礫層(宝木面構成層)は玄武・安山岩礫も多く(28~30%)含まれた.
3.3埋没谷のマッピング
ほぼ全域でMIS2とMIS6の埋没谷の基底礫層が分布した.ただし,思川のMIS2の礫層は,小山市より上流では現河床堆積物と高度差がなく,沖積面に連続した.
4.考察
4.1海成層から求めた地殻変動速度
MIS5.5の海成層の上面高度は,OY-2コアで6.28 m,OY-1コアで4.58 m,NG-1コアで-3.03 mだった.当時の海水準を現在より5~9 m高かった[3]とすると,12.5万年前以降の平均隆起速度は順に,-0.04~-0.01,-0.03~0.00,-0.10~-0.07 m/kyrと求まる.
4.2 MIS6以降の河床高度変化と河成層から求めた地殻変動速度
MIS6には,思川・渡良瀬川いずれでも河床高度が低下していた.その後,思川では海成層を挟みつつMIS4にかけて河床上昇した.渡良瀬川には宝木面に対比される段丘は分布せず,同時期の河床上昇は顕著でなかったと考えられる.この違いは,思川では,MIS4に思川に流入していた大谷川を通じ,多量の玄武・安山岩質の砕屑物が日光火山群から供給されたために生じたと考えられる.その後,大谷川は流入しなくなり,思川・渡良瀬川ともMIS2にかけて河床低下し,後氷期には上昇した.MIS2と6の礫層上面の比高は,思川で20 m程度,渡良瀬川で12 m程度で,MIS6~2の約12万年間の平均隆起速度は,-0.16 m/kyr,-0.10 m/kyrとそれぞれ求まる.
4.3両手法の相違と要因
両手法で求めた地殻変動速度は,思川流域では一致しなかった.その要因として,思川ではMIS2の河床低下が不十分だった可能性が指摘できる.思川では,MIS4にかけて河床上昇したために下刻に時間を要した可能性, MIS2にはMIS6と異なり大谷川が流入しなかったために流量が減少し下刻速度が遅くなった可能性が考えられる.また,海水準が大きく低下した期間がMIS2は6よりも短く[4],相対的に海面低下規模が小さかったことも要因として考えられる.
謝辞:本報告には,経済産業省資源エネルギー庁委託事業「平成30~31年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(地質環境長期安定性評価技術高度化開発)(JPJ007597)」の成果の一部を用いた.
文献:[1]貝塚ほか編, 日本の地形4 関東・伊豆小笠原, 東京大学出版会, 2000.[2]宮本ほか,JpGU-AGU Joint Meeting, 2020.[3]Dutton et al.,Science,337,2012.[4]Waelbroek et al.,Quaternary Science Reviews,21,2002.
数万~数十万年間の長期的な地殻変動は,地形・地質学的な手法によって推定される.具体的には,海成段丘・海成層の現在の高度とそれらが形成・堆積した当時の相対的海水準の比高から求める方法,類似した気候・海水準条件(例えば,MIS2と6)で形成された段丘や埋没谷の比高から求める方法がある.前者の手法では,海水準が概ね定まるため,ほぼ正確な地殻変動量が求められるが,後者の手法の河床高度は,海水準変動のほか降水量や砕屑物供給量などによっても変化するため,地殻変動量と同値ではないと考えられる.しかし,内陸部の地殻変動量の推定手法は他にほとんどなく,正確さの検討はあまり行われてこなかった.そこで本研究では,海成層と河成層が交互に堆積し,両手法の比較が可能な思川・渡良瀬川流域にて,この点を検討する.
2.手法
段丘区分,ボーリングコアの堆積相解析,埋没谷のマッピングを行った.
段丘面の区分は,国土地理院の5mDEMを使用し,比高に基づいて行った.
3本のオールコア:上流側(北)から順に GC-OY-2,GC-OY-1,GC-NG-1コアを対象に,層相の観察,粒度分析,元素分析,帯磁率測定,礫種判別を行った.
埋没谷のマッピングは,ボーリングデータベース(Geo-station)を使用し,オールコアの解析結果を参考に,MIS2とMIS6に形成された埋没谷の基底礫層を抽出した.
3.結果
3.1段丘区分
段丘面は下総下位面と宝木面の2面に区分した.周辺地域の段丘面との連続性から,下総下位面はMIS5.3,宝木面はMIS4に形成された[1]と考えられる.コア掘削地点は,いずれも宝木面に位置する.
3.2堆積相解析
詳細は宮本ほか(2020)[2]で報告したため省くが,全てのコアでMIS6の河成層,MIS5.5の海成層,MIS4にかけての河成層が分布した.新たに行った礫種判別の結果は,MIS6の砂礫層は堆積岩・流紋岩礫を主体(95~97%)とし,MIS4の砂礫層(宝木面構成層)は玄武・安山岩礫も多く(28~30%)含まれた.
3.3埋没谷のマッピング
ほぼ全域でMIS2とMIS6の埋没谷の基底礫層が分布した.ただし,思川のMIS2の礫層は,小山市より上流では現河床堆積物と高度差がなく,沖積面に連続した.
4.考察
4.1海成層から求めた地殻変動速度
MIS5.5の海成層の上面高度は,OY-2コアで6.28 m,OY-1コアで4.58 m,NG-1コアで-3.03 mだった.当時の海水準を現在より5~9 m高かった[3]とすると,12.5万年前以降の平均隆起速度は順に,-0.04~-0.01,-0.03~0.00,-0.10~-0.07 m/kyrと求まる.
4.2 MIS6以降の河床高度変化と河成層から求めた地殻変動速度
MIS6には,思川・渡良瀬川いずれでも河床高度が低下していた.その後,思川では海成層を挟みつつMIS4にかけて河床上昇した.渡良瀬川には宝木面に対比される段丘は分布せず,同時期の河床上昇は顕著でなかったと考えられる.この違いは,思川では,MIS4に思川に流入していた大谷川を通じ,多量の玄武・安山岩質の砕屑物が日光火山群から供給されたために生じたと考えられる.その後,大谷川は流入しなくなり,思川・渡良瀬川ともMIS2にかけて河床低下し,後氷期には上昇した.MIS2と6の礫層上面の比高は,思川で20 m程度,渡良瀬川で12 m程度で,MIS6~2の約12万年間の平均隆起速度は,-0.16 m/kyr,-0.10 m/kyrとそれぞれ求まる.
4.3両手法の相違と要因
両手法で求めた地殻変動速度は,思川流域では一致しなかった.その要因として,思川ではMIS2の河床低下が不十分だった可能性が指摘できる.思川では,MIS4にかけて河床上昇したために下刻に時間を要した可能性, MIS2にはMIS6と異なり大谷川が流入しなかったために流量が減少し下刻速度が遅くなった可能性が考えられる.また,海水準が大きく低下した期間がMIS2は6よりも短く[4],相対的に海面低下規模が小さかったことも要因として考えられる.
謝辞:本報告には,経済産業省資源エネルギー庁委託事業「平成30~31年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(地質環境長期安定性評価技術高度化開発)(JPJ007597)」の成果の一部を用いた.
文献:[1]貝塚ほか編, 日本の地形4 関東・伊豆小笠原, 東京大学出版会, 2000.[2]宮本ほか,JpGU-AGU Joint Meeting, 2020.[3]Dutton et al.,Science,337,2012.[4]Waelbroek et al.,Quaternary Science Reviews,21,2002.