17:15 〜 18:45
[HQR05-P08] トトロの森はいつできたのか?
-狭山丘陵三ヶ島湿地における古環境調査-
キーワード:狭山丘陵、トトロの森、里山、花粉分析、CNS分析、古環境
関東山地から孤立した丘陵である狭山丘陵は、東京都と埼玉県にまたがる総面積3500 haの都市近郊の豊かな自然が残存する場所である。丘陵の中央部は多摩湖や狭山湖とよばれるダム湖が存在している。周囲は開析が進んだ谷が発達しており、谷頭部において湧水湿地が形成されていることが特徴である。1988年に公開されたアニメーション映画「となりのトトロ」のモデルとなったのが狭山丘陵北麓である。映画「となりのトトロ」では豊かな自然が描かれており、なかでもトトロが棲むコナラの大木が印象的で、狭山丘陵は大部分がコナラを中心とした雑木林で形成されている。映画公開以降、狭山丘陵は「トトロの森」としてコナラ二次林の保全運動が行われてきた。
これまで狭山丘陵の湿地形成や「トトロの森」に関する植生変遷においての先行研究はなく、同丘陵において里山景観がいつからどのように形成されたかは不明である。そこで、今回は狭山丘陵北麓に位置する三ケ島湿地にて、上流から下流に欠けて湿地堆積物を採取して、その堆積物試料の放射性炭素年代測定とともに、花粉分析やCNS元素分析を通じて、湿地の形成時期や「トトロの森」と称される二次林の発達史を明らかにすることを目的とした。
コアリング調査は湿地内の上流から下流にかけての4地点においてロシア式サンプラーを用いて基盤まで達する泥炭質堆積物の採取を行った。採取した堆積物は層相観察を行ったのち、各種分析用にそれぞれコア分割した。放射性年代測定は良好な植物片が残っていた21試料について、酸-アルカリ-酸処理をおこなった上で、名古屋大学宇宙地球環境研究所所有の加速器質量分析計を用いて放射性炭素年代測定を実施した。求めた年代値はIntCal20データセットを用いて暦年較正した。
その結果は以下にまとめられる。
・三ヶ島湿地は約1,700年前に形成した。また、現在まで湿地環境が維持されていた。
・約500 cal ADよりコナラを主体とするコナラ二次林「トトロの森」が成立したと考えられた。また、約850 cal AD頃から湿地を人為的に調整することで稲作をはじめたことが示唆された。
・約1800 cal ADよりコナラ二次林、アカマツ二次林の管理の放棄が始まり、照葉樹林へ森林が回復したとともに、湿地周辺ではスギの植林が開始された。
これまで狭山丘陵の湿地形成や「トトロの森」に関する植生変遷においての先行研究はなく、同丘陵において里山景観がいつからどのように形成されたかは不明である。そこで、今回は狭山丘陵北麓に位置する三ケ島湿地にて、上流から下流に欠けて湿地堆積物を採取して、その堆積物試料の放射性炭素年代測定とともに、花粉分析やCNS元素分析を通じて、湿地の形成時期や「トトロの森」と称される二次林の発達史を明らかにすることを目的とした。
コアリング調査は湿地内の上流から下流にかけての4地点においてロシア式サンプラーを用いて基盤まで達する泥炭質堆積物の採取を行った。採取した堆積物は層相観察を行ったのち、各種分析用にそれぞれコア分割した。放射性年代測定は良好な植物片が残っていた21試料について、酸-アルカリ-酸処理をおこなった上で、名古屋大学宇宙地球環境研究所所有の加速器質量分析計を用いて放射性炭素年代測定を実施した。求めた年代値はIntCal20データセットを用いて暦年較正した。
その結果は以下にまとめられる。
・三ヶ島湿地は約1,700年前に形成した。また、現在まで湿地環境が維持されていた。
・約500 cal ADよりコナラを主体とするコナラ二次林「トトロの森」が成立したと考えられた。また、約850 cal AD頃から湿地を人為的に調整することで稲作をはじめたことが示唆された。
・約1800 cal ADよりコナラ二次林、アカマツ二次林の管理の放棄が始まり、照葉樹林へ森林が回復したとともに、湿地周辺ではスギの植林が開始された。