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[HQR06-P05] 残存ルミネッセンスによる土砂移動プロセスの理解
キーワード:ルミネッセンス、堆積物運搬、河川、海岸
河川や海岸の表層を移動する堆積物粒子に残存するルミネッセンス強度は,土砂移動の定性的なトレーサーとして有効であることが知られている.堆積物粒子は地層から侵食され地表を移動する過程で太陽光を浴び,河川なら上流から下流へ,海岸なら河口などから下手方向に運搬されながらブリーチし,ルミネッセンス強度が小さくなっていく.こうした移動経路において堆積物粒子を採取して,ブリーチされずに残存するルミネッセンス強度(残存線量)の空間的傾向を求めると,土砂移動の方向を復元することができる.近年ではさらに,河川を対象に,残存ルミネッセンスから土砂移動速度を定量するための研究が進展している.このためのモデルは主に2つ提案されている.1つは,上流から下流までのルミネッセンス強度の空間変化率を,河川流路と氾濫原との間の土砂の交換率(土砂交換項)と,流路内で堆積物粒子がブリーチされる効率(ブリーチ項)との和で表し,実測のルミネッセンスの傾向に最もフィットするブリーチ項に含まれる土砂移動速度と交換率とを求める.もう1つは,単粒子ごとに平均移動距離(D),移動間休止期間(R),ブリーチ確率(P)について様々な数値を仮定し,上流から下流に運搬される単粒子のブリーチ履歴をシミュレートして,単粒子のルミネッセンス実測値に最もフィットする数値の組み合わせから運搬速度(D/R)を求める.現状,これらのモデルで共通する問題は,ブリーチのプロセスに関する基礎的な理解が不足していることである.2つ目のモデルでは単粒子ごとの履歴を考慮する一方で,ブリーチのプロセスはブリーチ確率(P)に圧縮している.また,1つ目のモデルではブリーチ効率を考慮するものの,簡易的なブリーチ実験と理論に依拠するのみである.一方海岸漂砂では,海岸から砕波帯までの地形変化プロセスを考慮しながら,河川の1つ目のモデルで土砂交換項を除いたのと同等のモデルが検討されているが,こちらもブリーチプロセスの理解が不十分である.実際の観測や水路実験も駆使しながらブリーチプロセスの基礎的理解を得ることが,残存ルミネッセンス強度を信頼できる土砂移動速度の定量的指標として用いるための鍵である.