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[HRE12-P02] 地殻内流体の移動におけるマイクロクラックの重要性:放射性廃棄物の地層処分、地熱開発、二酸化炭素の地中貯留事業との関連
近年の応用地質学の新展開で、放射性廃棄物の地層処分、地熱開発、二酸化炭素の地中貯留(Carbon dioxide Capture and Storage, CCS)等の基礎研究は注目される。これらの研究の中で、対象となる一つの重要な地中過程は、地殻流体(水あるいは二酸化炭素)の移動である。ここで、地殻流体は地殻中に存在する液体およびガスの両方を意味する。例えば、放射性廃棄物の地層処分で言うと、人工バリア(ガラス固化体+オーバーパック+緩衝材)よりもし何らかの原因で放射性核種が漏れ出た場合、それらは天然バリアとされる岩石中に存在する水に溶けて移動する。花崗岩のような結晶質岩石を天然バリアとして用いる場合、放射性核種は結晶粒境界や微小割れ目に含まれている水中を移動する。ここで、水のチャネルが繋がって水が動水勾配に駆動されて移動する場合のみ放射性核種は比較的速く移動し、拡散による移動は無視できるほど遅い。例えば、放射性廃棄物の地層処分の際に発生する掘削損傷領域(EDZ, excavation damaged zone)において、EDZの透水係数は周囲の岩盤より著しく高いため放射性核種はEDZに浸透する水の中を移動するが、その移流速度は拡散による場合に比べて2桁速い(Bianchi et al., 2015)。一般に地中でこのように高い透水係数を示し、地下水が速い速度で移動するため放射性廃棄物の地層処分の際に問題となる天然バリア中の構造は、断層のダメージ帯(例えばMitchell and Faulkner, 2009)である。ここでは、主断層に沿ってほぼ平行に高い密度で発達する小断層、割れ目、変形バンド等の構造(例えばTrabi et al., 2009)が透水係数を増加させる原因となる。しかし、例え処分場候補地に断層のダメージ帯が存在したとしても放射性核種は人口バリアから直接水の流動性の高い断層ダメージ帯に入って行く訳ではなく、割れ目密度の低い周囲の岩盤(マトリックス)中を遅い速度で移動し、最終的にダメージ帯に運ばれる(例えばFig. 1 of Tsang et al., 2015)。ここで、このマトリックス中の水の移動において重要な役割を果たすのがマイクロクラックと予想されるので、地層処分の基礎研究ではマイクロクラックの方位分布や密度および透水係数との関連が今後重要なテーマとなろう。
地熱開発や二酸化炭素の地中貯留(CCS)においても地殻流体の移動が割れ目に沿って生じることに最大の注意を払うべきである。例えば、有名な岩手県葛根田地熱地帯において、上部地殻の脆性塑性転移の温度(約350 oC)以深の深さまで掘削が行われているが、脆性部分においては熱水対流が生じていることが知られている(例えばSaishu et al., 2014)。熱水対流は割れ目が地表まで繋がっていて、水のチャネルが出来ていることを示すが、水のチャネルの存在が地熱を取り出すために必須である。よって、マイクロクラックまで含めた割れ目の空間分布の把握が地熱開発において重要である。一方、CCSでは地中に高圧封入した二酸化炭素ガスが漏れだすことが問題となるが、漏れは割れ目に沿って起こり易いため同様に割れ目の空間分布の把握が重要である。
地熱開発や二酸化炭素の地中貯留(CCS)においても地殻流体の移動が割れ目に沿って生じることに最大の注意を払うべきである。例えば、有名な岩手県葛根田地熱地帯において、上部地殻の脆性塑性転移の温度(約350 oC)以深の深さまで掘削が行われているが、脆性部分においては熱水対流が生じていることが知られている(例えばSaishu et al., 2014)。熱水対流は割れ目が地表まで繋がっていて、水のチャネルが出来ていることを示すが、水のチャネルの存在が地熱を取り出すために必須である。よって、マイクロクラックまで含めた割れ目の空間分布の把握が地熱開発において重要である。一方、CCSでは地中に高圧封入した二酸化炭素ガスが漏れだすことが問題となるが、漏れは割れ目に沿って起こり易いため同様に割れ目の空間分布の把握が重要である。