[H-SC07] 地球温暖化防⽌と地学（CO2地中貯留・有効利⽤、地球⼯学）

[HSC07-P07] 衛星搭載ハイパースペクトルセンサを利用した二酸化炭素濃度推定手法の検討

*光原 奈美¹、成田 龍彦¹、鎌田 弘己¹、武田 知己² (1.株式会社地球科学総合研究所、2.一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構)

キーワード：HISUI（Hyperspectral Imager SUIte）、ハイパースペクトルセンサ、二酸化炭素、CCSモニタリング

温室効果ガス（以下「GHG」）として認識されている二酸化炭素（CO2）について、その排出削減は世界共通の取り組みであり、各国で削減目標達成へ向け、様々な手法・技術の新規開発・導入が促進されている。そうした技術展開においては、近年CO2を地下に圧入し貯留する（二酸化炭素回収・貯留：Carbon dioxide Capture and Storage、以下「CCS」）技術に注目が集まっている。CCS操業中およびCO2圧入停止後には、貯留サイトにおける各種モニタリング（温度圧力、坑井健全性、微小地震等）が不可欠であり、環境モニタリング（地下水、土壌、海洋、漏洩検知等）もそのひとつである。CO2の漏洩検知には地表における大気モニタリングが有効であり、その際、衛星画像データを用いた微量のCO2検知が可能になれば、貯留サイトとその周辺の広域モニタリングに資する。しかしながら、CO2の検知には、GOSAT-2（いぶき2）等のGHG観測技術衛星のデータを利用することができるものの、その空間分解能は9.7kmであることから、これらの光学衛星データを用いた小規模なCO2排出源の特定はやや困難である。
　その一方で、近年、高波長分解能を有するハイパースペクトルセンサを搭載した衛星の運用が各国で始まりつつあり、今後CCS事業における環境（地表におけるCO2濃度分布）モニタリングへの利用が期待される。日本では、国際宇宙ステーション（ISS）に搭載されているHISUI（Hyperspectral Imager SUIte）センサが運用されており、そのデータを利用可能である。HISUIは、経済産業省から委託を受けた一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構が開発・運用する宇宙実証用ハイパースペクトルセンサで、185の観測波長帯と20m×31mの高い空間分解能を有する。
　本研究では、HISUIデータを利用して、製鉄所等の大規模なGHG排出源と比較して排出量の少ない施設を対象に、CO2の排出を示唆する特異点（アノマリ）の検知とその精度について検証するとともに、それらのアノマリをガス濃度に変換する際の手法を検討した。ガス濃度変換においては、現地での濃度測定結果を利用し、大気中のCO2濃度の日変化を考慮した測定日時に応じた濃度値補正を試みた。アノマリの検知結果は、環境省がGHG排出量の算定・報告・公表制度により公開しているアノマリ地点にある施設（特定事業所排出者）のガス排出量データ等と比較し、その妥当性とHISUIセンサのCO2検出限界値について考察し、CCS事業におけるCO2地表分布モニタリングを見据えた利用法を検討した。
　本研究は、経済産業省から委託を受けた一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構が実施する「令和4年度石油資源遠隔探知技術研究開発（ハイパースペクトルセンサ等の研究開発）」の一環として実施したものである。