15:30 〜 15:45
[HTT14-01] GBSARとXRAINを活用した溶岩ドームの変位と降水の時空間解析

キーワード:溶岩ドーム、雲仙普賢岳、GBSAR、モニタリング
はじめに
溶岩ドームの崩壊は、火山地域における重大な危険であり, 噴火中に頻繁に発生する. 例外的に島原半島の雲仙普賢岳のように, 噴火後もドームのかなりの部分が残っている場合もある. 1991年から1995年の噴火で形成された溶岩ドーム(平成新山)は, 毎年滑り続けており, 継続的な危険をもたらしている. また雲仙普賢岳の過去の崩壊(1991)は降水の影響を受けていると考えられているが, ドームt直上の降水量の正確な測定は行われておらず, ドームの変位と降水量の定量的な分析を複雑にしている. そこで本研究では, GBSARデータとXRAINによるドーム直上の降水データを用いて, この関係を探ることを目的とする.
研究場所
本研究では日本の長崎県にある雲仙普賢岳の溶岩ドームに焦点を当てる. 1991年から1995年にかけての噴火によって生まれたこの溶岩ドームは, 現在も山頂付近に約0.1 km³存在している.
研究方法
本研究では, 地上設置型合成開口レーダ(GBSAR)データから収集した48時間周期の19ブロックの変位データセットを用いて, 溶岩ドームの微細な変動を分析した. 降水データには, 国土交通省のMPレーダーを使用したXRAIN(Xtended RAdar INformation Network)による雲仙溶岩ドーム直上の降水データを用いた. GBSARデータとXRAINデータから, (1)GBSARデータの顕著な変位データと対応する降水データを用いて, 各変位イベントの変位・降水データセットを作成し, (2)各イベント中の溶岩ドームの空間的な変位変化のデータセットを作成した.
結果
(1) 降水量に対する溶岩ドームの応答: 溶岩ドームのブロックは, 降水量の増加に伴い, 特にドーム前面やDome1-5付近で大きな上昇・下降を示した. (2) 降水量に関係しない変位現象: 降水量や降水量の少なさに直接関係しない変位現象も観察された. これは, 従来の溶岩ドーム崩壊モデルでは説明できない土壌の自然な水分調整,地下水の移動,あるいは降水に対する反応の遅れによるものと考えられる.(3) 降水に対する反応の遅れ: 降水に対する溶岩ドームの応答には, 降水直後から96時間後までの遅れが観察されている. この反応の遅れは, 溶岩ドームが降水を浸透させる時間が必要であることを示唆している.
考察
(1) 降水とドームダイナミクス: 降水現象はドームの変位と相関するが, それだけが原因ではない. 降雨によって誘発された土壌の軟化や浸食も, 地形や内部構造に影響を与え, その役割を果たしている. 降雨に関連した変位が少ないという観測結果は, 他の原因因子を示唆している. (2) 応答パターンとタイムラグ: 降雨に対するドーム応答のタイムラグが観測されたことは, これまでの火砕流密度流の研究での即時反応とは対照的な, 特異な応答パターンを示している.本研究成果はこれまでの研究の見直しの必要性を示唆している. (3) 地域的な変位パターン: ドーム前面とドーム1-5領域では, 地下の地質特性や内部構造に影響された可能性のある顕著な降雨に対する応答が見られた. また, 西側のブロックでは, 地盤の安定性と地形的条件が変位の動態に影響を及ぼしていることが示唆される.
まとめ
本研究は, 降水量と雲仙溶岩ドームの動態との相関を明らかにした. 降水量の増加によってドーム前面とドーム1-5面積の上下が誘発された.同時に, 降水とは無関係な変位現象が観察され, 地下水の移動など他の要因による可能性があった. さらに, 降水後のドームの応答には顕著なタイムラグが観察され, 環境と地質学的な相互作用の複雑さを浮き彫りにした.
溶岩ドームの崩壊は、火山地域における重大な危険であり, 噴火中に頻繁に発生する. 例外的に島原半島の雲仙普賢岳のように, 噴火後もドームのかなりの部分が残っている場合もある. 1991年から1995年の噴火で形成された溶岩ドーム(平成新山)は, 毎年滑り続けており, 継続的な危険をもたらしている. また雲仙普賢岳の過去の崩壊(1991)は降水の影響を受けていると考えられているが, ドームt直上の降水量の正確な測定は行われておらず, ドームの変位と降水量の定量的な分析を複雑にしている. そこで本研究では, GBSARデータとXRAINによるドーム直上の降水データを用いて, この関係を探ることを目的とする.
研究場所
本研究では日本の長崎県にある雲仙普賢岳の溶岩ドームに焦点を当てる. 1991年から1995年にかけての噴火によって生まれたこの溶岩ドームは, 現在も山頂付近に約0.1 km³存在している.
研究方法
本研究では, 地上設置型合成開口レーダ(GBSAR)データから収集した48時間周期の19ブロックの変位データセットを用いて, 溶岩ドームの微細な変動を分析した. 降水データには, 国土交通省のMPレーダーを使用したXRAIN(Xtended RAdar INformation Network)による雲仙溶岩ドーム直上の降水データを用いた. GBSARデータとXRAINデータから, (1)GBSARデータの顕著な変位データと対応する降水データを用いて, 各変位イベントの変位・降水データセットを作成し, (2)各イベント中の溶岩ドームの空間的な変位変化のデータセットを作成した.
結果
(1) 降水量に対する溶岩ドームの応答: 溶岩ドームのブロックは, 降水量の増加に伴い, 特にドーム前面やDome1-5付近で大きな上昇・下降を示した. (2) 降水量に関係しない変位現象: 降水量や降水量の少なさに直接関係しない変位現象も観察された. これは, 従来の溶岩ドーム崩壊モデルでは説明できない土壌の自然な水分調整,地下水の移動,あるいは降水に対する反応の遅れによるものと考えられる.(3) 降水に対する反応の遅れ: 降水に対する溶岩ドームの応答には, 降水直後から96時間後までの遅れが観察されている. この反応の遅れは, 溶岩ドームが降水を浸透させる時間が必要であることを示唆している.
考察
(1) 降水とドームダイナミクス: 降水現象はドームの変位と相関するが, それだけが原因ではない. 降雨によって誘発された土壌の軟化や浸食も, 地形や内部構造に影響を与え, その役割を果たしている. 降雨に関連した変位が少ないという観測結果は, 他の原因因子を示唆している. (2) 応答パターンとタイムラグ: 降雨に対するドーム応答のタイムラグが観測されたことは, これまでの火砕流密度流の研究での即時反応とは対照的な, 特異な応答パターンを示している.本研究成果はこれまでの研究の見直しの必要性を示唆している. (3) 地域的な変位パターン: ドーム前面とドーム1-5領域では, 地下の地質特性や内部構造に影響された可能性のある顕著な降雨に対する応答が見られた. また, 西側のブロックでは, 地盤の安定性と地形的条件が変位の動態に影響を及ぼしていることが示唆される.
まとめ
本研究は, 降水量と雲仙溶岩ドームの動態との相関を明らかにした. 降水量の増加によってドーム前面とドーム1-5面積の上下が誘発された.同時に, 降水とは無関係な変位現象が観察され, 地下水の移動など他の要因による可能性があった. さらに, 降水後のドームの応答には顕著なタイムラグが観察され, 環境と地質学的な相互作用の複雑さを浮き彫りにした.
