16:15 〜 16:30
[HTT16-04] 複数の窒素化合物のδ15Nを用いた多摩川の人為的窒素負荷の把握と窒素汚染指標としての特性の検討
キーワード:河川生態系、窒素汚染、窒素安定同位体比、複合的指標
水中で様々な形態をとる窒素は河川や沿岸域の富栄養化の要因となる元素であり,河川水によって輸送されるため,河川水中の窒素管理(起源解析と実際に藻類に利用される窒素形態の把握)は必要不可欠である。本研究では,窒素の起源解析に有効である窒素安定同位体比(δ15N)に着目し,藻類に利用される硝酸イオン(NO3-)やアンモニウムイオン(NH4+),植物プランクトンの利用する窒素を反映する粒子状有機物(POM),より長期の窒素源情報を記録する固着性藻類や現場培養藻類などのδ15N値から,多摩川における窒素の起源と実際の生物利用性を推定すると同時に,それぞれの窒素化合物のδ15Nの汚染指標としての特性と有効性を明らかとすることを目的とした。
NO3-濃度とδ15N-NO3-は下流に向かうにつれて上昇し,有色溶存有機物(CDOM)濃度とも相関を見せたことから,下水処理水由来の窒素が河川水質に影響を及ぼしていると考えられた。また、ロガーを用いて簡易に高い時空間密度で測定できるCDOMを、多摩川におけるNO3-濃度の簡易指標として利用できることが示された。各地点のδ15N-NO3-は1994年の観測結果(熊澤ら,2000)と変化は見られず,多摩川の主な窒素起源に大きな変化がないことが示唆された。δ15N-付着藻類は、δ15N-NH4+と連動して推移しており、低濃度であっても河岸の藻類はNO3-よりNH4+を取り込んでいることが、時間積算記録として示された。一方で、δ15N-POMはδ15N-NO3-と連動した変化を示し植物プランクトンによる高濃度のNO3-の利用を示唆した。しかしながら、δ15N-POMがδ15N-NO3-よりは5~10‰程度も軽い値を示したことは,上流のδ15Nが低いPOMのキャリーオーバー効果などを反映しており,現場の環境指標としての有効性は低いと考えられた。同一地点であっても試料ごとに異なるδ15Nが確認され,それぞれの試料の特性を理解してδ15Nを用いることが河川の窒素管理の上で重要であるとわかった。
NO3-濃度とδ15N-NO3-は下流に向かうにつれて上昇し,有色溶存有機物(CDOM)濃度とも相関を見せたことから,下水処理水由来の窒素が河川水質に影響を及ぼしていると考えられた。また、ロガーを用いて簡易に高い時空間密度で測定できるCDOMを、多摩川におけるNO3-濃度の簡易指標として利用できることが示された。各地点のδ15N-NO3-は1994年の観測結果(熊澤ら,2000)と変化は見られず,多摩川の主な窒素起源に大きな変化がないことが示唆された。δ15N-付着藻類は、δ15N-NH4+と連動して推移しており、低濃度であっても河岸の藻類はNO3-よりNH4+を取り込んでいることが、時間積算記録として示された。一方で、δ15N-POMはδ15N-NO3-と連動した変化を示し植物プランクトンによる高濃度のNO3-の利用を示唆した。しかしながら、δ15N-POMがδ15N-NO3-よりは5~10‰程度も軽い値を示したことは,上流のδ15Nが低いPOMのキャリーオーバー効果などを反映しており,現場の環境指標としての有効性は低いと考えられた。同一地点であっても試料ごとに異なるδ15Nが確認され,それぞれの試料の特性を理解してδ15Nを用いることが河川の窒素管理の上で重要であるとわかった。