日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT16] 環境トレーサビリティ手法の開発と適用

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)、SHIN Ki-Cheol(総合地球環境学研究所)、谷水 雅治(関西学院大学)

17:15 〜 18:45

[HTT16-P09] 休耕田涵養における栄養塩動態 : 水-水生昆虫の関係に着目して

*勝田 裕大1張 勁1、稲村 修2、大浦 晃1北澤 唯佳1 (1.国立大学法人 富山大学、2.魚津水族館)

キーワード:炭素安定同位体、窒素安定同位体、止水域、水生昆虫

近年、富山県では冬期の消雪水の利用や土地利用変化によって、地下水位の低下などが問題となっている。さらに、少雪・多雨化などの気候変化や排水処理技術の向上によって、富山湾へ運ばれる陸由来栄養塩の減少も指摘されている(Katazakai and Zhang, 2021)。富山県では、地下水位低下の対策として、休耕田を用いた地下水涵養が推進されている。加えて、減少した陸由来栄養塩を補うための適応策として、地下水涵養に着目した栄養塩付加効果の検証が進められている。休耕田のような止水域には多様な生物が生息しており、生物を媒介として、陸-水域間で物質交換が行われている。そのため、生態系を加味した詳細な栄養塩循環像の理解が必要とされている。しかし、止水系における食物連鎖、物質循環についての知見は限られている。本研究では、富山県魚津市の別又谷に造成された別又涵養田・自然観察池における水深の異なる3つの池の水生生物の炭素と窒素の安定同位体比(δ13C、δ15N)を測定し、食物網構造について明らかにすることを目的とした。水生昆虫は2023年の6月と10月にたも網を用いて採集した。また、餌源として考えられる植物、堆積物、地衣類、藻類もあわせて採取した。また、各池の水を採取し、主要溶存成分、水素酸素安定同位体比、栄養塩の測定を行った。各池の水生昆虫のδ15Nに大きな差はみられなかった。また一部の種のδ13Cは調査時期によって差がみられた。しかし同種内でもδ13Cが個体によって大きく変動していた。これは、個体ごとに利用する餌の割合が異なるために生じた差であると考えられる。また、基礎生産者である植物のδ13C、δ15Nは、種毎に明確に分類された。堆積物のδ13C、δ15Nは、比較的水深の深い池では同程度の値を示した。総じて、δ13C、δ15Nから、各池の食物連鎖を把握することができた。発表では、これらの食物連鎖の関係および栄養塩との関連について議論を行う。