日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT18] 浅部物理探査が目指す新しい展開

2024年5月28日(火) 13:45 〜 15:00 202 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:尾西 恭亮(国立研究開発法人土木研究所)、横田 俊之(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、磯 真一郎(公益財団法人 深田地質研究所)、木佐貫 寛(応用地質株式会社)、座長:尾西 恭亮(国立研究開発法人土木研究所)、磯 真一郎(公益財団法人 深田地質研究所)、木佐貫 寛(応用地質株式会社)

14:30 〜 14:45

[HTT18-04] 秋田県六郷扇状地における自然電位繰り返し測定

*網田 和宏1、田中 宏尚2、石戸谷 渓太3 (1.秋田大学大学院理工学研究科システムデザイン工学専攻土木環境工学コース、2.田中製作所、3.東日本旅客鉄道株式会社東北本部)

キーワード:自然電位、地形効果、繰り返し観測、地下水

地下において水が流動する際には,水にかかる圧力差や比抵抗,ゼータ電位などに応じて流動電位が発生することが知られている.自然電位法は流動電位によって生じた電位分布を測定することで,地下水の流動方向などに関する情報を取得することが可能な物理探査法である.本研究では秋田県六郷扇状地において同一側線上における繰り返しの自然電位観測を行い,得られた自然電位分布の比較を行った.
六郷扇状地には各所に大小含めて70ヶ所を越える湧水が存在することが知られており,これら湧水の流出状況などを通じて,地下水の状態を間接的に知ることが可能である.また,地下水位観測用の井戸も複数地点に設置されており,これらの井戸を用いた観測から地下水位変動の様相を捉えることが可能である.そこで本研究では,地下水位が様々に異なる時期に観測を行い,地下水理環境と電位分布との関連について検討できるデータの取得を目指した.観測は2015年10月から2019年11月の期間に行い,同じ測線上で16回の測定を実施した.観測測線は扇状地の中心軸沿いで扇頂部から扇端部に向かって直線状に伸びる幹線道路沿いに設定した.測線長は約4kmであり測点間隔は約100mである.また,2019年の観測では,地下水の流動方向に対して直交する方向で,かつ既存の測線とも交差するような新たな測線を設け,繰り返し(2回)の自然電位観測を実施した.
測線沿いに得られた自然電位分布は,程度の大小は認められたものの,いずれも標高が低くなるにつれて電位の値が高くなっていく「地形効果」の影響がみてとれた.それぞれの電位分布に対して近似直線を求め,その傾きを比較したところ傾きは高(-2.4 mV/m),中(-1.5 mV/m),低(0.2 mV/m)の3タイプに分類できることが分かった.観測した時期によって地形効果の大きさが変化していたことから,地下の水理条件を反映した自然電位分布が発生していたことが示唆された.また直交方向に設けた新たな測線における2回の観測からは同様な傾向を有する自然電位分布が得られ,データの再現性が認められた.これらのデータからは地形効果の影響は認められず,さらに測線の一部範囲では電位が下に凸となるような分布を示していることも確認された.このような特徴は,地下水の流動方向に直交する方向に観測を行ったことに対して調和的な結果であるといえる.