[M-AG33] 原爆による「黒い雨」領域の推定に関する基礎的研究

[MAG33-02] 放射性核種の土壌中深度分布とインベントリーを用いた土壌試料の改変評価

*八島 浩¹、五十嵐 康人¹、末木 啓介²、赤田 尚史³、杉原 真司⁴、齊藤 敬⁵、栗原 雄一⁶、横山 須美⁷、福田 直子⁷ (1.京都大学複合原子力科学研究所、2.筑波大学、3.弘前大学、4.九州大学、5.尚絅学院大学、6.長岡技術科学大学、7.長崎大学)

キーワード：セシウム、過剰鉛、土壌改変

【はじめに】1945年の広島・長崎への原爆投後に発生した「黒い雨」降雨域の推定に関する調査において、「黒い雨」沈着の検証データを得るために土壌試料の採取が進められている。得られた検証データが1945年に沈着したものかどうかを確認するためには採取した土壌試料が改変されずに層序が保存されていることを確認する必要がある。本発表では、土壌試料中の放射能分布プロファイルと放射性降下物インベントリーを用いた土壌試料の改変評価について報告する。
　【方法】本調査においては土壌試料採取法としてスクレーパープレート法を採用した。スクレーパープレートを用いて深さ1cm毎に最大深さ30cmまで土壌試料を採取し、滅菌・乾燥処理をした後に高純度Ge検出器によるガンマ線スペクトロメトリを行い、各層ごとの¹³⁷Cs、過剰²¹⁰Pb放射能濃度を測定し、深度プロファイルを得た。各層ごとに¹³⁷Cs、過剰²¹⁰Pb降下量インベントリーを算出し、積算して総インベントリー量を求めた。
　得られた深度プロファイルとインベントリーが以下の条件を満たしている試料については改変が無かったと判断した。

(1)¹³⁷Cs深度プロファイルの中にグローバルフォールアウトによるピークがある。

(2)¹³⁷Csインベントリーが750Bq m^-2以上ある。(過去の調査,山本ら(2000)を参考)

(3)過剰²¹⁰Pb深度プロファイルが最上層から減少する傾向にある。

(4)¹³⁷Cs/過剰²¹⁰Pbインベントリー比が0.2-0.4の範囲である。(過去の調査, 山本ら(2000)を参考)

サンプリングの状況によっては浅い層のプロファイルの傾向が違う例もあったが基本としてはこの基準で改変評価を行うことができた。
　謝辞：本調査研究は厚生労働省からの受託により進められた。記して感謝します。