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[MAG34-P08] 事故後のメタデータを用いた福島沿岸における河川経由での放射性セシウムの経年的流入量推定
キーワード:福島第一原子力発電所、放射性セシウム、河川
2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震とそれにより発生した津波に伴う福島第一原子力発電所(FDNPP)の一連の事故により、放射性物質が海洋環境中に放出された。特に半減期が30年であり、長期にわたって環境に影響を及ぼすと考えられるCs-137の影響が懸念されている。FDNPP近辺の海水中のCs-137濃度は2013年から2023年にかけて0.01~0.1 Bq/L程度で推移しており、事故前の値(0.001~0.002 Bq/L)に戻ることはなく依然として2桁程度高い状態が継続している。このように、事故から12年経過した現在も福島沿岸海域でCs-137濃度が事故前に比べて高い状態が継続している要因として、FDNPPからの直接流入、陸域に沈着したCs-137の河川を通した流入が挙げられる。
本研究では、河川中のCs-137濃度と河川水流下量の実測値を用いて、河川を経由したCs-137の海洋への流入量を、水に溶けたCs-137(以下溶存態)と粒子に吸着したCs-137(以下粒子態)の両方について推定を行った。粒子態は海洋への流入の際、競合イオンの増加により粒子から溶脱することが知られており、溶存態での流入量に加えて粒子態からの溶脱分を合算し、流入量を算出した。本研究では、河川中の粒子態が海水中に流入した際の溶脱率を3~30%とした。また、河川水中の濃度の経年変化について、最新のサンプリング結果を追加し、大気圏核実験によるグローバルフォールアウトやチョルノービリ事故での結果との比較を行った。河川中Cs-137濃度の経年変化にはいくつかのトレンドがあることが知られており、事故から2023年までの12年間の実測値から、福島における評価を行った。また、推定した直接流入量と河川経由での流入量の比較を行い、海洋環境中のCs-137の濃度の変遷と、その要因との関係について考察した。
河川経由での流入量を推定した結果、溶存態については、事故後1年程度で流入量が大きく減少したのち、現在も緩やかに減少が続いている。それに対し粒子態は、大気圏核実験によるグローバルフォールアウトやチョルノービリ事故によるユーラシア大陸での河川における先行研究(Smith et al.,2004)の結果と同じく長期的な平衡状態にあることで、下げ止まりが起こっていることが考えられる。それによって、粒子態の溶脱を考慮した流入量は、事故から時間が経過している中でも、河川の流量が多い時には事故初期の流入量に匹敵する可能性がある。さらにFDNPPからの直接流入量との比較では、近年は直接流入量が減少傾向にあると考えられていることもあり、粒子態からの溶脱を考慮した河川経由での流入量が上回る結果となった。ただし、河川経由での溶存態のみの流入量はいまだに直接流入量を1桁程度下回っており、粒子態の溶脱が今後の流入量に大きく影響していくことが考えられる。また、直接流入量と河川経由を合算した流入量は年々減少しているものの、その内訳が変化していることが示唆された。
本研究では、河川中のCs-137濃度と河川水流下量の実測値を用いて、河川を経由したCs-137の海洋への流入量を、水に溶けたCs-137(以下溶存態)と粒子に吸着したCs-137(以下粒子態)の両方について推定を行った。粒子態は海洋への流入の際、競合イオンの増加により粒子から溶脱することが知られており、溶存態での流入量に加えて粒子態からの溶脱分を合算し、流入量を算出した。本研究では、河川中の粒子態が海水中に流入した際の溶脱率を3~30%とした。また、河川水中の濃度の経年変化について、最新のサンプリング結果を追加し、大気圏核実験によるグローバルフォールアウトやチョルノービリ事故での結果との比較を行った。河川中Cs-137濃度の経年変化にはいくつかのトレンドがあることが知られており、事故から2023年までの12年間の実測値から、福島における評価を行った。また、推定した直接流入量と河川経由での流入量の比較を行い、海洋環境中のCs-137の濃度の変遷と、その要因との関係について考察した。
河川経由での流入量を推定した結果、溶存態については、事故後1年程度で流入量が大きく減少したのち、現在も緩やかに減少が続いている。それに対し粒子態は、大気圏核実験によるグローバルフォールアウトやチョルノービリ事故によるユーラシア大陸での河川における先行研究(Smith et al.,2004)の結果と同じく長期的な平衡状態にあることで、下げ止まりが起こっていることが考えられる。それによって、粒子態の溶脱を考慮した流入量は、事故から時間が経過している中でも、河川の流量が多い時には事故初期の流入量に匹敵する可能性がある。さらにFDNPPからの直接流入量との比較では、近年は直接流入量が減少傾向にあると考えられていることもあり、粒子態からの溶脱を考慮した河川経由での流入量が上回る結果となった。ただし、河川経由での溶存態のみの流入量はいまだに直接流入量を1桁程度下回っており、粒子態の溶脱が今後の流入量に大きく影響していくことが考えられる。また、直接流入量と河川経由を合算した流入量は年々減少しているものの、その内訳が変化していることが示唆された。