日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI24] Data assimilation: A fundamental approach in geosciences

2024年5月30日(木) 10:45 〜 12:00 104 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:中野 慎也(情報・システム研究機構 統計数理研究所)、藤井 陽介(気象庁気象研究所)、三好 建正(理化学研究所)、加納 将行(東北大学理学研究科)、座長:堀田 大介(気象研究所)、中野 慎也(情報・システム研究機構 統計数理研究所)

10:45 〜 11:00

[MGI24-06] 気象庁全球数値予報システムを用いた全球静止衛星の全天候および晴天放射輝度温度同化インパクト比較

★招待講演

*岡部 いづみ1岡本 幸三1、石橋 俊之1 (1.気象庁気象研究所)

キーワード:データ同化、気象予測、全天候放射輝度温度

静止気象衛星のイメージャにより、高解像度・高頻度輝度温度データが観測されている。この観測から、ある領域内の複数画素の平均輝度温度である全天放射輝度温度(ASR)、また、ある領域内の晴天域のみの画素の平均輝度温度である晴天放射輝度温度(CSR)というプロダクトが作成されリアルタイム配信されている。これらのプロダクトは、対流圏の大気の情報を持っており、データ同化により数値予報システムの解析・予報精度向上に寄与する。そのため、多くの現業数値予報センターで、主に対流圏中上層の水蒸気の情報をもつ水蒸気バンドのプロダクトが同化されている。現在、気象庁でも、水蒸気バンドのCSRが利用されている。
ASR同化は、CSR同化と比べて、数値予報への寄与がより大きいと期待される。具体的には、より大きなカバレッジが得られ、雲やそれに関連する観測情報をより活用できる点が挙げられる。また、CSR同化だとサンプルバイアスが問題になるが、それを回避できるメリットがある。しかし、ASR同化を実現するには、いくつかの困難を克服する必要がある。数値予報システムで十分に雲が再現されている必要があり、放射計算で雲の散乱・吸収過程を考慮しなくてはいけない。また、同化プロセスにおいてより強い非ガウス性や非線形性に対応する必要がある。
Okamoto et al. (2023) では、これらの課題に対応し、ひまわり8号ASRのデータ同化によりCSRを上回る数値予報へのインパクトを与えることに成功した。本発表では、このASR同化手法を欧州の静止気象衛星Meteosat Second Generation、米国の静止気象衛星GOES-16に適用し、従来のCSR同化インパクトと比較しながら、全球域で、ASR同化によりCSR同化を上回るインパクトを与えるために残された課題について報告する。