日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI27] Open and FAIR Science: strategies, concepts, infrastructures and opportunities

2024年5月28日(火) 09:00 〜 10:15 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:Cecconi Baptiste(LESIA, Observatoire de Paris, CNRS, PSL Research University)、村山 泰啓(情報通信研究機構 NICTナレッジハブ)、近藤 康久(総合地球環境学研究所)、Stall Shelley(American Geophysical Union)、座長:Cecconi Baptiste(LESIA, Observatoire de Paris, CNRS, PSL Research University)

09:30 〜 09:45

[MGI27-07] データDOI引用情報に基づく日本の地震津波火山観測データの利用状況の分析

*久保 久彦1汐見 勝彦1 (1.国立研究開発法人防災科学技術研究所)

キーワード:データDOI、引用情報、地震津波火山観測データ

研究データへのデジタルオブジェクト識別子DOIの付与は、オープンサイエンスの基盤となるものである。データDOIを付与することは研究データへの持続的なアクセスを保証し、データのさらなる利用促進が期待される。またデータDOIが出版物で引用されることは研究データの評価に貢献する。さらにデータDOIの引用状況を調べることにより、データがどのように利用されているかを理解することができると考えられる。本研究[KS1] では、データDOIの引用情報に基づいて、日本における地震、津波、火山の観測データの利用状況の分析を行ったした[KS2] 。分析対象は、防災科学研究所が維持・運営する陸海統合地震津波火山観測網MOWLASとした。MOWLASは異なる目的と特徴を持つ7つの観測網から構成されており(Aoi et al., 2020)、これらの観測網に付与された以下の6つのデータDOIに焦点を当てた:
高感度地震観測網Hi-net:10.17598/NIED.0003
強震観測網K-NET, KiK-net:10.17598/NIED.0004
広帯域地震観測網F-net:10.17598/NIED.0005
基盤的火山観測網V-net:10.17598/NIED.0006
日本海溝海底地震津波観測網S-net:10.17598/NIED.0007
地震・津波観測監視システムDONET:10.17598/NIED.0008
これらを引用している出版物の情報をWeb of Science(WoS)データベースから収集し、2019年から2022年までの引用状況を調査した。明らかに誤った引用があった場合、該当する文献は除外した。
調査期間中にMOWLASのデータDOIを引用する160件以上の出版物が公開されており、MOWLASの観測データが多数の研究論文で使用されていることを示す。出版物の総数は調査期間を通じておおむね増加していた。引用の頻度はK-NET, KiK-net、Hi-net、F-netの順であった。出版物の引用数は600を超え、出版物の数とともに年々増加した。ジャーナル毎の出版物も確認したところ、高いインパクトファクターを持つジャーナルを含めて、MOWLASの観測データを使用した出版物が様々なジャーナルから発表されていることがわかった。またジャーナルによってデータDOI間の出版物の割合が異なっており、これは主要な研究テーマがジャーナルごとに異なるためによく使用される研究データが異なることを反映していると考えられる。第一著者の所属組織の国について調べたところ、全体の70%以上が日本発で占められていた。またK-NET, KiK-netでは40%以上が海外発の出版物であったが、それ以外の観測網では約10%であった。このことからMOWLASの中でもK-NET, KiK-netの観測データは海外の研究機関からもよく使われていることが分かる。また、観測網別の出版物タイトルについて定量的テキスト分析を用いて分析し、観測データと特定の研究トレンドとの関係を明らかにした。
本研究では、WoSのデータDOI引用情報を分析することにより、NIEDのMOWLASデータの利用状況を調査した。今後はデータDOIの引用情報の更なる解析を進めるとともに、定点的な調査を継続的に行っていくことが重要である。長期間にわたるデータを解析することで、観測データを用いた研究トレンドの変遷なども捉えることができると考える。また、論文引用におけるインパクトファクターのような指標をデータDOIの引用について開発していくことが重要であると考える。そのような指標を用いることができれば、研究データ間での引用状況を比較することができ、研究データの引用状況に対する客観的な理解に寄与すると考える。