日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI29] 計算科学が拓く宇宙惑星地球科学

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:大淵 済(神戸大学)、牧野 淳一郎(国立大学法人神戸大学)、亀山 真典(国立大学法人愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、堀田 英之(名古屋大学)

17:15 〜 18:45

[MGI29-P01] 応力履歴依存粘性による3次元球殻マントル対流モデルでのプレート運動

*宮腰 剛広1亀山 真典2小河 正基3 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構、2.愛媛大学、3.東京大学)

キーワード:マントル対流、プレート運動

プレート運動は地球表層のテクトニックな活動の原因であると共に、表層と内部間の物質循環を引き起こし、それらの現象は表層環境とその変動に影響を与えている。これらの過程を調べるにはまず、プレート運動とマントル対流の共進化過程を精確に解く必要がある。
地球上では、ほぼ同じ応力が掛かっていても、プレート境界が形成されている所もあれば、そうでない所もある。強い応力が掛かって割れたプレートは、応力が下がっても直ちに固着して元の状態に戻るわけではない。すなわち、プレートの状態は、その瞬間の応力の強さだけで決まるわけではなく、過去に破壊を受けた事があるかどうかという応力履歴にも依存している。
我々はプレート運動を従来のものに比べてより精確に取り扱えるモデル(応力履歴依存粘性, Ogawa 2003)を導入した3次元球殻マントル対流モデル(ACuTEMan, Kameyama et al. 2005; 2008)により、プレート運動とそれに伴う現象を調べている。同様のモデルの箱型3次元形状の計算(Miyagoshi et al. 2020)で、プレート境界のみに集中するプレート変形や、長期間に渡って安定な剛体的運動など、地球上のプレート運動の特徴を良く捉えた結果が得られることが確認できている。しかしながら箱型モデルでは海溝の位置がほぼ計算境界で決まってしまう為、プレートが端から端まで沈み込む数億年~十億年程度より長期間の振る舞い(プレート運動の変遷や沈み込みによる内部構造の変化)を見るにはあまり適切ではなく、また対流に影響を与える表層と核-マントル境界の面積差も考慮されていない。種々の観測結果などと詳細な比較を行うには、球殻モデルでの結果が必要不可欠な為、3次元球殻モデルへの拡張を目指している。
鍵となる主なパラメータは、(1)破壊により無傷の部分に比べてどれだけ粘性率が下がるかの比(プレート運動のレジームに入るには、この低下量がプレート直下のアセノスフェア比と同等程度になる必要がある) 及び(2)粘性の温度依存性の強さ(これがある大きさ以上ないと固いプレートが発達しない)である。どちらも大きくなるほど計算が困難になる。また対流がある程度活発でないとプレート運動が生じないので、その目安となるパラメータである(3)レイリー数も重要である。
特に(1)が難しい(非常に局所的なプレート境界で、大きく粘性率が下がる状況の収束解を求めなくてはいけない為)。(1)で必要な値は103.5程度であるが、いきなりこの極端な値を入れても収束解が求められないので、0から始めて徐々に目標値に近づけて行く必要がある。
昨年度中は必要なパラメータ値に到達していなかったのだが、継続して計算を行った結果、(1)について目標値である103.5に到達することが出来た。(2)についても必要な値、103-4程度に到達している。(3)についても概ね必要な値に到達しているが、局面によって計算が難しくなる事がある。その場合は対応策を導入しつつ計算を進めている。
各パラメータがプレート運動レジームに必要な値に到達した結果、プレート運動の特徴である剛体的運動や、海嶺・海溝といった、プレート運動に伴う構造が観察されている。まだ(実際の地球の様に)全球的に大規模な破壊が起こって運動が生じている状態にはなっておらず、その状態に到達する為には更なる計算が必要であるが、本講演では、現在までに得られている計算結果から見られるプレート運動とその特徴について紹介する予定である。