日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI31] 地球掘削科学

2024年5月28日(火) 10:45 〜 12:00 302 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:岡崎 啓史(広島大学先進理工系科学研究科地球惑星システム学プログラム)、井尻 暁(神戸大学)、浦本 豪一郎(高知大学)、北村 真奈美(産業技術総合研究所)、座長:岡崎 啓史(広島大学先進理工系科学研究科地球惑星システム学プログラム)、井尻 暁(神戸大学)、北村 真奈美(産業技術総合研究所)、浦本 豪一郎(高知大学)

10:45 〜 11:00

[MGI31-01] 摩耗による性能劣化の影響を考慮したPDCビットの掘進速度モデルの適用可能範囲に関する実験的検証

*金木 俊也1、宮崎 晋行1 (1.産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地圏資源環境研究部門)

キーワード:掘削、掘進速度モデル、PDCビット、摩耗

地下資源開発等の地圏での産業活動は、その初期段階において掘削工事を必要とすることが多い。ビットの掘進速度モデルの正確性を高めることは、掘削工程の最適化および地圏事業の促進において重要である。Bingham (1964)は、ローラーコーンビットを用いた室内掘削実験のデータ解析から、掘進速度がビット荷重の冪乗に比例するモデルを提案した。モデル中の比例係数aおよび冪指数bは、各岩石に固有の定数であるとされている。しかし、ビット荷重および岩石強度が同じであっても、掘削に伴うビットの摩耗によって掘進速度は低下する。Miyazaki et al. (2022)は、異なる摩耗度を持つPolycrystalline Diamond Compactビット(PDCビット)を用いた室内掘削実験を行い、bは摩耗度によらない定数である一方、aは摩耗度の関数であると報告した。Miyazakiのモデルは、実際の掘削現場で使用する前後のPDCビットを用いて一軸圧縮強度80-120 MPaの岩石を掘削した室内実験データに基づいて構築されている。モデルの適用可能範囲を評価するためには、より様々な摩耗度を持つPDCビットを用いてより様々な強度の岩石を掘削した実験データの解析が必要となる。
本研究では、Miyazaki et al. (2022)が用いたものよりも径が小さい四種類の摩耗状態を持つPDCビットを用いて、Miyazaki et al. (2022)と同等もしくは高い一軸圧縮強度を持つ岩石を掘削した実験データを解析した。解析データの一部には、今泉ほか(2017)が報告したデータが含まれる。最も摩耗度が高い実験データについては、現在解析中である。他の3ケースでの解析の結果、掘削のごく初期に相当する摩耗度を持つビットにおいて、指数bの顕著な増加が確認された。一方、新品もしくはより高い摩耗度を持つビットのbは、ビット径が異なるMiyazaki et al. (2022)と同程度の値を示すことがわかった。また、ビットの摩耗度が同じ場合、指数bは岩石強度に依存しないことがわかった。これらの結果は、掘削のごく初期段階を除き、掘削工事で想定されるビット摩耗度・岩石強度において、ビット径によらずMiyazakiのモデルが広く適用可能であることを示唆している。本研究で解析した実験データの一部は、JOGMEC(現 独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)の委託研究によって取得された。