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[MGI31-03] 医療用X線CT画像を用いたNanTroSEIZEコア試料の熱伝導率の深度分布推定

キーワード:IODP、熱伝導率、X線CT画像、デジタルロック
熱伝導率は岩石の基本的な物性の一つであり,岩石コア試料の熱伝導率を取得し地下の温度分布を推定することは地震性断層すべりの正確な理解,地下資源の形成状態の把握や生産予測等のために重要である.熱伝導率の測定には試料に熱を加えて温度上昇プロファイルから熱伝導率を計測する手法が主に利用されるが,近年のX線CTスキャン技術や数値計算環境の発展から「デジタルロック(Digital Rock Physics)」呼ばれる手法も提案されている.この手法は試料のX線CT画像からミクロな内部構造を取得し,数値計算によってマクロな物理現象をシミュレーションし物性を推定するものである.
2007年から多くの科学掘削プロジェクトでコア試料を取得してきた地球深部探査船「ちきゅう」では,国際深海科学掘削計画(IODP)の航海で取得されたすべてのコア試料が医療用X線CTスキャナーでスキャンされている.通常このスキャンデータは岩相観察に用いられるもので,解像度も通常のデジタルロックで用いられるマイクロフォーカスの画像より粗く,物性推定には利用されてきていない.しかし,本データを熱物性の推定に利用することができれば,従来の実測による手法よりも高い空間解像度で, XCT画像がルーチン的に取得されているほぼ全コア試料の熱物性を取得することが可能になる.
そこで本研究では,南海トラフ地震発生帯掘削(NanTroSEIZE)のSite C0002にて取得されたコア試料の医療用X線CT画像を用いて熱伝導率の深度分布を推定した.医療用X線CT画像は既往のデジタルロックで利用されてきた画像よりも解像度が粗いため,空隙や鉱物の相を分離するセグメント処理を行って物性値を直接代入するという手法を採用できない.そこで,CT値と物性値の間の連続関数を作成してボクセルごとに異なる物性値を割り当てる「セグメント処理を行わないデジタルロック」によりモデルを作成した.各ボクセルに対して先行研究で提案されているキャリブレーションカーブにより密度と空隙率を,また熱伝導混合モデルにより熱物性を割り当てるという処理を行い,コア試料を2cm角の立方体で区切って深度方向に連続的にモデルを作成した.その結果,深度によりトレンドが変化するものの,実測値と比較して正確な推定が実現した.一方で,擾乱や亀裂の影響を受けた部分は大きく熱伝導率の推定値が増減し推定精度が低い結果となり,本手法の実装にはこの影響を適切に取り除く手法が必要不可欠である.
2007年から多くの科学掘削プロジェクトでコア試料を取得してきた地球深部探査船「ちきゅう」では,国際深海科学掘削計画(IODP)の航海で取得されたすべてのコア試料が医療用X線CTスキャナーでスキャンされている.通常このスキャンデータは岩相観察に用いられるもので,解像度も通常のデジタルロックで用いられるマイクロフォーカスの画像より粗く,物性推定には利用されてきていない.しかし,本データを熱物性の推定に利用することができれば,従来の実測による手法よりも高い空間解像度で, XCT画像がルーチン的に取得されているほぼ全コア試料の熱物性を取得することが可能になる.
そこで本研究では,南海トラフ地震発生帯掘削(NanTroSEIZE)のSite C0002にて取得されたコア試料の医療用X線CT画像を用いて熱伝導率の深度分布を推定した.医療用X線CT画像は既往のデジタルロックで利用されてきた画像よりも解像度が粗いため,空隙や鉱物の相を分離するセグメント処理を行って物性値を直接代入するという手法を採用できない.そこで,CT値と物性値の間の連続関数を作成してボクセルごとに異なる物性値を割り当てる「セグメント処理を行わないデジタルロック」によりモデルを作成した.各ボクセルに対して先行研究で提案されているキャリブレーションカーブにより密度と空隙率を,また熱伝導混合モデルにより熱物性を割り当てるという処理を行い,コア試料を2cm角の立方体で区切って深度方向に連続的にモデルを作成した.その結果,深度によりトレンドが変化するものの,実測値と比較して正確な推定が実現した.一方で,擾乱や亀裂の影響を受けた部分は大きく熱伝導率の推定値が増減し推定精度が低い結果となり,本手法の実装にはこの影響を適切に取り除く手法が必要不可欠である.