14:45 〜 15:00
[MGI31-10] リポジトリコア再活用・再解析の可能性を探る
★招待講演
キーワード:リポジトリコア、インド洋、日本海溝、日本海
2023年度から,リポジトリコア再解析プログラムRepository Core Re-Discovery Program (ReCoRD) が始まった.これは,日本掘削地球科学コンソーシアム(J-DESC)と高知コアセンター(KCC)が共同で運営するプログラムで,KCCに保管されているコア(リポジトリコア)をターゲットとし,X線CTイメージなどのデジタルデータを取得し,それらのデータをもとに参加者が個々のサンプルリクエストを提出して,KCCで一堂に会して再記載やサンプリングパーティーを行い,新たな成果の創出を目指す.
IODPでは,リポジトリコアの学術目的でのサンプルリクエストは常時受け付けている.そのサンプルリクエストに関する枠組みが変更・新設されるわけではなく,既存のポリシーの中でReCoRDは実施される.通常のサンプルリクエストと違う点は,個人や少人数グループではなく,掘削航海のサイエンスパーティに類する比較的大人数の研究チームでコア試料の集中的な再解析を行う点である.
ReCoRDの流れは以下の通りである.
1) 主提案者(Lead Proponent) ReCoRDプロジェクトの「傘」となる実施提案を提出する.
2) 実施提案は,ReCoRD評価チームによって科学的意義や実現可能性などが審査され,KCCよって年に数件の提案が採択される.
3) 採択された提案に基づき,対象コア試料の事前データ(KCCの分析機器を用いたコアの非破壊分析や画像データのデジタル化など)を取得する.この取得は,KCCスタッフが行う.取得するデータの種類によっては,IODPにデータリクエストを提出する.
4) 各参加者は,対象コアのサンプルリクエストをIODPに提出する.
5) KCCにて2週間程度の期間で,分析試料の集中的な再記載やサンプリングを行う.
6) Lead Proponent が中心となって成果レポートを作成する.
詳細はhttps://j-desc.org/record/に掲載されている.
実施済み提案
ReCoRDの第一弾であるReC23-01 “Tracing Intermediate Water Current Changes and Sea Ice Expansion in the Indian Ocean” は,インド洋のHole 266,707A,752Aで回収されたコアを用いて,中新世以降の中層水形成の履歴を復元し,新第三紀~第四紀の気候シフトとの関連を解明することを目的として日本やオーストリアのチームが提案した.その再記載とサンプリングパーティーが,2023年9月にKCCで実施された.特筆すべきは,Site 266のコア中に海氷が運搬して堆積した漂礫Ice rafted debris (IRD)がX線CT画像で明瞭に示されたことである.半割面の記載だけではわからなかったIRDの分布と産状を正確に記載することができ,これによりIRDの産出頻度から南極氷床の履歴に迫ることが期待される.
実施予定のプロジェクト
第二回のReC23-02 “Understanding the Formation Process and Physical Property Distribution of the Upper Prism in the Japan Trench” は,2024年3月にサンプリングパーティーが実施される予定である.東北沖太平洋Hole 434B,436,439,440B,C0019をターゲットとし,付加体Upper Prismの物性を研究することを目的としている.
さらに,第三回 ReC23-03 “The Japan Sea paleoceanography and paleoclimatology during the Miocene” は,2024年度の前半に実施する方向で準備が進められている.日本海の Hole 794B, 795B, 797B-C, U1425B, U1425D, U1430A-Bをターゲットとし,中新世の日本海の古環境を復元することが目的である.
まとめ
現在,レポジトリコアを活用したプログラムは,このReCoRD以外にも複数立ち上がっており,その中でReCoRDは一足先にプロトタイプとして実施が始まり,その中で,多くの課題が見えてきた.重要な点は,迅速な審査プロセスと実施準備,コミュニティーへの周知,そして予算の確保である.プロトタイプを経て得られた知見は,今後の同様のプログラムを国際的な枠組みでスタートさせる際に重要な情報となる.
IODPでは,リポジトリコアの学術目的でのサンプルリクエストは常時受け付けている.そのサンプルリクエストに関する枠組みが変更・新設されるわけではなく,既存のポリシーの中でReCoRDは実施される.通常のサンプルリクエストと違う点は,個人や少人数グループではなく,掘削航海のサイエンスパーティに類する比較的大人数の研究チームでコア試料の集中的な再解析を行う点である.
ReCoRDの流れは以下の通りである.
1) 主提案者(Lead Proponent) ReCoRDプロジェクトの「傘」となる実施提案を提出する.
2) 実施提案は,ReCoRD評価チームによって科学的意義や実現可能性などが審査され,KCCよって年に数件の提案が採択される.
3) 採択された提案に基づき,対象コア試料の事前データ(KCCの分析機器を用いたコアの非破壊分析や画像データのデジタル化など)を取得する.この取得は,KCCスタッフが行う.取得するデータの種類によっては,IODPにデータリクエストを提出する.
4) 各参加者は,対象コアのサンプルリクエストをIODPに提出する.
5) KCCにて2週間程度の期間で,分析試料の集中的な再記載やサンプリングを行う.
6) Lead Proponent が中心となって成果レポートを作成する.
詳細はhttps://j-desc.org/record/に掲載されている.
実施済み提案
ReCoRDの第一弾であるReC23-01 “Tracing Intermediate Water Current Changes and Sea Ice Expansion in the Indian Ocean” は,インド洋のHole 266,707A,752Aで回収されたコアを用いて,中新世以降の中層水形成の履歴を復元し,新第三紀~第四紀の気候シフトとの関連を解明することを目的として日本やオーストリアのチームが提案した.その再記載とサンプリングパーティーが,2023年9月にKCCで実施された.特筆すべきは,Site 266のコア中に海氷が運搬して堆積した漂礫Ice rafted debris (IRD)がX線CT画像で明瞭に示されたことである.半割面の記載だけではわからなかったIRDの分布と産状を正確に記載することができ,これによりIRDの産出頻度から南極氷床の履歴に迫ることが期待される.
実施予定のプロジェクト
第二回のReC23-02 “Understanding the Formation Process and Physical Property Distribution of the Upper Prism in the Japan Trench” は,2024年3月にサンプリングパーティーが実施される予定である.東北沖太平洋Hole 434B,436,439,440B,C0019をターゲットとし,付加体Upper Prismの物性を研究することを目的としている.
さらに,第三回 ReC23-03 “The Japan Sea paleoceanography and paleoclimatology during the Miocene” は,2024年度の前半に実施する方向で準備が進められている.日本海の Hole 794B, 795B, 797B-C, U1425B, U1425D, U1430A-Bをターゲットとし,中新世の日本海の古環境を復元することが目的である.
まとめ
現在,レポジトリコアを活用したプログラムは,このReCoRD以外にも複数立ち上がっており,その中でReCoRDは一足先にプロトタイプとして実施が始まり,その中で,多くの課題が見えてきた.重要な点は,迅速な審査プロセスと実施準備,コミュニティーへの周知,そして予算の確保である.プロトタイプを経て得られた知見は,今後の同様のプログラムを国際的な枠組みでスタートさせる際に重要な情報となる.