日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS05] Developments and applications of XRF-core scanning techniques in natural archives

2024年5月28日(火) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:Huang Steven Huang(Institute of Oceanography, National Taiwan University)、天野 敦子(産業技術総合研究所)、田中 えりか(高知大学)、Lowemark A Lowemark(National Taiwan University)

17:15 〜 18:45

[MIS05-P01] KCCの全てのITRAXデータの定量化に向けて:日本海堆積物を例とした標準試料測定結果からわかること

*関 有沙1多田 隆治2、黒川 駿介3三武 司3村山 雅史4,5 (1.信州大学 理学部、2.千葉工業大学 地球学研究センター、3.東京大学大学院 理学系研究科、4.高知大学 農林海洋科学部、5.高知大学 海洋コア国際研究所)

キーワード:XRFコアスキャナー、ITRAX、高知コアセンター(KCC)、日本海、定量分析、測定精度

XRFコアスキャナーには非破壊・迅速・高解像度で堆積物の元素分析が出来るという利点があり、古環境復元やタービダイト同定などの堆積相解析、人為起源の元素汚染の検出など様々な研究に活発に使用されている(Rothwell and Croudace, 2015)。高知コアセンターのXRFコアスキャナー(ITRAX、COX社製)でも、導入以来数年間で様々な試料が分析され、多くの成果が出されてきた(例えば、Seki et al., 2019, Dunlea et al., 2020, Mondal et al., 2021, Kuwae et al., 2022)。
XRFコアスキャナーでの非破壊・迅速分析は便利な反面、試料の表面状態や含水率などが影響を与えるため測定結果の定量的な取り扱いには手間と時間がかかる場合が多く(Weltje et al. 2015)、定性分析として使用されることが多い。他の元素分析機器と異なり、標準試料の測定がルーティン化されていないことも定量化を難しくしている一因である。XRFコアスキャナーの結果を元素含有量に換算するためにはコアから分取した試料を用いてXRFやICPなどでの定量分析を行うことが必要であり手間がかかるため、XRFコアスキャナーの結果を定量的に扱っている研究は少なく、実際には多くの研究が元素や元素比の変動のみを使用している(例えば、Hsiung et al., 2021)。
しかし、XRFコアスキャナーの分析は最小0.2mm間隔で行うことが出来るため、定量化が出来れば、分取試料の定量分析では得られない高解像度の元素濃度変化を知ることが可能となる。そこで本発表では、発表者のグループがこれまでに蓄積してきた標準試料の測定結果を活用することで、これまでに高知コアセンターのXRFコアスキャナー(ITRAX)で得られた全ての測定結果を定量的に扱える手法を提案する。
本研究で使用した試料は、元素含有量の異なる4種類の日本海堆積物から作成した標準試料(Dunlea et al., 2020)と、市販の堆積物標準試料、ITRAXに付属しているリファレンスガラスである。これらを高知コアセンターのXRFコアスキャナー(ITRAX)を用いて2015年から2023年まで同じ測定条件で継続的に分析した。また、IODP第346次航海で掘削された日本海堆積物のうち、ITRAXで測定した層準の試料を分取し、高知コアセンターのXRFで分析して元素濃度を得た。本研究ではこれらの結果をまとめることで、元素ごとに「測定誤差の評価」「X線管球の劣化の影響評価」「濃度換算式の作成」を行なった。また、これらの結果を活用することで高知コアセンターのITRAXで測定した既存の結果から元素濃度を計算する手法を考案した。
ITRAXによる非破壊・迅速測定は個々の試料状態や含水率の影響を無視することができないため、前処理を必要とするXRF分析やICP分析などの定量分析機器での元素測定と比較して誤差が大きいのは事実である。しかし、一定程度の誤差が存在することを許容した上で、本研究で提案する手法を活用してITRAXで測定した既存の結果から元素濃度を推定することは、それぞれの研究をさらに発展させる一助になると期待される。