10:45 〜 11:00
[MIS08-06] 姫島および昭和硫黄島における浅海CO2噴出域の生物地球化学的特性
★招待講演
キーワード:CO2噴出域、海洋酸性化、姫島、昭和硫黄島、ジオパーク
日本近海では、火山活動に伴い海底からCO2が噴出する海域が幾つか知られている。特に浅海CO2噴出域は、人間社会にとって身近で重要な沿岸にあり、比較的容易にアクセスできることから、主に火山学の観点から研究が進められてきた。一方、浅海CO2噴出域は今後、人類社会がCO2排出量の大幅な削減に取り組まなければもたらされる将来の海洋環境を先取りしていると考えられ、浅海CO2噴出域における生物化学過程を詳細に調べることで、海洋酸性化が海洋生態系に及ぼす影響を評価・予測する上で重要な知見を得られると期待される。本研究では、九州に位置する大分県姫島と鹿児島県昭和硫黄島周辺の浅海CO2噴出域を、海洋酸性化の観点から初めて調査した。いずれのCO2噴出域でも、海水中のCO2濃度は周辺の非CO2噴出域よりも高く、pHや炭酸カルシウム飽和度の著しい低下が見られ、人為的なCO2排出量の大幅な削減がなければ今世紀末に到達すると予測される値と同等以下となる海洋環境が存在していることがわかった。これらの浅海CO2噴出域は日本ジオパーク内に位置していることから、学術研究の対象としてだけでなく、ジオパークの観点からスタディツアーやエコツーリズムのフィールド、ローカルアイデンティティの再構築の題材としても活用できると期待される。