13:45 〜 14:00
[MIS09-01] 大阪ブルーオーシャンビジョンを達成するための廃棄プラスチック削減量
キーワード:海洋プラスチック、将来予測、マイクロプラスチック、粒子追跡モデル
いま海洋プラスチック汚染は、世界で最も注目を集めている環境問題の一つである。海洋プラスチックゴミの約80%は陸から川を経て海に流れたものであり、残りの20%は漁業ゴミである (Morales-Caselles et al., 2021)。陸域から海域へのプラスチックゴミの流出量は各国の経済成長度、各都市の沿岸からの距離等を元に様々なシナリオに沿って推算されている。例えば、business as usual (対策なし; BAU) シナリオに基づいて計算すると2030年には年間90 Mtの廃棄プラスチックが川、湖、そして海へ流出されると推算されている (Borrelle et al., 2020)。また、現代の技術を以てすれば2040年までにはBAUシナリオに比べて78%のプラスチック汚染問題を解消できるという報告もある (Lau et al., 2020)。
このように、様々な行動指針に基づいたプラスチックの海洋への流出量の推算はある程度可能になってきているが、プラスチック流出量の削減が海洋汚染の改善にどの程度効果があるのかはまだ明らかになっていない。海洋中のマクロプラスチックおよびマイクロプラスチックの存在量を計算できる全球粒子追跡モデルは既に開発されているものの (Isobe & Iwasaki, 2022, 以降II22)、プラスチック流出の様々なシナリオを反映させ、海洋中のプラスチック存在量の変化を見るには計算コストが高すぎ、将来予測が難しいのが現状である。また、マクロプラスチックやマイクロプラスチックの寿命を網羅的に考慮するにも従来の粒子追跡モデルでは計算のコスト上難しい。そこで本研究では、II22の結果を用いて確率分布モデルを作成した。このモデルにより、海洋中のプラスチック存在量の将来予測を様々なシナリオに基づいて計算できる。
確率分布モデルでは、II22と同様に世界の113ヶ所の河口から粒子を投入し、マクロおよびマイクロプラスチックの動態を1990-2010年の計21年分計算した。II22では各年の実際のプラスチックの生産量(プラスチックの流出量)に応じた粒子数が投入されていたが、確率分布モデルでは毎月100個と定め、毎年同数の粒子を投入し続けた。全球を10º ´ 10ºグリッドに分割し、各グリッドに到達する粒子数をカウントし、投入量で割ることでプラスチックの到達確率を求めた。最終的には、求めた確率にシナリオに応じた実際のプラスチック投入量をかけることによって各グリッド内のプラスチックの存在量を求めることができる。このように、プラスチックの投入量を変化させるだけでマクロおよびマイクロプラスチックの存在量を粒子追跡モデルに即して推算することができることが確率分布モデルの強みである。
今回確率分布モデルを用いて、大阪ブルーオーシャンビジョンのシナリオに沿った将来予測を行った。大阪ブルーオーシャンビジョンとは、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的汚染をゼロにまで削減するという削減目標であり、2019年に開催されたG20大阪サミットで提唱された。本研究では、確率分布モデルを用いて大阪ブルーオーシャンビジョンを達成するために要求されるプラスチックの排出削減率を推定する。
図1は全球における2019年以降の排出プラスチック増加量ゼロ、または10~50%の削減のシナリオで計算した海洋中のプラスチック存在量を示している。結果は2019年の全球における海洋中のプラスチック量を基準にした際の各年のプラスチック存在量の比を表したものであり、1.0を下回るとプラスチックが減少したことになる。図1からわかるように、プラスチックの投入量増加をゼロにしても、海洋中のプラスチック量は2019年値を上回る。これは、既に海岸に蓄積したプラスチックごみが、2019年以降の濃度増加に寄与するためであり、また、マイクロプラスチックの表層海洋からの消失(海底への沈降)を、流出量が上回るためであろう。投入量約30%(2019年比)の削減で比率1.0を下回る結果となった。さらに、プラスチックを種類別に見ていくと、海岸に打ち上げられたマイクロプラスチックの比率は海洋中のものよりも高く、最終的には32%の投入量削減により初めて2050年までに海洋プラスチックの追加的汚染ゼロ、つまりは大阪ブルーオーシャンビジョンが達成されると推算された。これは全球についての結果であるが、さらに地域ごとのプラスチック存在量の変化についても評価しており、当日発表する。
このように、様々な行動指針に基づいたプラスチックの海洋への流出量の推算はある程度可能になってきているが、プラスチック流出量の削減が海洋汚染の改善にどの程度効果があるのかはまだ明らかになっていない。海洋中のマクロプラスチックおよびマイクロプラスチックの存在量を計算できる全球粒子追跡モデルは既に開発されているものの (Isobe & Iwasaki, 2022, 以降II22)、プラスチック流出の様々なシナリオを反映させ、海洋中のプラスチック存在量の変化を見るには計算コストが高すぎ、将来予測が難しいのが現状である。また、マクロプラスチックやマイクロプラスチックの寿命を網羅的に考慮するにも従来の粒子追跡モデルでは計算のコスト上難しい。そこで本研究では、II22の結果を用いて確率分布モデルを作成した。このモデルにより、海洋中のプラスチック存在量の将来予測を様々なシナリオに基づいて計算できる。
確率分布モデルでは、II22と同様に世界の113ヶ所の河口から粒子を投入し、マクロおよびマイクロプラスチックの動態を1990-2010年の計21年分計算した。II22では各年の実際のプラスチックの生産量(プラスチックの流出量)に応じた粒子数が投入されていたが、確率分布モデルでは毎月100個と定め、毎年同数の粒子を投入し続けた。全球を10º ´ 10ºグリッドに分割し、各グリッドに到達する粒子数をカウントし、投入量で割ることでプラスチックの到達確率を求めた。最終的には、求めた確率にシナリオに応じた実際のプラスチック投入量をかけることによって各グリッド内のプラスチックの存在量を求めることができる。このように、プラスチックの投入量を変化させるだけでマクロおよびマイクロプラスチックの存在量を粒子追跡モデルに即して推算することができることが確率分布モデルの強みである。
今回確率分布モデルを用いて、大阪ブルーオーシャンビジョンのシナリオに沿った将来予測を行った。大阪ブルーオーシャンビジョンとは、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的汚染をゼロにまで削減するという削減目標であり、2019年に開催されたG20大阪サミットで提唱された。本研究では、確率分布モデルを用いて大阪ブルーオーシャンビジョンを達成するために要求されるプラスチックの排出削減率を推定する。
図1は全球における2019年以降の排出プラスチック増加量ゼロ、または10~50%の削減のシナリオで計算した海洋中のプラスチック存在量を示している。結果は2019年の全球における海洋中のプラスチック量を基準にした際の各年のプラスチック存在量の比を表したものであり、1.0を下回るとプラスチックが減少したことになる。図1からわかるように、プラスチックの投入量増加をゼロにしても、海洋中のプラスチック量は2019年値を上回る。これは、既に海岸に蓄積したプラスチックごみが、2019年以降の濃度増加に寄与するためであり、また、マイクロプラスチックの表層海洋からの消失(海底への沈降)を、流出量が上回るためであろう。投入量約30%(2019年比)の削減で比率1.0を下回る結果となった。さらに、プラスチックを種類別に見ていくと、海岸に打ち上げられたマイクロプラスチックの比率は海洋中のものよりも高く、最終的には32%の投入量削減により初めて2050年までに海洋プラスチックの追加的汚染ゼロ、つまりは大阪ブルーオーシャンビジョンが達成されると推算された。これは全球についての結果であるが、さらに地域ごとのプラスチック存在量の変化についても評価しており、当日発表する。