[M-IS10] 南大洋・南極氷床が駆動する全球気候変動

[MIS10-16] ハイスループット・バーチャルスライドスキャナーと深層学習で取得した南大洋における放散虫Cycladophora davisiana曲線の高解像記録

*板木 拓也¹、宮川 歩夢¹、池原 実³、松井 浩紀⁴、菅沼 悠介² (1.産業技術総合研究所、2.国立極地研究所、3.高知大学、4.秋田大学)

キーワード：自動顕微鏡、ディープラーニング、微化石

南大洋から採取された海底コアは，多くの場合，炭酸塩微化石の保存が不良であるため，有孔虫の酸素同位体比カーブを用いて年代モデルを構築することが困難である．最近では，海底コアのダストのプロキシシグナルを氷床コアのダスト記録に同調させることで年代モデルを構築する手法が用いられている．しかし，ダスト対比は，地域によっては意味のあるシグナルが得られなかったり，時間的なズレが生じたりするなどの課題がある．一方，南大洋における珪質微化石の放散虫Cycladophra davisianaの全群集に対する相対頻度（%）は，氷期に増加して間氷期に減少するという有孔虫の酸素同位体比に同調する変動を示すことから，CLIMAP以降，南大洋における層序対比に用いられてきた．Itaki et al. (2020 Sci. Rep. 10, 21136) は，自動顕微鏡と深層学習を用いることでC. davisiana曲線を取得し，従来は専門家による膨大な労力と時間を要していた作業を自動化することに成功した．本研究では，更なるハイスループット化を目指して360枚の顕微鏡スライドを連続処理することが可能なバーチャルスライドスキャナに深層学習を実装し，南大洋インド洋セクターから採取されたコアDCR-1PCを用いて高解像C. davisiana曲線の取得を試みた．ここで得られる記録は，同じコアから取得された放射性炭素年代，酸素同位体比，及びダスト記録（Matsui et al., 2022, QSR 286, 107508）と対比され，南大洋の広域対比を可能とする時間分解能の高い年代モデルとして期待される．